
ラムサール条約 第10回締約国会議
決議Ⅹ.9「科学技術検討委員会(STRP)の運用規則の改正」
- 日本語訳:
- 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録.
- 条約事務局原文:
-
- ワード:
- PDF:
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原(창원),2008年10月28日−11月4日
決議Ⅹ.9
科学技術検討委員会(STRP)の運用規則の改正
1.決議5.5(1993)において科学技術検討委員会(STRP)が設立されたこと、その構成員は適切な科学技術の知識を備えた人材で、締約国会議(COP)により任命され、出身国の代表としてではなく個人的資格で参加するものとして決議されたことを想起し、
2.また、STRPの構成員ならびにその作業を計画する方法を引き続き修正した決議Ⅵ.7、決議Ⅶ.2、決議Ⅷ.28及び決議Ⅸ.11を同じく想起し、
3.STRPの構成員、オブザーバー機関、招聘された専門家に対し、COP9以降の寄与ならびに条約履行に重要な多くの科学技術的問題に関する専門的助言を与えてくれたこと(決議Ⅹ.14から決議Ⅹ.21までの付属書として本会議に提出された新規及び改正ガイドラインと報告書、ならびに『ラムサール技術報告書』として作成されているその他のガイドラインと報告書等)に感謝し、
4.2006−2008年におけるSTRPの実質的作業を支える資金援助に対してスウェーデン政府に、またSTRP作業への資金以外の支援に対してバードライフ・インターナショナル、国際水管理研究所(IWMI)、英国共同自然環境保全委員会(JNCC-UK)に同じく感謝し、
5.2006−2008年の3年間のSTRP改正運用規則、ならびに決議Ⅸ.12(2005)で定められたSTRP作業の予算により、STRPはその能力、効率、適時性を向上させ、作業計画や必要な課題を策定し達成することができたとSTRPが指摘したことを歓迎し、
6.現存する膨大な知識と経験の恩恵を条約が享受するためには、STRPが各締約国内の科学者や専門家のネットワークとの緊密な関係を引き続き構築する必要があることを改めて強調し、しかしながら、多くの各国STRP窓口との間で効果的な連絡や関係を確立することが依然として困難であるとSTRPが報告していることを憂慮し、
7.欧州各国のSTRP窓口の会期間会合を招集し開催するにあたってオーストリア政府が取ったイニシアティブに対して感謝し、また同会合の勧告が、本決議に付属する改正STRP運用規則、及び各国STRP窓口に関する付託事項の改正版で考慮されたことに留意し、
8.生物多様性条約、移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約)、砂漠化対処条約、世界遺産条約、ユネスコ「人と生物圏」プログラム等、協力の覚書かつ/あるいは共同作業計画を取り交わした条約や協定の科学技術機関とのパートナーシップの下でSTRPが作業を行なうことの重要性を認識し、
9.既存の多くの専門家ネットワーク、専門家グループ、学会(こうしたネットワークや団体の中には、条約の国際団体パートナーと連携しているものもある)とSTRPとが引き続き協力することの必要性を同じく認識し、
10.STRPの2009−2012年の最優先作業が「条約の科学技術面の将来的な実施」に関する決議Ⅹ.10付属書に特定されたことを重ねて認識し、
締約国会議は、
11.締約国による条約の実施のために、信頼できる手引きを締約国会議に提供するにあたってのSTRPの作業と助言が、条約にとって決定的に重要であることを再確認する。
12.決議Ⅸ.11(2005)で採択されたSTRP運用規則に、本決議付属書に記載された改正を加えた改正運用規則は、COPの決定によりさらに修正されない限り、2009−2012年及びそれに続く期間に適用されることを確認する。
13.決議Ⅹ.10付属書が定めるSTRPの優先作業分野を率先して実施するため、STRP監督委員会が2009-2012年のSTRP優先作業である以下の分野に対してテーマ別専門家構成員を任命することに同意する。
- 湿地の目録、評価、指標
- ラムサール条約湿地の指定
- 湿地の再生と管理
- 湿地と気候変動
- 湿地と人の健康
- 湿地と水資源
- 湿地と農業
- 交流・教育・参加・普及啓発
14. 決議Ⅹ.10付属書に記載された他の作業分野において、STRPは必要に応じて追加的な専門知識を、例えば他の国際条約や国際機関の科学助言機関との協働によって、また国際団体パートナー、STRPが招聘したオブザーバーや専門家による等、様々な手段によって求めるものとすることに同意する。
15.常設委員会が引き続きSTRPの作業の全体的責任をもつこと、STRP議長は常設委員会の毎回の会合に対し、COP(決議Ⅹ.10)及び常設委員会が定めたSTRP作業計画及び優先事項の進行状況について報告すること、またSTRPの作業計画への必要と考えられる調整や、新たに発生している問題に関して会期間に提案された新たな課題についてSTRPは常設委員会に報告することを確認する。
16.2009−2012年におけるSTRPへの支援機能を、ラムサール条約事務局が引き続き提供することを同じく確認する。
17.STRPがその作業に効果的に取り組むために必要な資源の提供を確実に受けられるようにすること、また条約事務局がSTRPの作業を支援するに十分な能力を確実に持つようにすることのいずれもが引き続き必要であることを認識し、これら資金の継続性を確保する貢献を締約国等に対して要請する。
18.STRP会合にオブザーバーとして招かれる機関や団体の現行リストを改定し、以下の機関や団体に対して、共通の関心事項についてのSTRPとの緊密な協力体制の構築を考慮するよう促す:
- 生物多様性条約(CBD)の科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTTA)
- ボン条約(CMS)科学委員会
- 砂漠化対処条約(UNCCD)の科学技術委員会(CST)
- 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)
- CBD、CMS、ワシントン条約(CITES)、UNCCD、UNFCCC 、世界遺産条約(WHC)、ユネスコ「人と生物圏」プログラム(MAB)、国連欧州経済委員会(UNECE)の水条約、南極条約の各事務局
- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)事務局
- 国連食糧農業機関(FAO)
- UNEP世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)
- 世界保健機関(WHO)
- 湿地科学者会議(SWS)
- 泥炭地に関する地球的行動のためのガイドライン調整委員会(GGAP-CoCo)
- 国際環境影響評価学会(IAIA)
- 国際流域組織ネットワーク(INBO)
- ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)
- ダックス・アンリミテッド(DU)
- 世界水パートナーシップ`(GWP)
- 野禽湿地トラスト(WWT)
- 生態修復学会(SER)
- 国際生態経済学会(ISEE)
- 欧州宇宙機関−欧州宇宙研究所(ESA-ESRIN)
- 日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)
- ユネスコ国際水文学計画
19.締約国に対して、各締約国がそのSTRP窓口として任命する人物は、本決議添付文書の付託事項で規定される役割に照らして適格な人物であること、各STRP窓口はSTRPの作業分野に関連する国内の専門家と連絡を取り合うこと、各国STRP窓口はその国内においてラムサール条約の全プロセスにかかわること(国内のラムサール委員会または湿地委員会への参加等)、また各STRP窓口の連絡先情報が常に最新かつ有効な状態に維持されていることをそれぞれ確保するよう要請する。
20.これまでに各国STRP窓口を任命していない締約国17カ国[原注1]に対して、本決議添付文書のSTRP窓口に関する付託事項を考慮し、遅滞なくその任命を行なうよう同じく要請する。
21.各国STRP窓口を任命した締約国に対して、任命された人物の技術や能力を本決議添付文書の付託事項に照らして検討し、別の人物を任命すべきかどうか適宜判断し、必要と判断される場合はその旨を条約事務局に助言するようさらに要請する。
22.STRPに対して、各国STRP担当窓口と協力し合いながら、a)STRPの個別の課題に関する専門家の作業への参加、b)草案文書の検討、を実施するため、課題ごとに国内の専門家連絡先を特定する仕組みを考慮するよう要請する。
23.STRP及び条約事務局に対して、各国STRP窓口の地域または準地域レベルの会期間会合を開催する機会と仕組みを特定するよう要請する。
24.STRP構成員がCOP及び常設委員会の会合に参加することの価値を強調し、締約国、常設委員会、条約事務局に対して、このために必要となる追加資金の確保に努めるよう要請する。
- [原注1]
- 2008年11月4日現在、アンティグア・バーブーダ、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ベリーズ、ジブチ、フィンランド、ギニア、ギニアビサウ、レソト、マダガスカル、マルタ、ネパール、ナイジェリア、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、南アフリカ。
決議Ⅹ.9
付属書
科学技術検討委員会(STRP)の運用規則
Ⅰ.運用規則の重点目標
1.この運用規則の重点目標は、STRPの仕組みが、湿地の保全と賢明な利用に関して広く認められた専門家やネットワークによる作業を通じて、条約に対して最善の科学技術的助言を最も効率よく最大の費用対効果で提供できるようにする手段を構築することである。
Ⅱ.STRP監督委員会の設立と責任
2.STRP監督委員会は、常設委員会の監督下にあり、常設委員会議長及び副議長、STRP議長及び副議長、条約事務局長及び事務局次長(職務上[ex officio])から構成される。同監督委員会の議長は、常設委員会議長が務める。
3.同監督委員会の責務は以下のとおりとする。
- STRPの構成員、議長ならびに副議長を任命する。
- STRPの運営と作業に対して、会期間(会合と会合の間の期間)の助言や手引き、支援を提供する。
- この改正運用規則に基づきSTRPの運営について常に検討し、常設委員会へ助言する。
- 条約事務局に対して、STRPの予算項目に該当する支出について助言する。
4.常設委員会は引き続きSTRPの作業の全体的責任をもち、STRP議長は常設委員会の毎回の会合に、COP及び常設委員会が定めたSTRP作業計画及び優先作業の進行状況について報告する。
Ⅲ.STRP構成員候補者の基準と特性
5.STRP構成員として任命される候補者は以下のとおりでなければならない。
- 国内の地域規模、全国規模、国際規模で湿地の保全と賢明な利用に関する専門家のネットワークと連携しネットワーク化する能力[原注2]が実証されており、またこのような専門家のネットワークへの参加が実証されていること。かつ/あるいは、
- [原注2]
- このようなネットワークへの連絡口になることが条約の国際団体パートナーからSTRP構成員を常任で得る主目的のひとつであり、また他の科学技術団体からオブザーバーとして参加を促すゆえんであることに注意。
- 湿地保全と賢明な利用にかかるひとつまたは複数の分野において、特にCOPがその時点以降のSTRPの作業として特定した優先作業の分野と課題に関係する分野で、広く認められた経験と専門知識を有すること。
- 国内の地域レベル、地域レベル、全国レベルの湿地専門家(適切であれば自国のSTRP担当窓口も含む)と協働した経験を有すること。
- 会期間は電子メールやインターネット上の情報及び交流システムを通じてSTRP作業が実施されるため、これらのシステムを十分に利用できること。
- (英語が引き続きSTRPの使用言語であるため)英語を理解し読み話す能力が十分にあること、ならびに、
- 適切な場合には構成員が所属する団体や機関から支援を得つつ、STRP及びその作業部会の所要の作業を行う明確な意思を表明していること。
Ⅳ.STRPの構成
6.各条約地域からそれぞれ1名が構成員に任命される。これらの構成員は、(国内の地域規模、地域規模、かつ/あるいは国際規模の)湿地専門家のネットワークとともに活動した経験を持ち、それらネットワークとつながりを持てること。
7.さらに湿地専門家としてのSTRP構成員を任命する。この湿地専門家は、湿地の保全と賢明な利用にかかるSTRPの各テーマ別優先作業分野における経験と専門知識が認められる人材であること。各3年期に求められる専門知識のテーマ分野は、COP決議の主文で承認される。湿地専門家としての構成員については地域的なバランスを考慮し、様々な条約締約国や条約地域、かつ/あるいは世界の南北両地域から任命する。ジェンダーのバランスも考慮する。
8.もう1名、広報・教育・普及啓発(CEPA)に関する専門知識を有する者を構成員に任命する。この構成員の役割は、特定された利用者のニーズ調査から成果の最終的なまとめまで、課題ごとにSTRPの作業のすべての段階で、特に条約のCEPAネットワークや条約の国際団体パートナー(IOP)のネットワークを活用して、助言を提供することである。
9.条約の各国際団体パートナー(IOP)が現在行なっている、条約に対する科学技術的な支援を考慮し、各IOPを引き続きSTRPの構成員とする。COPから次のCOPまでの会期間に、また会期間から次の会期間の間に、STRPの作業工程や会合を通して代表の継続性が確保されるよう、各IOPにはSTRPへの代表者を指名することが求められる。STRP監督委員会は、その構成員任命の役割の一部として、IOPの指名を考慮し承認する。これらIOPの指名を受ける者は湿地の専門家とし、各団体の条約地域規模ならびに地球規模のネットワークが持つ、湿地の保全と賢明な利用に関する専門知識を維持し入手する役割を各団体において果たしている者でなければならない。
10.任命されたSTRP構成員は、各テーマについてのCOP承認による課題を達成する責任を有する各STRP作業部会(下記参照)を率いる(あるいは共同して率いる)。STRP構成員は、作業部会内で特定の優先課題を達成するために設置される委員会(タスクフォース)の作業を監督する。従って、これらの役割を引き受ける心構えが必要である。
11.構成員を任命するテーマ別作業分野は会期間ごとに検討しCOPの承認を得る。それら作業分野は、常設委員会及びCOPがその次のCOP会期間におけるSTRPの優先事項として特定したテーマや課題に従う。
12.STRPの会合予定はSTRP監督委員会が確認する。COP会期間に最大2回の全体会合を開くことができる。1回は前回の締約国会議から6か月以内に、もう1回は次の締約国会議の6か月前までに開催する。
Ⅴ.候補者の特定と任命の手続き
13.STRP監督委員会が各COP会期間の構成員の任命を行なう。
14.以下の指名による候補者を受け付ける。
- 各国の条約担当政府機関
- 各国のSTRP窓口(条約担当政府機関との協議の上)
- その時点でのSTRP議長及び副議長
- その時点でのSTRP構成員及びオブザーバー
15.現行のSTRP構成員、オブザーバー、招聘された専門家で、STRPの作業に専門家として寄与してきたことを証明する記録がある者は、指名する候補者対象に含めることができる。そのような専門家を任命すれば、STRPで進行中のテーマ別分野の作業における継続性を確保できる。
16.指名される候補者は、指名者と同じ国の出身者に制限されない。求められるのは、国籍や現住所にかかわらず、ネットワーク形成力かつ/あるいは関連する専門知識だからである。
17.各候補者を指名する者は、その候補者の専門知識及び経験、ならびにその知識経験と所定期間のSTRP作業との関連性を簡潔にまとめた概要を、推薦状の形でSTRP監督委員会へ提出する。
18.指名された候補者は、構成員任命への検討対象となることを自身が望むこと、作業時間や会議への出席を含むSTRPの構成員としての作業を果たすにあたり、所属する団体や機関からの全面的支援が得られること、ならびにSTRP作業への取り組みを十分に行うに必要な水準の英語力を持つことを声明文にまとめて提出する。会議への出席に資金的支援を必要とするかどうかを記載し、さらにその技能と知識がSTRP作業にどのように寄与すると考えるかを要約して「履歴書」とともに提出する。
19.受け付けた指名に基づいて、条約事務局は評価と任命推薦を取りまとめSTRP常設委員会による検討に供する。同監督委員会は、STRPが出来る限り速やかに新たな作業計画に着手できるように、各COPの終了後、可能な限り早急に電子的な連絡や電話会議を通じて任命を決定する。
20.COP会期間中に構成員に欠員が生じた場合は、STRP監督委員会が他の指名者を検討して実施可能な限り速やかに後任を任命する。
Ⅵ.STRPの議長及び副議長の任命
21.STRP議長はSTRP監督委員会が定員外の職として任命する(すなわち、地域構成員及びテーマ別専門家構成員の任命に追加される)。STRP議長は湿地問題に関して幅広い知識を持ち、STRP及び条約の作業に精通していなければならない。同議長はSTRPの戦略的な問題や新たに発生した問題、将来の優先事項に関する作業を指揮する。
22.STRP副議長は任命されたSTRP構成員の中から任命する。同副議長は地域のネットワーク形成に関するSTRPのテーマ別作業を指揮する。
23.退任するSTRP議長及び副議長は、同職の任命に関するSTRP監督委員会の決定には加わらない。
Ⅶ.STRPのオブザーバー機関
24.COPがSTRPのオブザーバーとして招く他の科学技術団体やそのネットワークの参加と助言は、今後もSTRPの作業にとって有益である。参加の継続性が確保できるよう、各オブザーバー団体はSTRPへの代表者を指名するよう求められる。指名される代表者は、所属団体の国内、地域的、国際的な湿地専門家ネットワークとつながりを持つ能力がなければならない。多国間環境協定の実施を合理化し調和する取り組みに引き続き寄与するために、STRPに招かれるオブザーバーには、他の環境条約や環境協定のSTRPに相当する科学技術補助機関の議長や適切な事務局職員を含める。
Ⅷ.作業部会ならびに委員会(タスクフォース)の設立と運営
25.任命されたSTRP構成員は、適切な場合、条約事務局による支援のもとに、COPが要請する課題を進展させるため、当該COP会期間の初めに作業部会を組織し、その座長あるいは共同座長の職務につく。
26.作業部会の構成は座長または共同座長が、STRP議長ならびに副議長及び条約事務局の助言を得て決定する。その構成員には、特に他のSTRP構成員、オブザーバー団体の代表、関係する専門知識を持った各国STRP窓口、関係する専門知識を持つ招聘された専門家を含むことができる。
27.新たな問題及び関連事項に関する戦略的検討機能を使ってSTRPが行う作業の一部として、STRP議長は、次期に実施すべき優先度の高い作業及び新たな優先作業に関する次回COPへのSTRPからの助言をとりまとめる。
28.各作業部会は当該COP会期間のテーマ別作業分野における優先作業としてCOPが要請する、助言やガイドライン、検討、その他の成果物の範囲と内容を考案する。これらを達成するための仕組みを(必要性があり資金が得られる場合に専門家と顧問契約することも含めて)特定する。また、このような文書を起案し完成させるまでの作業の進行状態を監督し検討する。
29.作業部会の座長あるいは共同座長は、任命された後、できるかぎり速やかにその構成員を決めて部会を立ち上げ、部会が担う優先課題の各々についての作業範囲の特定に着手し、COP後に開催される第1回STRP全体会合に先立ってその案を供覧し、その会合での議論に供する。
30.作業部会またはSTRP議長は、当該期間の計画の特定の優先課題を達成するため、適宜、小規模の委員会(タスクフォース)を設置することができる。
31.各作業部会は、そのテーマ別作業分野でSTRPに要請されているその他の課題についても常に開始の機会を検討し、能力的に可能となった時点でその達成に向けた仕組みを構築する。COP会期間に新たな課題を開始する機会が得られた場合は、STRP議長はSTRP監督委員会に対して当該作業を進める適切な手段の確立についての助言を求める。
32.各作業部会は効率よく作業を進めるために、その多くを電子的に(電子メール、ウェブ上のSTRP支援サービス機能、電話会議を通じて)作業するが、資源が許せば、COP会期間中に少なくとも一度はワークショップの会合を行う。
Ⅸ.STRP作業における各国及び各地域への適用の継続性確保
33.各国及び各地域からSTRP作業への十分な情報や助言を確保するための鍵は、各締約国が任命する各国のSTRP窓口(NFPs)のネットワークを引き続き活性化していくことである。改正された付託事項及び各国STRP窓口が持つ技術概要はこの運用規則の添付文書として提供されている。
34.条約事務局は、STRP担当窓口ネットワークの発展を支援する。これは、各国のSTRP窓口に必要な専門知識や能力の特定、特に各国内でのネットワーク発展の支援手段を追求することを通じて行う。
35.条約事務局及びSTRPは、各国のSTRP窓口の会期間会合を地域及び準地域レベルで開催するための機会と仕組みを特定する。
36.STRPへの各地域からの情報や助言ならびに各地域に対するSTRP作業の重要性を確保するもうひとつの側面は、各地域の科学技術的優先事項に、STRPがその任務の一部として対応する課題を設定することである。このためSTRPは各国のSTRP窓口を通じて締約国と協議する予定である。STRPはこの作業面を達成するための仕組みを引き続き構築するが、特に、本条約の地域会合で特定された地域的科学技術優先事項、及び本条約の枠組みのもと、COP決定(決議Ⅹ.6)のにより進められる地域イニシアティブで特定された地域的科学技術的優先事項への対応が含まれる可能性がある。
Ⅹ.STRP構成員の継続性
37.専門知識や作業内容の継続性を確保するために、STRP構成員のうち少なくとも3分の1は、次期も適宜再任されるべきである。
38.STRP議長はその時点の構成員と適切に協議したのち、STRPの作業への寄与やCOPが命じた優先課題に対する構成員の専門知識分野の関連性をもとに、再任されるべき構成員名をSTRP監督委員会に推薦する。
39.再任の推薦をうける構成員は、STRPの作業に効果的に寄与する能力を実証できている者で、かつ再任への意思を確認した者でなければならない。
決議Ⅹ.9付属書
添付文書
各国のSTRP窓口に対する付託事項
1.各締約国のラムサール条約担当政府機関は、以下を確保することに責任を負う。
ⅰ)自国のSTRP窓口(NFP)の任命。
ⅱ)自国のSTRP窓口が本付託事項に定める役割にふさわしい資格を持っていること、またこの点に関し、条約事務局とSTRPが、本付託事項に定める各国STRP窓口としての専門知識、技能、能力と一致する情報を提供されていること。
ⅲ)自国のSTRP窓口が、STRPの作業分野に関連のある国内の専門家と連絡をとりあえること。
ⅳ)自国のSTRP窓口が、その締約国内におけるラムサール条約のプロセスに関与すること(国内ラムサール委員会または国内湿地委員会への参加も含む)。
ⅴ)自国のSTRP窓口の連絡先情報がラムサール条約事務局を通じてSTRPに通知されていること、またその情報が常に最新で有効であること。
2.各国のSTRP窓口が国内で果たす主な機能は、毎回のCOPに続いて開かれる常設委員会の最初の全体会合で承認されたSTRP作業計画の実施に対し、情報や支援を提供することである。
3.各国のSTRP窓口とは、湿地の保全と賢明な利用の問題に対する各自の科学技術的な専門知識によってその役割を任じられた個人であり、STRPの業務を行なう際に組織や政府を代表することはない。
4.各国のSTRP窓口は、その業務遂行のため、自国内の他のラムサール条約担当窓口(担当政府機関、CEPA担当窓口)と定期的な連絡と交流を保つとともに、地域内の他の各国STRP窓口ともできる限り連絡と交流を保つ。
5.各国のSTRP窓口は、可能な限り、自国内の他の専門家や専門家団体、湿地センターと協議し、情報を求める。これに関してSTRP窓口は、たとえばラムサール条約(湿地に関する)科学技術委員会の設立などを通じて、国レベルでの能力を結集する。
6.各国のSTRP窓口は、STRPのテーマ別作業分野に参加するための専門知識や経験を備えた自国内の他の人を特定し、推薦することができる。さらにSTRP窓口には、国内の地域レベルまたは国レベルのイニシアティブでSTRPの作業に関連するものについて、STRPに情報を提供することが推奨される。
7.各国のSTRP窓口には、専門家社会の意見を調査するため、国レベルの適当な会合の機会やニュースレター、電子メールなどを利用することが奨励され、また可能であれば、STRP作業計画の主要な課題に関する専門家協議の場を設けることが奨励される。専門家協議については、STRPの適切な地域ネットワークの構成員か、関係するテーマの作業部会座長と調整して行う。
8.各国のSTRP窓口には、これと同等の各国窓口、すなわち、他の適切な国際的及び地域的な環境関連条約、特にラムサール条約が協力の覚書や覚書を交わしているもの(生物多様性条約、砂漠化対処条約、移動性の野生動物種に関する条約、世界遺産条約)の科学技術機関の各国窓口と定期的に連絡をとり、関心を共有する活動を特定して実施するよう常に努めることが期待される。
9.各国のSTRP窓口にはまた、各国のラムサール条約担当政府機関かつ/あるいはプロジェクトを実施する機関の求めに応じて、「ラムサール条約湿地保全及び賢明な利用のための小規模助成基金(SGF)」の下で資金供与を受けたプロジェクトのモニタリングと評価に参加することが期待される。
10.各国のSTRP窓口は、国内湿地目録に関する活動の支援、ならびに締約国である自国が「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を実施するための取り組みの支援の面で、積極的な役割を担う。
11.各国のSTRP窓口は、国内湿地委員会または国内ラムサール委員会の会合、もしくはこれと類似の組織がある場合にはその会合(生物多様性委員会など)に対して助言し、及びそれに参加し、締約国会議に対する国別報告書を作成する際に助言を行う。また、国内の関係する個人や団体に対し、各国の状況に合わせて適宜解釈を加えたSTRPの作業に関する情報の普及を支援する。
12.各国のSTRP窓口からの情報は、作業計画の各テーマ分野を率いるSTRPメンバーか、STRPの適切な地域ネットワークメンバーを通じて伝えることが望ましい。これが現実的でない場合、当該情報は、ラムサール条約事務局の適切な上級地域アドバイザーを通じて伝えることができる。
13.一般に、各国のSTRP窓口のネットワークは通信を通じて機能するものとし、可能な限り、電子メールとウェブ上のSTRP支援サービスを通じて機能するものとする。そのため、ラムサール条約事務局は、電子メールを利用できる各国窓口を、STRPメンバー専用のリストサーバーに加えるものとする。さらに事務局は、STRP関連の事項を掲載して検討を求めるため、STRP支援サービスのウェブ上に、専用のセクションをすでに開設している。
14.資金が限られているため、STRP及び各国のSTRP窓口ネットワークの主な使用言語は英語である。そのため、各国のSTRP窓口には、十分な英語力、特に英語のライティング能力が求められる。
15.各国のSTRP窓口は、STRPとラムサール条約事務局に対し、湿地保全と賢明な利用に関して各自が関心と専門知識を持つテーマ別分野についての情報(簡単な質問表による)と、各自が直接に参加することを希望するSTRP作業部会についての情報を提供する。
16.各国のSTRP窓口に対しては、ウェブ上のSTRP支援サービスの仕組みへの全面的なアクセスが許されているため、彼らはSTRPの作業のあらゆる段階(優先度の高い課題それぞれの達成範囲の拡大、作業部会や委員会(タスクフォース)が作成した文書案の検討、『ラムサール技術報告書』シリーズで出版が検討されている報告書などの原稿のピアレビューへの貢献など)に意見を提供できる。
各国のSTRP窓口の専門知識、技術、能力
17.締約国の担当政府機関が任命を検討する場合、各国のSTRP窓口は以下のとおりでなければならない。
ⅰ)水と湿地に関する国レベル、地域レベルの問題や優先事項を十分に理解していること。
ⅱ)国内の地域的な規模及び全国的な規模で(適切な場合にはさらに国際的な規模で)、湿地の保全と賢明な利用分野の専門家とのネットワークを形成する能力が示されていること、このようなネットワークに関与していることが明かであること、様々な背景の人々(科学者、政府、NGO部門など)の間での合意形成を促す能力があること。
ⅲ)湿地保全と賢明な利用に関するひとつ以上の側面、特に、次期STRP作業としてCOPが特定した優先的作業分野と優先度の高い課題に関連する側面について、その経験と専門知識が自国内で広く認められていること。
ⅳ)国内の地域レベルから全国レベルに至るまで、様々なレベルで湿地の専門家と協力し、議論を円滑に進め、科学に基づいた文書に対する検討結果を調整してまとめた経験があること。
ⅴ)STRPの会合間の作業の手段となる電子メールやウェブ上の情報通信システムを十分に利用できること。
ⅵ)(英語が引き続きSTRPの使用言語であるため)英語を理解し読み書きする能力が十分にあること。
ⅶ)適切な場合には、所属する組織や機関から支援を得つつ、各国のSTRP窓口に要求される作業を行う明確な意思と、それに要する時間があること。
18.締約国が新たにSTRP窓口を任命する場合、またはその時点のSTRP窓口の任命を再確認する場合、当該締約国は上記第17節に記載する基準に照らして、そのSTRP窓口の専門知識、技術、能力に関する情報を条約事務局に提供する。
- [英語原文:
- ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.9 "Refinements to the modus operandi of the Scientific & Technical Review Panel (STRP)", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_09_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_09_e.pdf.]
- [和訳:
-
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi9.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.]
- [レイアウト:
- 条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
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条約事務局「科学技術検討委員会」・「加盟国の同委員会担当窓口一覧」の英文ページ,
COP11決議案18(英語原文:Word 112 ㎅・PDF 109 ㎅) .]