Swan 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第6回締約国会議

ラムサール条約
19972002年戦略計画

第6回締約国会議(ブリズベン,オーストラリア,1996年3月1927日)にて採択

日本語訳:「ラムサール条約第6回締約国会議の記録」(1996年)より,了解を得て再録.

 英語   フランス語   スペイン語  (以上,条約事務局)

 PDF  (環境省のインデックスページ)     2003-2008 


[原注:条約の正式な名称は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)である。読者に簡便なように,湿地条約(Convention on Wetlands)ならびにラムサール条約(Ramsar Convention)という略称が用いられている。]


序章

1. 新しい世紀が始まろうとしており、ラムサール条約は湿地の生物多様性の保全と、持続可能な開発(この条約の『賢明な利用』の概念と同義と考えられる)とあらゆるところに住む人々の健康と福祉とを統合して考える必要性を強調しながら、今日までの成果の見直しを行い、将来に向けての明確な道作りを続けている。自然資源の基盤、とりわけ湿地の、破壊や間違った管理によって引き起こされた社会的、経済的そして環境的な困難により、世界の全ての地域で人々は苦しんでいる。

2. 湿地は水の供給、衛生、洪水調節そして食糧源のような人間社会への重要なサービスを提供している。湿地の重要な要素である水の管理は、21世紀には世界中で何百万の人々の日常生活に影響を与える決定的に重要な課題となるであろう。さらに湿地は、水や一次生産物を提供する生物多様性のゆりかごで、無数の動植物種の生存がかかっている。

3. ラムサール条約は、1996年2月にその25周年を祝った。この条約は、湿地を最大限広い意味において定義し、特定の生態系(湿地)を扱う、唯一の地球規模での条約である。1971年以来:

4. 最初の25年間に、この条約を運用するための一連の技術的なガイドラインや基準が作られて来た。

5. 『釧路声明』(1993年に釧路市で開催された第5回締約国会議で採択)で認識されたように、環境問題についてや、環境問題と開発の必要性が密接に関係していることに関して、最近の25年間に意識が非常に高まった。特に1992年のリオデジャネイロでの国連環境開発会議を皮切りに、新しい協定や機構が作られた。すなわち、アジェンダ21、地球環境ファシリティー、生物多様性条約、気候変動枠組み条約、持続可能な開発委員会、小島嶼諸国の持続可能な開発のための行動プログラム(バルバドス宣言)などである。

6. 世界銀行やOECD(経済協力開発機構)のような重要な機関においても、湿地の保全と賢明な利用が必要であることが新たに認識されている。地域レベルでも湿地への関心と意識が高まっている。例えば、欧州連合評議会の「自然生息地や野生動植物相の保全に関する訓令」、そして欧州委員会の「湿地の賢明な利用と保護についての通達」、そして1996年3月4日に欧州連合会議がこの通達に関して出した結論と「汎欧州生物学的および景観多様性戦略」(特に行動テーマの5、6そして7)、地中海の湿地のための「地中海湿地フォーラム」の提唱、北米水鳥管理計画、UNEP(国連環境計画)の「地域海計画」、「南太平洋地域環境プログラム(SPREP)」等である。環境、とりわけ湿地の問題に対する関心は、条約締約国の政府機関のすべてのレベル−国、県、地方のレベル−において明らかに高まりつつある。

7. このように地球的規模での進展を背景にして、1996年の3月にブリスベンで開催された第6回締約国会議で、『19972002年戦略計画』が採択された。この計画は、条約締約国、常設委員会、科学技術検討委員会、条約事務局、湿地の保全と賢明な利用に関わる幅広い団体個人に対する挑戦と言えよう。十分な成功を得るには、多くのNGO(非政府組織)を巻き込むことが必要であり、NGOは以前から条約に具体的な貢献をしてきた。条約を運営するための基本予算以外に、自主的拠出といった大きな追加的財源が得られれば、『戦略計画』の目標はより早く達成できるであろう。『戦略計画』の実施は、締約国政府の手によるところが大きい。各国の独立性を十分に認識し、条約の義務履行に向かって共に行動することを締約国は同意している。

8. この『戦略計画』を通じ、湿地における技術的な長年の活動が強化されることになり、開発援助機関との関係において、新たに触媒的な役割をすることとなった。ラムサール条約の技術面および政策面に関わる業務は、生物多様性条約のより幅広い課題と密接に重なるようになり、水鳥に関する伝統的な業務も、移動性の野生動物種に関するボン条約と、より明らかな関連を持つこととなる。ラムサール条約と協力関係にある国際NGO、すなわちIUCN(国際自然保護連合)、国際湿地保全連合(IWRB国際水禽湿地調査局にとってかわった)、WWF(世界自然保護基金)、そしてバードライフ・インターナショナル(Birdlife International、旧国際鳥類保護連盟)との長期にわたる関係は、継続されさらに促進される。そして湿地の賢明な利用に向けた、新たな協力関係の模索が行われる。

9. さらにこの『戦略計画』は条約条文をもとに、未来へ向けて多くの新らしい方向性を定めている。より大きな重点が置かれたのは以下の点である。

10. 『戦略計画』の実施程度、そのための財源の大きさ、活動の実施時期の決定は各締約国に一任されているが、第6回締約国会議は条約の25周年に際しこの戦略計画を採択するにあたって、締約国諸国に対し本条約の使命を達成するために新たな努力をすることを望む。本締約国会議はまた、全ての未加盟国と広範な国際社会に対しても、この取り組みに参加することを求める。


使命声明

条約の使命は、全世界で持続的な開発を達成する手段として、国内行動と国際協力を通じて行う湿地の保全と賢明な利用である。


[原注:戦略計画全体を通じラムサール条約の確立した用語「湿地の保全と賢明な利用」は統一してある。第3回締約国会議(1987年にカナダのレジャイナで開催)で定義された「賢明な利用」は、「持続的な利用」と同義と見なす。]


総合目標

[原注:一連の総合目標は、第4回締約国会議(1990年にスイスのモントルーで開催)で採択された「賢明な利用の概念実施のためのガイドライン」の論理と順序に沿っており、優先順位を表してはいない。]

全体の使命の中の戦略計画の総合目標は以下の通り。


原注:それぞれの行動を実施する責任を持つ団体を、かっこ[ ]で示した。締約国政府、常設委員会、科学技術検討委員会、ラムサール条約事務局、協力機関=バードライフ・インターナショナル、IUCN(国際自然保護連合)、国際湿地保全連合(ウェットランド・インターナショナル)、WWF(世界自然保護基金)。


総合目標 1:
条約の加盟国を世界中に広げる。

条約がその使命を全うするため、できるだけ多くの国々が締約国となるべきである。ラムサール条約は着実な成長を遂げ、現在は世界のすべての地域に締約国がある。第6回締約国会議の時点で、その締約国の数は93ヶ国となった。しかしながら、締約国のまだ少ない地域(カリブ海、中近東、アフリカ南部、南太平洋地域)もあり、これらの地域の国々が加盟することが望まれる。締約国が比較的多い地域でも、残りの国々に対し同様に加盟を推奨する。島嶼性の途上国には特別な必要性があることと、サンゴ礁、藻場、マングローブといった重要な湿地があることを認識し、それら島嶼性の途上国の加盟を奨励するため特別な努力を行う。近年の締約国数増加に基づけば、2002年までに締約国を少なくとも120ヶ国にする目標は達成できるであろう。

実施目標 1.1:
2002年までに少なくとも120ヶ国の締約国を確保するよう試みる。

行動 1.1.1 特に締約国の少ない地域の国々や、重要な湿地資源、また二つ以上の国にまたがる湿地資源(共有される種を含む)を持つ国々を、新たに締約国として加盟させる。その手段は以下の通り。

  • 未加盟国の締約国会議へのオブザーバー参加を促す。
  • すでに締約国となっている政府による、隣接する国々への接触を増やす。
  • 未加盟国の外交代表との接触を強める。
  • 加盟することの利益に関する情報を提供する。
  • 加盟に対する障害を特定した上、克服する。

[締約国、常設委員会地域代表、条約事務局、協力機関]

行動 1.1.2 地域会議とその活動、そして協力機関の地域事務所を通し、条約への加盟を促進する。[常設委員会地域代表、条約事務局、協力機関]


総合目標 2:
条約の賢明な利用ガイドラインを実施し、さらに発展させることによって、湿地の賢明な利用を達成する。

条約の第3条1の下に締約国は、「その領域内の湿地をできる限り適正に利用することを促進するため、計画を作成し、実施する」ことに同意している。この「賢明な利用」の概念を通じて、人間による湿地の持続的な利用は、条約の下での湿地の登録および一般的な湿地保全と、完全に両立するものであることを条約は常に強調してきた。締約国会議は、湿地に影響する広範囲な事業計画の策定において賢明な利用の概念を適用することを決定し、そのために「賢明な利用の概念を実施するためのガイドライン(1990年のモントルー会議勧告4.10)」そして「賢明な利用の概念の実施に関する追加の手引き(1993年の釧路会議決議5.6)」を採択した。

訳注 ワイズユースは、現在「賢明な利用」が一般的な訳語であるが、日本の法律上の条約条文は「適正に利用する」となっているため、原文を尊重しそのまま掲載した。

次の3年間の条約実施における最大の強調点は、土地利用計画、水資源管理、そして湿地に影響を及ぼすその他の決定における湿地の役割である。締約国が国家湿地政策(あるいは湿地の保全や賢明な利用を含むその他の政策)を策定しつつある場合には、そのような政策は他の国家環境計画の方策と適合しているべきであり、立法上の変更が必要な場合もある。そのため『戦略計画』の本節では、賢明な利用と法制度、機構、政策や計画の策定、そして一般的な政策決定を取り扱う。

実施目標 2.1:
賢明な利用ガイドラインが確実に適用されるようにするため、全ての締約国において国家的なあるいは超国家的な(例:欧州共同体)法制度や機構、そして実施状況を再検討し、必要があれば改訂を行う。

行動 2.1.1 法制度と実施状況の見直しを行い、締約国会議への国別報告で賢明な利用ガイドラインをどのように適用しているかを示す。[締約国]

行動 2.1.2 国家環境行動計画や国家生物多様性戦略、国家自然保護戦略といった他の国家的な自然保護計画策定の中において、明確な構成要素の一つとして湿地を扱うか、あるいは個別の国家湿地政策を策定するよう、いっそうの努力を促す。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 2.2:
全ての締約国において、土地利用や地下水管理、集水域や沿岸域での計画策定、その他全ての環境計画策定や管理に関する、国、県、地方の計画策定と政策決定に、湿地の保全そして賢明な利用を統合する。

行動 2.2.1 湿地、その中でも特に集水域と沿岸域の計画策定に関する土地利用計画策定の情報を収集し、締約国が利用できるようにする。[条約事務局]

行動 2.2.2 国家、県、地方の土地利用計画策定に関わる文書や活動において、また全ての関連機関および予算配分に関する条項に、湿地を含めることを促進する。[締約国]

実施目標 2.3:
賢明な利用に関するガイドラインと追加手引きの適用を拡大し、これまで扱われなかった特定の問題に関し締約国へ助言をし、現在行われている最良の実施例を提供する。

行動 2.3.1 賢明な利用の追加手引きの適用を拡大し、他の機関と協力して油流出防止や除去作業、農業による水質汚染、都市廃棄物や産業廃棄物といった特定の問題に取り組む。[締約国、科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

行動 2.3.2 現在のガイドラインと追加手引きの効果的な適用の例を広く伝える。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 2.4:
環境計画策定のために、湿地の恩恵と機能の経済的評価を提供する。

行動 2.4.1 湿地の恩恵と機能の経済的評価を示す文書と方法論を開発し、広い範囲への普及と適用を促進する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 2.4.2 IUCNや他の協力機関の支援を受けて、第6回締約国会議で発表された湿地の経済的評価に関する情報を出版する。[条約事務局、協力機関]

行動 2.4.3 行動2.4.2に基づいて出版される、経済的評価に関する知見を実施するような具体的活動を始める。[締約国]

行動 2.4.4 湿地の経済的評価の分野で推奨しうる具体的な実践例の内容と実施状況を、第7回締約国会議(1999年)の分科会で検討する。[科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

実施目標 2.5:
湿地に特に影響を及ぼす可能性のある開発案件や、土地利用・水資源利用の変更に関して、また特に登録湿地でその生態学的特徴が「技術の発達、汚染その他の人為的干渉の結果、変化するおそれがある」(条約第3条2)ものについては、環境アセスメントを実施する。

行動 2.5.1 第7回締約国会議(1999年)の分科会に向け、環境評価のためのガイドラインの検討結果と、現在行われている環境アセスメントの最良の実践例を準備し、賢明な利用の追加手引きの内容を拡大する。[常設委員会、科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

行動 2.5.2 湿地に影響を及ぼす可能性を持つ開発案件や、土地利用・水資源利用変更の結果、生態学的特徴に変化が起こる恐れのある登録湿地では、(湿地の恩恵と機能の経済的評価を十分に考慮しながら)確実に環境アセスメントを実施するようにし、またその結果をラムサール条約事務局に通知し、関係当局がその結果を十分に考慮するように図る。[締約国]

行動 2.5.3 開発案件や土地利用・水資源利用の変更のために、特に湿地資源への悪影響が起こる恐れのあるその他の重要な地域においても、環境アセスメントを実施する。[締約国]

行動 2.5.4 開発案件あるいは土地利用・水資源利用の変更による影響を評価する時には、(県や地方レベル、ならびに集水域あるいは沿岸域のレベルでの)「総合環境管理」や「戦略的環境アセスメント」を考慮する。[締約国]

実施目標 2.6:
復元そして機能回復の必要がある湿地を特定し、必要な対策を実施する。

行動 2.6.1 復元あるいは機能回復の必要がある湿地を特定するため、地域あるいは国家の科学的な湿地目録(モントルー会議の勧告4.6)、またはモニタリングの実行を用いる。[締約国、協力機関]

行動 2.6.2 喪失された湿地または機能が劣化した湿地を、復元そして機能回復させるための方法論を提供し実施する。[締約国、科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

行動 2.6.3 破壊された湿地または機能が劣化した湿地、特に主要な河川系または高い自然保護上の価値を有する地域(モントルー会議の勧告4.1)において、湿地の復元・機能回復プログラムを確立する。[締約国]

行動 2.6.4 第7回締約国会議(1999年)で湿地の復元と機能回復に関する分科会を催し、県や地方レベルそして集水域レベルにおける最良の実践例10例を特定する。[科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

実施目標 2.7:
湿地の保全と賢明な利用において、先住民を含んだ地域社会の情報提供を受けたうえでの積極的な参加、特に女性の参加を奨励する。

行動 2.7.1 湿地の管理における、地域住民そして先住民の参加に関する勧告6.3を実施する。[締約国、条約事務局]

行動 2.7.2 湿地の生態学的特徴をモニタリングするため、湿地の管理者そして地域社会が全てのレベルで協力して仕事を進めることを奨励する。このことにより、管理に必要な事項や湿地に対する人間の影響への理解が進む。[締約国]

行動 2.7.3 特に登録湿地において湿地管理委員会を設立し、湿地管理に地域社会を巻き込む。委員会には、地域の利害関係者や土地所有者、管理者、開発者そしてその他の利益団体、特に女性グループの代表者を入れる。[締約国、協力機関]

行動 2.7.4 湿地の保全と賢明な利用について、先住民や地域社会が持つ伝統的な知識そして管理のやり方を認識し、適用する。[締約国]

実施目標 2.8:
湿地の保全と賢明な利用への民間セクターの参加を奨励する。

行動 2.8.1 民間セクターが湿地に影響を与える事業を実施する際に、湿地の特質や機能そして価値をより深く認識するよう奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 2.8.2 民間セクターが湿地に影響を与える開発事業を実行する際に、賢明な利用ガイドラインを適用するように奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 2.8.3 民間セクターが湿地管理者と協力し、湿地の生態学的特徴をモニタリングするよう奨励する。[締約国]

行動 2.8.4 湿地管理委員会への参加を通じ、湿地管理に民間セクターを巻き込む。[締約国]


総合目標 3:
世界中のすべてのレベルで、湿地の価値と機能に関する認識を高める。

政治的法律的な活動を始めるため、財源を獲得するため、また湿地の法制度と管理の実施を確実に成功させるためには、一般の人々からの支持が欠かせない。一方で、一般の人々からの支持は、個人や社会が湿地から得られる利益といった問題についての情報とそれを理解することによってのみ得られる。

釧路会議の勧告5.8そして5.10で認識されているように、本条約の使命を達成するためには、湿地の価値と機能、ラムサール条約の内容や活動がより良く知られるようになって評価され、また支持を得ることが欠かせない。

実施目標 3.1:
協力機関や他の機関と協力し、各国の教育および普及啓発プログラムを促進するために企画された、湿地およびその機能と価値に関する国際的な「教育と普及啓発」プログラムの実施を支持し支援する。

行動 3.1.1 地球規模の協力で湿地の「教育と普及啓発」プログラムを発展させ実施するために、そのための調整の仕組みと機構を確認または確立することを支援する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.1.2 地域の教育と普及啓発活動で必要とされることを特定し、実現のための人的財政的資源を確保するために優先される事項を確認する作業に参加する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.1.3 各国の教育と普及啓発プログラムを支援するため、以下のような国際的な参考資料の用意を支援する。

  • 教育と普及啓発に関する既存資料のカタログ
  • 教育と普及啓発のための「湿地資料セット」(パンフレット、ポスター、ビデオ、CD−ROM、展示パネル)
  • 湿地の指導員や管理者のための普及啓発用マニュアル

[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.1.4 湿地教育センターや教育指導員の間で、情報、知識、技術の交換を促進する国際的プログラムを支援する。例えば、国際湿地保全連合(ウエットランド・インターナショナル)の教育と普及啓発作業部会(EPA Working Group)、世界河川環境教育ネットワーク(Global Rivers Environment Education Network=GREEN)、湿地リンクインターナショナル(Wetland Link International)のような国際プログラムがあげられる。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.1.5 まず5年間を試験期間とし、本条約の採択記念日(1971年2月2日)を含む一週間を「世界湿地週間」とする提案を発展させるよう奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.1.6 第7回締約国会議に向け、湿地に関する国際的な教育と普及啓発活動の評価を行う。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 3.2:
主要政策決定者や湿地の中や周囲に住む人々、湿地を利用するその他の人々、そして広く一般の人といった広範囲の人々を対象として、湿地に関する教育と普及啓発の国内プログラムを発展させ促進させる。

行動 3.2.1 政府機関やNGO、そして国内向けの教育と普及啓発プログラムを開発できるようなその他の機関の間における協力関係を奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.2.2 特定された必要な事柄や対象とするグループに基づき、湿地を肯定的に捉えるような見方を創り出し、湿地の価値と機能に対する関心を全てのレベルで喚起するための、国内事業やキャンペーンを支援する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.2.3 湿地の現場に教育センターを設置するよう奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.2.4 博物館、動物園、植物園、水族館、そして環境教育センターとともに、学校教育外で湿地についての教育と普及啓発を支えるような展示やプログラムの開発を奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 3.2.5 高等教育そして専門的な研修コースを含め、教育の全てのレベルのカリキュラムの中に湿地に関連した単元を組み込むよう奨励する。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 3.3:
ラムサール条約事務局の広報活動を改善する。また、条約をさらに推進し、より広範囲に適用されるようにし、また湿地の価値と機能について意識を高めるための「条約広報戦略」を作成する。

行動 3.3.1 条約事務局の広報活動、特に地域そして国内広報ネットワークの創出とその機能に関する活動を見直し、新しい資料と技術の利用を開拓し、既存の資料を改訂する。[条約事務局]

行動 3.3.2 既存の条約事務局の発行物、とりわけニュースレター、ビデオ、そしてCD−ROMをさらに発展させる。[締約国、条約事務局]

行動 3.3.3 既存の「ラムサール条約情報セット」を補完し、地域独自の問題そして未加盟国に対しては条約加盟に伴う利点を強調した資料を準備する。[常設委員会地域代表、条約事務局、締約国]

行動 3.3.4 締約国、常設委員会委員、科学技術検討委員会、条約事務局、そして協力機関を結び付ける、電子メールネットワークと電子掲示板/通信先リストを作成し維持するために、電子通信業者の支援を求める。[すべての関係者]

行動 3.3.5 19971999年の3年間における経験に基づき、第7回締約国会議に向けて「条約広報戦略」を準備する。[常設委員会、条約事務局、締約国]


総合目標 4:
湿地の保全と賢明な利用を達成するため、各締約国の関係機関職員の能力向上を図る。

「賢明な利用ガイドライン」は、湿地の保全と賢明な利用のために各締約国の中に適切な構造をもった機構が必要であることを強調している。どの地域でもどのレベルにおいても重要であるが、特に途上国において、本条約の使命と目的を達成する責任を持つ機関の対応能力を高めることが必要とされている。

既存の機関を強化するため、大規模な研修プログラムが必要とされている。どんな研修が必要で、どのような人々を対象とするかを判断するための戦略的な取り組み方では、地域、国、そして特定の湿地における違いを考慮に入れることが求められる。さらに、既存の研修の機会はさらに発展させて支援されなければならないし、また研修が行われていない地域や分野においては、新しく研修の機会を創り出さなければならない。この取り組みにおいては、環境にやさしい技術の移転や情報交換等、レベルの高い国際協力が重要な要素となってくる。

実施目標 4.1:
特に途上国である締約国において、湿地の保全と賢明な利用を達成するために担当機関の対応能力を向上させる。

行動 4.1.1 湿地の保全と賢明な利用に責任を持つ、国内の既存の担当機関の見直しを行う。[締約国]

行動 4.1.2 そのような見直しに基づき、以下のような方策を特定し実施に移す。

  • 各機関の間の共同作業および協力を増強する。
  • これらの機関の継続的な協力を促進する。
  • これらの機関に、適切な訓練を受けた職員を適切な数だけ配置する。

[締約国]

実施目標 4.2:
特に途上国において、湿地の保全と賢明な利用に関わる機関および個人にとって必要な研修内容を特定する。また研修後に必要となる活動も実施する。

行動 4.2.1 「賢明な利用のガイドライン」を実施する際に必要な研修とその対象者を、国、県、そして地方レベルで特定する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 4.2.2 湿地の保全と賢明な利用のために基本的な分野で、現在行われている研修の機会を特定する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 4.2.3 「賢明な利用ガイドライン」の実施に関連し、あらゆる地域において適用できるよう、以下の分野の専門的な単元を含んだ、新しい研修活動と一般的な研修用単元を開発する。

  • 集水域/河川流域そして沿岸域の統合的な計画策定と管理
  • 県、地方レベルまたは集水域/河川流域レベルにおける統合的な湿地管理計画の策定
  • 湿地の復元と機能回復
  • 教育と普及啓発のための技術

[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 4.2.4 以下のことを通して、管理者研修の機会を提供する。

  • 実地研修のための職員の交換
  • 特定の登録湿地における、試験的な研修講座の開講
  • 登録湿地に湿地管理者研修用の施設を設置
  • 世界中の湿地管理者のための研修講座についての情報を集め、配布する。

[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 4.2.5 「小規模助成基金」の「実施ガイドライン」において、研修活動に対する支援に高い優先度を与える。[締約国、常設委員会]

行動 4.2.6 湿地の保全と賢明な利用について、そしてまた、南南間の協力(途上国間の協力)に関した、情報、技術的援助や助言、専門知識の交流を図る。[締約国、条約事務局、協力機関]


総合目標 5:
すべての登録湿地の保全を確実なものとする。

締約国は登録湿地の保全を図ることを了承しているので、登録湿地の指定は単なる出発点に過ぎない。締約国会議はこれまで、登録湿地の生態学的特徴を維持することが湿地保全の鍵であるとして、この点を強調することに力点をおいてきた。これは人間の利用を拒むものではなく、湿地の機能や価値、または特質の、好ましくない本質的な変化を避けることが目的である。このねらいは、少なくとも登録時の生態学的特徴を維持することであり、また登録以前に失われていた機能や価値、または特質を復元するためには、多くの場合追加的な方策が必要となる。

『生態学的特徴』そして『生態学的特徴の変化』の「実用的定義」と、「登録湿地の生態学的特徴を記載し維持するためのガイドライン」が、1996年にブリスベンで行われた第6回締約国会議で採択された。また、締約国会議は締約国を支援するための機構を採択してきた。すなわち、「モントルーレコード」(モントルー会議勧告4.8、釧路会議決議5.4、そしてブリスベン会議決議.1)で緊急に行動を必要とするラムサール登録湿地を特定し、「管理指針手順」(勧告4.7と決議.14)により条約事務局は専門家の助言を締約国に提供できる。釧路会議の勧告5.7はすべてのラムサール登録湿地が管理計画を持つことを求め、その付属書は「登録湿地とその他の湿地のための管理計画策定ガイドライン」を含んでいる。管理のために特に手出しをしないと決定することも、『管理』の選択肢の一つである。

実施目標 5.1:
ラムサール登録湿地の生態学的特徴を維持する。

行動 5.1.1 第6回締約国会議(1996)で採択された「生態学的特徴の実用上定義」に照らし合わせ、生態学的特徴を維持するために求められる的確な方策を見極めて実行に移す。[締約国]

行動 5.1.2 生態学的特徴の変化の可能性を判断するために、地域社会およびその他の利害関係者から意見を取り入れて、関係者による湿地の定期的な内部検討を実施する。そして、対応措置を行ったり、必要な場合にはその湿地のモントルーレコード登録を申請する。[締約国]

行動 5.1.3 モントルーレコードを見直し定期的に改訂する。(釧路会議決議5.4、5.5、そして決議.1)[締約国、科学技術検討委員会、条約事務局]

行動 5.1.4 ラムサール登録湿地の将来の管理についての助言を提供するため「管理指針手順」(モントルー会議勧告4.7)の適用を増やす。[締約国、常設委員会、条約事務局]

行動 5.1.5 「管理指針手順」派遣調査団の報告による勧告の実施を促進する。[締約国]

行動 5.1.6 有毒化学物質(勧告6.14)、気候変動、そして海水面の変化を含む地球規模の危機が、ラムサール登録湿地の生態学的特徴に与える可能性がある影響を特定する。[科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

実施目標 5.2:
条約の「管理計画策定ガイドライン」に沿ったかたちで、また、地域社会と他の利害関係者の参加を強調しつつ、全ての登録湿地に対して湿地管理計画を策定し、実行に移す。

行動 5.2.1 「管理計画策定ガイドライン」を現場での経験を活かし、勧告6.13と照らし合わせた上で、見直しを行う。[締約国]

行動 5.2.2 締約国の参考とするために、1999年の第7回締約国会議の前に、地方、地域レベル、または集水域や沿岸域レベルで、登録湿地の管理計画の好例と考えられる10例の事例研究を出版する。[科学技術検討委員会、条約事務局、協力機関]

行動 5.2.3 地域住民や他の利害関係者から意見を聞いた上で、いくつかの湿地において試験的にプログラムを始め、第8回締約国会議(2002年)までに各締約国の登録湿地の少なくとも半数で確実に、管理計画かそれに代わる機構が準備中あるいは実施に移されているようにする。[締約国、協力機関]

行動 5.2.4 広い面積を持つ登録湿地、湿地保護区、その他の湿地に関連させて、ゾーニング(利用目的による区域分け)のための手段を確立し、実施に移すことを促す(釧路会議勧告5.3)。[締約国、協力機関]

行動 5.2.5 面積の狭い登録湿地や他の湿地、あるいは特に環境変化の影響を受けやすい湿地においては、厳正な保護のための手段の確立、そしてその実施を促進する(勧告5.3)。[締約国、協力機関]

行動 5.2.6 「小規模助成基金」の運用ガイドラインにおいて、登録湿地の管理計画策定への支援に高い優先度を与える。[締約国、常設委員会]

実施目標 5.3:
承認された標準書式に従い、登録湿地に関する情報を定期的に入手し更新する。

行動 5.3.1 湿地登録の指定が完了した際に、標準書式として承認された登録湿地インフォメーションシートに従うかたちで、締約国よりラムサールのデータベースに対し提出された登録湿地の地図と記載内容が完全なものであるようにし、管理計画策定と生態的特徴のモニタリングに用いられるのに十分詳しい情報を提供できるようにする。[締約国、条約事務局、国際湿地保全連合(ウエットランド・インターナショナル)]

行動 5.3.2 データベースの有用性と使い勝手を向上させるために、抜けたり不完全な登録湿地のインフォメーションシートや地図を、最優先でできる限り速やかに提出する。[締約国]

行動 5.3.3 登録湿地インフォメーションシートは、締約国会議2回の間に少なくとも1回の頻度で定期的に更新されるようにする。このことは、条約の達成度合いの評価、将来の戦略計画作成、広報活動に役立つほか、登録湿地・地域・テーマごとの分析ができるようになる(決議.13)。[締約国、科学技術検討委員会、条約事務局、国際湿地保全連合]

行動 5.3.4 第7回締約国会議(1999年)までにラムサール条約登録湿地目録を見直して改訂出版することとし、第8回締約国会議(2002年)までに第7回と第8回締約国会議の間に登録された湿地の要旨を作成する。[条約事務局、国際湿地保全連合]

実施目標 5.4:
急速な発展を遂げる情報通信技術と足並みをそろえるために、ラムサールデータベースの内容および構造、そしてハードウェアとソフトウェアをつねに見直す。

行動 5.4.1 現在データベース中にあるデータを評価し、締約国によって提供されたデータに欠落があればそれを特定する。[締約国、科学技術検討委員会、条約事務局、国際湿地保全連合]

行動 5.4.2 GIS(地理情報システム)を構築する可能性の検討を含め、要求に対応できるようデータベースを最新のものにして更新を行い、それらに応じて構造を改良する。[条約事務局、国際湿地保全連合]

行動 5.4.3 電子通信ネットワーク(インターネット)や、フロッピーディスクやCD−ROMのランタイム版を通じて(読みとり専用)、そして特別報告書やその他の形式で、データベースが多くの人によって利用できるようにする。[条約事務局、国際湿地保全連合]

行動 5.4.4 ラムサールデータベースと互換性のある国内湿地データベースの各国での構築を支援し、情報交換と相互交流ができるよう共通の規格を開発する。[締約国、協力機関]


総合目標 6:
条約の選定基準に合致する湿地、特にまだ十分登録されていない湿地タイプ、そして国境にまたがる湿地を登録する。

湿地をラムサール登録湿地に含めることは、湿地を保全するのに効果的な手段であることが証明されている。特に、湿地が特定の保護区として正式に指定されていなかった場合には効果がある。締約国数の増加と登録湿地の追加指定によって、登録湿地の数も年々着実に増えてきた。1996年3月27日現在、800カ所を越す登録湿地が指定されており、その総面積は50万平方キロメートルに及ぶ。これは喜ぶべき進展ではあるものの、これらのうち500カ所以上の登録湿地が、わずか24カ国の先進国である締約国にあり、80以上の登録湿地が経済的に過渡期にある15の締約国(東欧諸国)にある。途上国による登録湿地の指定を促進するためには、今まで以上の努力が必要となっている。これまであまり登録されていない種類の湿地や、国境にまたがる湿地の登録に対しても、優先的に注意を払う必要がある。

登録湿地を選定する基準は、締約国会議により採択されているが(モントルー会議勧告4.2)、さらに第6回締約国会議(1996年)では魚類にとって重要な湿地に関する選定基準が採択された。ラムサール条約の下での登録湿地選定基準は、地域単位または国単位の科学的な湿地目録を整備するのに役立ってきたし(勧告4.6)、登録湿地の候補地を特定する役割も果たしてきた。

実施目標 6.1:
ラムサール登録湿地の選定基準に合致する湿地を特定し、それに応じて登録を考慮する。

行動 6.1.1 登録湿地候補地を特定した地域の湿地目録を作成、定期的に改訂(特にアフリカの場合)、そして広く配布を行う。[締約国、協力機関]

行動 6.1.2 各締約国の領域内において、登録湿地の候補となる国際的に重要な湿地、そして県や地方レベルで重要な湿地を特定した、国内湿地目録を作成、改訂し、配布を行う。[締約国、協力機関]

行動 6.1.3 湿地の保全または消失の世界的な傾向を考慮する基礎情報となる、地球規模の湿地資源の定量化に着手するために、地域や国内の湿地目録や、その他の情報源を活用する。[条約事務局、協力機関]

行動 6.1.4 水鳥と他の分類群の個体群の大きさに関する情報を国際湿地保全連合とIUCNが更新する際にこれを支援し、これらの情報を登録湿地候補地を特定するために用いる。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 6.2:
地球規模または国内で、特にこれまであまり登録されていない種類の湿地に関して、登録湿地の面積を増やす。

行動 6.2.1 ラムサール条約の下での各地域および各締約国内において、湿地タイプの広い範囲にわたって湿地登録が行われるようにするため、新たに締約国となった国家による湿地登録、そして既に締約国となっている国家、特に途上国による追加登録を促進して、登録湿地の面積が増えるようはからう。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 6.2.2 登録を考慮される湿地が登録湿地選定基準を満たすよう、締約国を支援し助言を与える(釧路会議決議5.3)。[条約事務局]

行動 6.2.3 適切な場合には、特にサンゴ礁、マングローブ、藻場、泥炭地といった、これまであまり登録湿地として指定されていない種類の湿地が新規登録されるよう優先的に注意を払う。[締約国]

行動 6.2.4 湿地の保全と賢明な利用のための手段を講じる第一歩として、現状では国内法で特別な保護指定を受けていない湿地を新規登録するよう、特別な注意を払う。[締約国]

行動 6.2.5 国境にまたがる湿地の登録を、優先事項として検討する。[締約国]

実施目標 6.3:
登録湿地を選定するためのラムサール基準を継続的に見直す(決議.3)。

行動 6.3.1 地球規模の湿地保全の優先事項および価値を確実に反映するよう、一般的選定基準を継続的に見直す。[締約国、科学技術検討委員会]

行動 6.3.2 水鳥と魚類以外の生物分類群についての特別の登録湿地選定基準を作成する。[締約国、科学技術検討委員会]

行動 6.3.3 既存の登録湿地選定基準を様々な地域で適用する際の手引きを提供する。[締約国、科学技術検討委員会]


総合目標 7:
他の条約や政府またはNGO機関と協力し、湿地の保全そして賢明な利用のための国際協力と財政支援を促進する。

本条約の第5条に基づいて締約国は、特に二つ以上の国の領域にまたがる湿地や水系の場合に、条約の履行についてお互いに協議する責務を受け入れている。この条文はさらに、湿地とそこに生息する動植物相に関する政策を連携させることにも触れている。また、締約国は湿地に影響を与える開発援助についても、第5条に基づいて協議を行うべきものと解釈している(モントルー会議勧告4.13)。

ラムサール条約は、特に国境にまたがる湿地に関する国際協力活動を増強し、他の地球規模および地域的な天然資源利用に関する条約と活動を連携させるよう取り組み、さらに、これらの条約を履行するための各国国内における連携を促進する。これまでの総合目標を達成するため、特に途上国と経済が移行期にある国々がラムサール条約の下での責務を果たすため、本条約は資金調達のための触媒としての役割を展開する。

実施目標 7.1:
複数の国家によって共有される湿地と集水域を管理するために、国際的または地域的に必要となる事項を特定し、共通した取り組み方を企画し、これを実行に移す。

行動 7.1.1 国境にまたがる国際的に重要な湿地(複数の国家に共有される集水域や河川流域を含む)を特定し、『集水域アプローチ』(釧路会議勧告5.3)を用いることによって、これらの地域の共同計画を準備し実施するよう促す。[締約国、協力機関]

行動 7.1.2 国境にまたがる湿地、あるいは似かよった特性を持つ湿地の姉妹湿地提携を促進し、成功例を国際協力の利点を具体的に提示するために用いる。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 7.2:
湿地に生息する生物種や湿地問題に関係した、共通の目的や目標の達成を押し進めるために、ラムサール条約と他の国際的・地域的な環境条約あるいは機関とのつながりを強化、そして正式なものとする。

行動 7.2.1 情報交換や協力を促進するために、関係する条約との協議に参加、あるいは新たな協議を提唱し、協同作業を行える分野を開発する。[常設委員会、条約事務局]

行動 7.2.2 他の条約および協力機関と一緒にプロジェクトの提案準備を行い、支援可能性のある援助機関に共同で提出する。[締約国、常設委員会、条約事務局、協力機関]

行動 7.2.3 特に国家生物多様性戦略へ、湿地への配慮を盛り込むこと、湿地に影響を与える事業計画とその実施に関して、「生物多様性条約」との協力および協同作業を強化する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 7.2.4 特にラムサール登録湿地、そして世界遺産指定地や生物圏保護区としても指定されている湿地に関して、「世界遺産条約」およびユネスコの「人と生物圏プログラム」との協力を発展させる。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 7.2.5 主として移動性の動物種に関するボン条約、フライウェイ(渡り鳥の移動ルート)に関する協定やネットワーク、そして移動性の種を取り扱うその他の機構等との協力体制を通じて、複数の国家で共有される湿地生物種における国際協力へのラムサール条約の貢献を高める(勧告6.4)。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 7.2.6 「ワシントン条約」との相互関係を強化することによって、湿地に影響を与える野生生物の取引対策へのラムサール条約の貢献を発展させる。[条約事務局]

行動 7.2.7 気候変動が湿地に影響を与える恐れがあるという観点から、「気候変動枠組み条約」との連携をはかる。[締約国、条約事務局]

行動 7.2.8 地域レベルで湿地の保全と賢明な利用に関わる条約や機関との協力を拡大する。特に、「ヨーロッパ共同体」とは、生息地訓令の湿地への適用、ヨーロッパ連合外の国々の湿地に対して生息地訓令のような方策を採択し適用する件に関して協力を促進する。また、ヨーロッパ評議会の「ヨーロッパ野生生物および自然生息地に関する条約(ベルン条約)」とは、汎ヨーロッパ生物景観多様性戦略に関して、バルセロナ条約と地中海行動計画とは地中海湿地フォーラムの活動に関して協力を進める。西半球条約との協力、特に地域海条約(Regional Seas Conventions)に関して国連環境計画、そして「南太平洋地域環境プログラム(SPREP)」との協力も促進する。[締約国、条約事務局]

行動 7.2.9 例えば「国際サンゴ礁イニシアチブ(ICRI)」と「世界水協議会」等、湿地に関連する事項を扱う他の専門機関との協力を発展させる(決議.23)。[条約事務局]

実施目標 7.3:
開発援助機関と多国籍企業が、途上国や経済が移行期にある国において、例えば「賢明な利用ガイドライン」を適用するなどして、湿地に関わるより良い活動を確実に行うようにする。

行動 7.3.1 開発援助機関に支援された湿地プロジェクト、あるいは多国籍企業が始めたものの中で、代表的な模範例を特定する。[条約事務局、協力機関]

行動 7.3.2 多国間および二国間開発機関と多国籍企業とが、湿地の価値と機能を十分に認識するよう協力し(モントルー会議勧告4.13)、OECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会により出版された「熱帯と亜熱帯の湿地保全と持続的な利用を改善するための開発機関用ガイドライン」を考慮に入れて、湿地保全と賢明な利用のためにその活動を改善するよう支援する(勧告6.16)。[条約事務局、協力機関]

行動 7.3.3 途上国がラムサール条約の下での責務を果たせるようにするため、二国間の開発プログラムを通じて、また多国間開発機関との相互協力によって支援を行い、実施された活動およびその結果を報告する(釧路会議勧告5.5)。[締約国]

行動 7.3.4 特に途上国の湿地に影響を与える可能性のある援助を行う、各国の援助機関の責務に関して、締約国が国際協力の分野の責務をどのように果たせばよいかという点でガイドラインを作成し、第7回締約国会議(1999年)の分科会で検討する。[常設委員会、条約事務局]

実施目標 7.4:
特に途上国と経済が移行期にある国のために、条約の下での責務を履行するための資金を確保する。

行動 7.4.1 各締約国の予算の中で、湿地の保全と賢明な利用のための資金を配分する。[締約国]

行動 7.4.2 開発援助機関が資金提供する開発計画の中に、湿地の保全と賢明な利用のためのプロジェクトを含め、それら援助機関が各締約国のラムサール担当省庁との協議を確実に行うようにする。[締約国]

行動 7.4.3 開発援助を行う多国間機関と、プロジェクト案件の審査、計画、評価に関して緊密な関係を保つ。特に以下の機関との関係を保つ。

  • 特に地球環境ファシリティー(GEF)の協力機関としての世界銀行、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)
  • アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、インターアメリカ開発銀行、ヨーロッパ投資銀行といった地域の援助機関
  • 欧州委員会

[条約事務局]

行動 7.4.4 湿地の保全と賢明な利用そして『戦略計画』を実施する上で、途上国と経済が移行期にある国を支援するため、多国間および二国間開発援助機関からの直接的な資金援助を運用する。[締約国、条約事務局]

行動 7.4.5 他の機関からの資金援助を受けるために、途上国と経済が移行期にある国を支援して湿地関連プロジェクトの申請を準備する。[条約事務局、協力機関]

行動 7.4.6 湿地プロジェクトの案件審査、計画と評価にあたり、二国間開発援助機関を支援する。[科学技術検討委員会、条約事務局]


総合目標 8:
条約にとって必要となる制度上の仕組みと人的財政的資源を供給する。

締約国会議およびラムサール条約の様々な機構(常設委員会、科学技術検討委員会、条約事務局、小規模助成基金、モントルーレコード、管理指針手順)は、それらができる限り効率的に機能するよう、継続的な運営の見直しがなされる。これらの機構の効率よい運営が保証されるように、財源人材が求められる。さらに、本条約のより効率的な履行を促進するために、国際的レベルと国内レベルで、さらに新たな機構が必要となる場合もある。ここまでの総合目標を達成するために、本総合目標では制度上の仕組みと人的財政的資源を提供する。

実施目標 8.1:
ラムサールの使命および目標を最大限に達成するために、条約の制度と管理構造の評価を行い、必要があれば変更を行う。

行動 8.1.1 第7回締約国会議(1999年)より会議の再編成を行い、管理運営上の議題を扱う運営会議と、湿地保全と賢明な利用における優先事項を扱う専門会議に分け、必要に応じ小規模な作業部会を加えた形にする。[常設委員会、条約事務局]

行動 8.1.2 締約国数の増加に伴い、常設委員会における地域区分および代表者数の継続的な見直しを行う。[締約国、常設委員会]

行動 8.1.3 第7回締約国会議(1999年)までに、常設委員会の役割、責務、必要とされる財政措置を見直し、必要があれば変更を加え確認する。[締約国、常設委員会]

行動 8.1.4 毎回の締約国会議において、科学技術検討委員会(STRP)の業務の優先順位を見直す。[締約国、常設委員会]

行動 8.1.5 事業計画の決定に従って、必要となる条約事務局の職員構成と人数を再検討し、条約事務局と他条約の事務局や協力機関との関係を見直す。[締約国、常設委員会]

行動 8.1.6 締約国会議で毎回『戦略計画』の実施状況についての評価を報告し、2回ごとの締約国会議で次期6年間(締約国会議2回)分の『戦略計画』の草案を準備する。[締約国、常設委員会、条約事務局]

行動 8.1.7 締約国会議で採択された『戦略計画』と3年間の事業計画に基づき、常設委員会で検討し承認を行うため、条約事務局の年間活動計画を作成する。[常設委員会、条約事務局]

行動 8.1.8 条約事務局との調整を行いながら各地域での条約の実施状況を向上させるため、締約国または協力機関における連絡調整機構を開発する。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 8.1.9 政府機関、NGO、主要利害関係者、先住民、民間セクター、利益団体、土地利用計画策定および管理担当当局からの意見を取り入れたり、それぞれの代表が参加する機会を提供するため、国内ラムサール委員会の設立を促進する(釧路会議勧告5.13)。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 8.1.10 湿地の保全と賢明な利用に関係する、すべての政府機関の条約の活動への関与を増やす観点から、各締約国のラムサール担当部局の見直しを行う。[締約国]

行動 8.1.11 締約国会議用の国別報告書の見直し(決議.21)を含んだ、ラムサール条約の全ての制度、機構、事業の効果と効率を評価するための手続きを確立し、それが定期的に実施されるようにする。それによって発生する勧告を実行に移し、その結果を締約国会議および常設委員会に報告する。[締約国会議、常設委員会、条約事務局]

実施目標 8.2:
ラムサール条約の活動を行うのに必要な資金を提供する。

行動 8.2.1 条約の基本予算に対する拠出金が請求された際には、これを全額各年の始まりに速やかに支払うものとする。[締約国]

行動 8.2.2 途上国と経済が移行期にある国からの常設委員会代表が、それぞれの地域全体において条約の活動と情報の伝達を調整する際に、効果的に機能できるようにするため、財政面および人材協力の面で十分な支援を提供する。[締約国会議、常設委員会]

行動 8.2.3 資金提供者にプロジェクトを説明するとき触媒的な役割を果たすため、条約事務局に十分な職員が配置されるよう確保する。[締約国会議]

行動 8.2.4 研修計画、教育と普及啓発活動、ラムサールのデータベースの開発、条約の広報戦略への資金手当を優先して行う。[締約国、条約事務局、協力機関]

実施目標 8.3:
協力機関と協力する利点を最大化する。

行動 8.3.1 協力機関と共同で計画する仕組みを強化し、職員の出向を含め連絡と情報交換を向上させる。[締約国、条約事務局、協力機関]

行動 8.3.2 資源の効果的利用を最大化し、取り組みの重複が起こらないよう確かめるため、また特に賢明な利用ガイドラインについて新たな協力関係を結ぶため、協力機関との正式な協約を見直し更新する。[条約事務局、協力機関]

実施目標 8.4:
地保全と賢明な利用のためのラムサール小規模助成金基金(決議5.8、.6)のため、最低年間百万米ドルを確保する。

行動 8.4.1 第6回締約国会議(1996年)後の最初の正式な常設委員会で承認し、すぐ実行に移すことができるよう、ラムサール小規模助成金基金のため最低年間百万米ドルを確保するための戦略を策定する。[条約事務局、常設委員会、締約国、協力機関]

行動 8.4.2 第7回締約国会議(1999年)で、小規模助成基金の実績を批判的に評価する。[締約国会議、常設委員会、条約事務局]

行動 8.4.3 小規模助成基金を高い水準で適用することを奨励し支援する。[常設委員会、条約事務局、協力機関]


[英語原文:ラムサール条約事務局,1996.Ramsar Strategic Plan 1997-2002, March 1996, Convention on Wetlands (Ramsar, 1971). http://ramsar.org/key_strat_plan_e.htm.]
[和訳:「ラムサール条約第6回締約国会議の記録」(奥田直久小林聡史 監修,東梅貞義 編集,釧路国際ウェットランドセンター 発行,1996年;環境省HP収録,2006年)より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2001年8月.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop6/key_strat_plan_j.htm
Last update: 2007/05/16, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).