Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.31:広報教育普及啓発プログラム

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.31

2003−2008年ラムサール条約広報教育普及啓発プログラム

1.ラムサール条約を実施するための中心的かつ横断的要素として、広報・教育・普及啓発(CEPA)の重要性を認識し

2.ラムサール条約の2003−2008年戦略計画では、その総合目標、特に湿地の賢明な利用に関する総合目標1.の「締約国が自国の領土内のすべての湿地の賢明な利用を確保するために、必要かつ適切な手段と措置を開発し、採用し、使用するよう促進し、援助する」ことを目指すうえでの、CEPAの危急の重要性が認識されていることに留意し

3.決議.9で最初の「1992−2002年ラムサール条約普及啓発プログラム−ラムサール条約の施行を支えるためのCEPA促進活動」が採択されたことを想起し

4.持続可能な開発に関する世界首脳会議の結論で認められたCEPAの重要性と、その重要性ゆえに、湿地の生態学的、社会的、文化的、経済的価値を推進する、持続可能な開発のためのCEPAが、ラムサール条約の今後のCEPA活動の焦点となるべきであることを認識し

5.決議.9の要請により、2002年9月30日現在、86か国の締約国が政府のCEPA担当窓口を任命し、69か国の締約国が国内のNGOのCEPA担当窓口を任命したことを満足しつつ了解し

6.第8回締約国会議(COP8)に提出された 119の国別報告書の分析によって、68の締約国に少なくとも 480の湿地教育センターが存在し、18の締約国の公式の教育課程の全レベルで湿地の問題が取り上げられており、さらに58の締約国の公式の教育課程の一部のレベルで取り上げられていることが明らかになったことに喜びをもって留意し

7.26か国の締約国が国内のCEPA特別部会を形成し、特に、オーストラリア、ドイツ、ハンガリーでは、決議.9で要請されたように、国内の湿地CEPA行動計画を策定したことを祝福しつつも、同様に行動した締約国がごくわずかであったことを憂慮し

8.70か国以上で、政府、NGO、地域の関係者が2月2日の世界湿地の日を推進するための特別のイベントを行ったことを賞賛し

9.ラムサール条約の国際団体パートナーが、世界規模及び多くの締約国内で、CEPAに関する活動への支援を継続していることに対し、感謝の意を表し

10.COP8に際して、「Our wetland heritage」の出版を資金的に支援したスペインとスイスの両政府と、重要な広報要素を持つラムサール条約のエビアン・イニシアティブに継続して資金を提供したダノン・グループを祝福し

11.この目的のために自由に使える財源及び人的資源が非常に限られたものであるにもかかわらず、CEPA全般、特に広報に関連し行った条約事務局の取組に満足の意を表し、決議.28によって設けられた条約の普及啓発プログラムのための任意基金の財源調達には、これまで十分な取組がなされなかったことに遺憾の意を表し

12.条約事務局が2002年6月に開催したワークショップに参加し、第2段階の「CEPAプログラム」を熟考し、さらに練り上げた人々、そして、CEPA担当窓口、ラムサール条約の国際団体パートナーと他の条約の代表者、見解を寄せていただいたCEPAの他の専門家、地球生物多様性フォーラムの一部として本締約国会議の直前に開催されたCEPAワークショップの参加者、そしてこのワークショップのために資金提供を行ったスペイン国バレンシア自治政府環境省に感謝の意を表し

締約国会議は、

13.締結国、条約事務局、ラムサール条約の国際団体パートナー、他のNGO、地域の関係者、その他、世界、地域、国、地元の各レベルでラムサール条約の実施を支援するため適切な行動の立案に関わる他の人々への手引きとして、本決議に付属書として含まれるラムサール条約の「2003−2008年ラムサール条約広報教育普及啓発プログラム」を採択する

14.締約国に対して、本プログラムを通して湿地の生態学的、社会的、文化的、経済的価値に効果的に取り組むために、「持続可能な開発のためのラムサール条約のCEPA」の概念を採用することを奨励する

15.科学技術検討委員会(STRP)に対して、それが適切であるなら、STRPからのメンバーと議長、及びその他の招聘した専門家からなるCEPA専門家作業部会を設立するよう指示する

16.常設委員会に対して、STRPの将来の3年間の作業計画すべてに、同委員会に要請されるすべての具体的な任務で用いる横断的なツールとしてCEPAを組み入れることによって、CEPAが果たす重要な役割を認識するよう、またこうした任務に優先順位を設定するよう要請する

17.STRPCEPA専門家作業部会の緊急の任務として、本決議の附属書に概要が記されている活動を承認する

18.ラムサール条約事務局に対して、条約の「普及啓発プログラム」の任意基金の財源を得るための具体的な取組を行うよう要請する。その際、STRPCEPA作業部会の任務が、この任意基金または他のこうした拠出金を使って行われなければならないことに注意する;

19.すべての締約国に対し、優先事項として、湿地に関するCEPAに適任の、政府とNGOの担当窓口を指名し、しかるべくラムサール条約事務局に報告するという決議.9でなされた要請を再確認する

20.すべての締約国に対して、決議.9及び「2003−2008年CEPAプログラム」で提言されているように、湿地に関するCEPAの分野の国内の需要、能力、機会の見直しを行い、これに基づいて、世界、地域、国内、地方の各レベルで取り組む優先活動のための国内「CEPA行動計画」(国、国に準じる地域、集水域、または地元レベル)を作成するため、その目的にかなうメカニズムが現時点でない場合は、適切に構成された特別部会を設立するよう強く要請する

21.すべての締約国に対して、より拡充した環境、生物多様性、湿地及び水管理の政策手段とプログラムの統合された要素として、国内の「湿地CEPA行動計画」の立案と実施を図るよう、またCEPAが、諸活動の効果的な実行を下支えするものとの認識を確実にするよう極めて強く要請する

22.「湿地CEPA計画」を策定した締約国に対して、その計画の有効性を定期的に評価し、必要な場合には優先行動を修正し、こうした見直しと改定に関するフィードバックをSTRPCEPA作業部会に提供するよう求める

23.締約国と条約の国際団体パートナーに対して、STRPCEPA作業部会の検討のために、非常に成功した活動とあまり有効ではなかった活動の検討を含め、CEPA関連の取組から学んだ教訓を概説し、実証するケーススタディをラムサール条約事務局に提出するよう要請する

24.締約国に対して、必要であれば、教育課程の中の湿地関連部分の内容を見直し改善すること、及び、教育省や他の教育担当当局と協力してこれを行うことを奨励する

25.多国間、二国間の援助機関そして民間企業の協賛者に対して、ラムサール条約の「2003−2008年CEPAプログラム」に示された適切な活動に対する支援の要請を改めて表明する

26.また「CEPAプログラム」の基礎として、英国に本拠を置く野禽湿地トラスト(WWT(UK))の湿地リンクインターナショナル計画を締約国会議が支援することも同じく改めて表明し、この計画の世界的、国内的発展のための財政的支援が大きく欠如していることについて、改めて憂慮の意を表明する

27.ラムサール条約事務局に対して、STRPCEPA作業部会を通じて担当窓口の役割を明確にすることにより、また、ラムサール条約湿地研修サービスが設立されたのちは、これを通じて研修を提供することにより、CEPA担当窓口の能力を強化することを強く要請する

28.締約国、多国間及び二国間の援助機関、ならびに民間企業の協賛者に対して、CEPAの国際調整の向上を可能にするため、ラムサール条約の普及啓発プログラムのための任意基金に資金を拠出することを重ねて強く要請する。これには、条約の公式使用言語として3言語の使用、湿地リンクインターナショナル計画の資金調達、STRPCEPA作業部会の活動の促進、世界湿地の日の祝典やイベントのための参考資料の製作への援助に対する、この分野での支援の強化が含まれる;

29.湿地教育センター及び関連施設を設立した、あるいは、計画中の締約国に対して、こうしたセンターがWWT(UK)の湿地リンクインターナショナル計画のもとでの世界ネットワークに参加すること、及び、こうしたセンターが湿地と湿地に関連するCEPAに関する学習と研修の重要な場となることを支援するよう奨励する

30.事務局長に対して、ラムサール条約と生物多様性条約(CBD)の二つの条約のそれぞれのCEPAに関するプログラムを調整するため、設立された共同作業計画のメカニズムによって、CBDの事務局長との協力を強化するとともに、さらに、適宜、他の条約や計画と同様の活動を行う機会を調査し、目指すよう指示する

31.ラムサール条約の国際団体パートナー及び条約事務局が協力協定を結んでいる他の組織に対して、適宜、専門知識、ネットワーク、技術、自由に使える資金によって、世界、地域、国内、地方の各レベルでラムサールの「CEPAプログラム」の実施を支援するよう促す

32.締約国に対して、各締約国とその他の関係者間の情報、経験、専門知識の共有を促進する手段として、ラムサールフォーラム、CEPAメーリングリスト、ラムサール条約のもとで運営されているその他の広報ネットワークに、各国の湿地管理者を参加させることを奨励するよう重ねて強く要請する

33.重要なラムサール条約に関する手引きとガイドラインをいっそう広く利用できるようにするため、ラムサール条約の3つの使用言語とは違う国や地方の言語の締約国に、こうした手引きとガイドラインの翻訳を検討するよう強く要請する


付属書

2003−2008年ラムサール条約広報・教育・普及啓発プログラム

背景

1.1999年にコスタリカのサンホセで開かれた第7回締約国会議(COP7)で、決議.9はラムサール条約のもとでの最初の広報・教育・普及啓発(CEPA)(この用語の説明については添付文書1を参照)を推進するための行動プログラムを採択した。本プログラムは条約の最初の戦略計画、特に総合目標3に直接対応するものであった。

2.採択されたこの「普及啓発プログラム」は1990年から2002年にかけてのものであったため、2002年11月にスペインのバレンシアで開かれたCOP8で採択するためにプログラムをさらに改善し、練り上げるための見直しプロセスが行われた。COP8に先だって提出された国別報告書を使って、この見直しプロセスに情報が提供され、この分野の専門家、ラムサール条約の国際団体パートナー、各国の政府とNGOのCEPA担当窓口との協議が行われた。

3.以下に示すこの「CEPAプログラム」は、COP8で採択されたラムサール条約の第2次戦略計画とともに2003−2008年の6年間に実施される予定である。

第1次CEPAプログラムの主な成果

4.国別報告書その他の情報源から、ラムサール条約において、湿地に関するCEPAに対して関心と実践の決意が高まっていることを示す証拠がある:

a)ラムサール条約事務局に国内のCEPA行動計画を提出した締約国はわずか3か国(オーストラリア、ドイツ、ハンガリー)であったが、現在、他の多くの締約国がこの目標に向けて作業中である。24の締約国がCEPA特別部会を設立した。これはいくつかの国にとっては行動計画を策定に向けた最初の重要な段階であるが、他の多くの国々は、「CEPAプログラム」の実施は、すでに国内ラムサール委員会の作業計画の不可欠な部分であると報告している;

b)地方、国、地域、世界レベルで、的を得た効果的な、湿地に関するCEPAの活動が数多く行われているという証拠がある;

c)ラムサール条約事務局はすでに、CEPAに対象を絞った管理運営その他の支援策を実施している。)2001年4月から、ラムサール条約のホームページにCEPAに関する参考資料と「CEPAプログラム」に関する基礎的な情報を提供する専用ページが設けられている。)2001年5月、湿地に関するCEPAについての情報交換を推進するため、CEPA担当窓口及びその他の関心のある多くの個人・団体を会員として、英語、フランス語、スペイン語によるCEPAのメーリングリストが始まった;

d)68か国に少なくとも 480の湿地教育センターが特定されており、そのうち 260がラムサール条約湿地に結びついているので、野禽湿地トラスト(WWT(UK))の湿地リンクインターナショナル計画を通じて、有効なセンター間ネットワークを作る機会が、また将来は、CEPAを推進するための主要拠点としてラムサール条約湿地に湿地センターを設ける機会が大いにある;

e)地域社会の参加と教育を含む湿地管理計画策定へのアプローチがラムサール条約において進展しており、条約内に参加に関する技術についての知識が急速に育っていることを示す多くの証拠がある。

CEPAへの投資−機会と利益

5.以下に挙げるものは、CEPAへの投資によって生じうる機会と利益である:

a)湿地の問題は環境の問題だけではなく、ますます他の部門の関わるところとなってゆき、その結果、湿地の保全と賢明な利用が社会と政府の中で主流化する可能性がある;

b)協力計画への取組と合意の結果として、地域社会は持続可能な方法で資源を利用するようになり、その結果、対立が減少する;

(訳者注)スチュワードシップ(stewardship):自分たちの共有財産だという意識を持って、自主的に管理していこうとする考え方。あるいは管理権を委ねられた存在として責任を持つこと。

c)地域社会が、湿地の再生と長期的な「自然の管理人としての務め」(スチュワードシップ)に投資することを合意する;

d)湿地の保全と賢明な利用に賛成し課題として取り組む支持層がいる。

6.生物多様性条約(CBD)のための「CEPA作業プログラム」が生まれつつあり、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のための教育、啓発、参加の作業計画についての検討が実施されている。これらのCEPAに関するプログラムは、特に、これらCEPAプログラムの有効な実施方法についての知識を共有するなど、相互に価値を高めあう可能性がある。国レベルでこうした分野の作業と専門家を結びつけることが、機会を提供することにつながる。

ビジョンと基本原則

ビジョン

7.ラムサール条約の「CEPAプログラム」のビジョン(抱負)は
「人々が湿地の賢明な利用のために行動すること」
である。

基本原則

8.ラムサールのCEPAプログラムを支える基本原則は以下のとおりである:

a)湿地は、人間の生命を維持し、生物多様性を保全し、気候変動や砂漠化の影響に対処するのに役立つ重要な財とサービスを提供する。CEPAは、人々の社会的、政治的、経済的、文化的な現実を湿地生態系が提供する財とサービスの視点からとらえなおすためのツールである。

b)ラムサール条約は、人々が湿地の価値を正当に評価するよう動機づけるよう探る。その結果、湿地の保全と賢明な利用の支持者となり、関連する政策形成、計画策定、管理に関わるような活動をする可能性がある。

c)ラムサール条約の実施における主な関係者は、社会全体で賢明な利用の原則を主流化するために、主な関係者たちに働きかけ、適切なメッセージを伝えるための有効なCEPAのツールと専門知識を必要としている。

d)賢明な利用という問題と概念は、さまざまな部門の主な利害関係者を参加させ、また各部門の計画と行動でこの問題が主流となるよう、効果的に伝達する必要がある。この意思伝達は、水平方向も(関係部門間で、また、部門横断的に)、また垂直方向にも(利害関係者から政府に、そしてその逆にも)行われなければならない。

e)ラムサール条約の締約国は、「CEPAプログラム」への支援が湿地資源をめぐる対立を減らし、この問題に関わる擁護者、行為者、ネットワークの数を増やし、情報に基づく政策決定と支持層を構築するための投資であると、認識しなければならない。CEPAは、湿地の賢明な利用の達成を目指すさまざまな行動を結集するものである。CEPAは、各締約国のラムサール条約の実施の中心部分を形成するものでなければならない。

総合目標と実施目標

9.「CEPAプログラム」には3つの総合目標があり、それぞれの総合目標の下に複数の実施目標が掲げられている。

10.総合目標1−条約全体を通しすべてのレベルで湿地に関するCEPAプロセスの価値と有効性について支持を得る。

実施目標1.1−CEPAのプロセスを、条約の政策立案、計画策定、実施のすべてのレベルに組み入れる。

実施目標1.2−CEPAのプロセスが、世界、国、地元のあらゆるレベルで、湿地の賢明な利用というラムサール条約の目標の達成に有効であることを実証する。

11.総合目標2−湿地に関するCEPAの活動を国及び地元で効果的に実施するための支援とツールを提供する。

実施目標2.1−湿地の賢明な利用についてCEPAを支援し触媒となるための、国のリーダーシップ、ネットワーク、結合力のある枠組を提供する。

実施目標2.2−湿地の賢明な利用を推進し、結果として湿地の賢明な利用を実現する、CEPAに関する情報と専門知識を移転、交換、共有する。

実施目標2.3−湿地資源の価値を認識することによって、湿地の賢明な利用に参加し貢献する、個人・集団の能力と人々の機会を向上させる。

12.総合目標3−湿地の賢明な利用を社会で主流化し、人々に行動する力を与える。

実施目標3.1−湿地が提供する重要な生態系サービスと湿地の社会的、経済的、文化的価値を地域社会に啓発するための国レベルの継続的なキャンペーン、計画、プロジェクトを促進する。

実施目標3.2−CEPAプロセスを、さまざまな関係者が関わる参加型の湿地管理に組み入れることを確保するメカニズムを支援し、開発する。

実施目標3.3−世界、国、地方のCEPAの取組の担当窓口としての湿地センター及びその他の教育センターの役割を推進し、支援する。


ビジョンと目標を目指すための行動

13.本プログラムの行動は、ラムサール条約の以下の担当機関に向けられたものである:

CP:ラムサール条約の締約国(Contracting Party)、特に各国の行政当局と各締約国に設置されるべき国内ラムサール委員会・国内湿地委員会(または同等の機関)
CEPA:ラムサール条約の広報・教育・普及啓発(Communication, Education, Public Awareness)に関する各国の担当窓口
STRP:科学技術検討委員会(Scientific and Technical Review Panel)、科学技術検討委員会のCEPA作業部会、各国の担当窓口のネットワーク
事務局:ラムサール条約事務局

14.本プログラムは、条約の協力者を巻き込んだ行動も特定している:

IOP:国際団体パートナー(International Organisation Partner)、現在はバードライフ・インターナショナル、国際自然保護連合(IUCN)、国際湿地保全連合、世界自然保護基金(WWF)
OC:他の協力組織(Other Collaborators)。これには、ラムサール条約と協定を結んでいる組織が含まれる。特に、UNESCOの人と生物圏(MAB)プログラム、ユーロサイト(Eurosite 欧州の自然遺産管理機関のネットワーク)、ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)、湿地科学者協会(SWS)、米国コロンビア大学国際地球科学情報ネットワークセンター(CIESIN)、国際影響評価学会(IAIA)、ダックス・アンリミテッド(カナダ、メキシコ、米国)

15.本計画のそれぞれの行動を実施する任にある、または実施を支援することが要請されている担当者を[ ]内に記す。たとえば、[CPSTRP、事務局]。

総合目標1:条約全体を通しすべてのレベルで湿地に関するCEPAプロセスの価値と有効性について支持を得る。

実施目標1.1 CEPAのプロセスを、条約の政策立案、計画策定、実施のすべてのレベルに組み入れる。

行動:

1.1.1 第9回締約国会議(COP9)までに、他の条約や組織との共同作業計画を含め、条約のすべての作業計画にCEPAを組み入れる。締約国のために今後ラムサール条約に関する手引きを作成する場合は、その作成段階においても同様にCEPAを考慮する。[締約国会議(以下COP)、事務局、STRPIOP

1.1.2 湿地に関するCEPAを、関係する地域(適切な場合には)、国、集水域、地方の各レベルでの、湿地その他の適切な部門、たとえば、生物多様性保全、水管理、漁業、貧困減少などの部門ごとの政策、戦略、計画及びプログラムに組み入れる。[CPCEPA

1.1.3 決議.31の付属書で定められた作業計画を実施するために、STRP内にCEPA専門家作業部会を設立する。[STRP、事務局、IOPOC

実施目標1.2 CEPAのプロセスが、世界、国、地方のあらゆるレベルで、湿地の賢明な利用というラムサール条約の目標の達成に有効であることを実証する。

行動:

1.2.1 湿地の賢明な利用の推進、特に湿地資源を直接に利用する人々の関与を得るにおいてCEPAを実践するための各種アプローチを評価するパイロットプロジェクトを計画する。[STRPCPCEPAIOP

1.2.2 既存のCEPAに関するプログラムとケーススタディを見直し、これらの経験から有効なアプローチに関して得られた教訓を記録する。[STRPCPCEPAIOP

1.2.3 行動1.2.1及び1.2.2から得られた所見と結論を、適切なメカニズムによって、締約国、及び広く社会の人々が利用できるようにする(実施目標2.1、2.2及び2.3).[事務局、CPCEPAIOP

総合目標2:湿地に関するCEPAの活動を国及び地方で効果的に実施するための支援とツールを提供する。

実施目標2.1 湿地の賢明な利用についてCEPAを支援し触媒となるための、国のリーダーシップ、ネットワーク、結合力のある枠組を提供する。

行動:

2.1.1 (決議.9で要請されたように)締約国は、優先事項として、それぞれ政府とNGOの湿地に関するCEPA担当窓口の役割を果たすのに適格な人物を任命し、これらの役割を果たす人物とその連絡先の詳細をラムサール条約事務局に報告することを要請される。[CP

2.1.2 ニーズ、技術、専門知識及び選択肢の見直しを行い、この作業計画を実施するための優先事項を定めるため、(この目的のために他にメカニズムが存在しない場合)ふさわしい利害関係者とNGOの代表が参加することを確保しつつ、国のCEPA特別部会を設立する。[CPCEPAOC

2.1.3 この目的のために策定された「湿地に関する広報・教育・普及啓発(CEPA)の見直しと行動計画策定に関する追加手引き」にもとづいて、上記行動2.1.2から生まれる結論を組み入れた、国の(及び、適宜、国に準ずるレベル、集水域レベル、地元レベルで)湿地に関するCEPA行動計画を作成し、この行動計画の写しをラムサール条約事務局に提供し、他の締約国、及び関心のある団体及び個人が利用できるようにする。(「追加手引き」はハードコピーを事務局から、HTML文書を http://ramsar.org/outreach_reviewsactionplansI.htm から入手可能である。[CP(国の湿地に関するCEPA特別部会または同様の機関)、IOPOC

2.1.4 湿地に関するCEPAを、適宜、国の湿地、生物多様性、林業、農業、灌漑、発電、鉱業、観光、漁業の各委員会、及びその他関連する政策及び計画策定委員会(存在する場合には)の活動に組み入れる。[CP

2.1.5 行動2.1.2、2.1.3、2.1.4を実施する一環として、関連する政府省庁及び機関相互の意思伝達と情報共有システムの効率と有効性に関心を払い、必要な場合には、不足点に取り組むためのメカニズムを開発する。[CP

2.1.6 生物多様性条約、国連気候変動枠組条約、UNESCO人と生物圏(MAB)プログラムを含め、他の国際条約や計画のもとでのCEPAの活動との協働を促進するため、世界的にも国内的にも協力して活動する。[事務局、CPCEPAIOP

2.1.7 国レベル・国際レベルでCEPAの支援のために誰でもアクセスできる、オンラインで検索可能な、CEPAの専門知識とCEPA担当窓口のリストを作成し、管理する。そしてCEPAの各種プログラムと活動を支援するためにこのサービスを推進する。[事務局、CP

上記行動1.1.2も参照。

実施目標2.2 湿地の賢明な利用を推進し、結果として湿地の賢明な利用を実現する、CEPAに関する情報と専門知識を移転、交換、共有する。

行動:

2.2.1 ラムサール条約のウェブサイトと、その内部で特にCEPAプログラム用に設計されたCEPAミニサイトの開発を継続し、これらサイトが世界的にこのCEPAのプログラムの礎石であり続けるよう参考資料を追加する。[事務局]

2.2.2 ラムサール条約の国際団体パートナー、特にIUCNの広報教育委員会、そして、協力協定を結んでいる他の組織にもまた、この世界規模のCEPAプログラムを支援するための参考資料や効果的なCEPAアプローチに関する情報を一般に利用可能なものとするよう奨励する。[事務局、IOP

2.2.3 湿地に関するCEPAの活動を支援するための参考資料の作成、配布、共有を継続する。[事務局、IOPCPCEPAOC

2.2.4 各国のラムサール条約担当省庁、ラムサール条約の国の湿地CEPA担当窓口、CEPAの専門家、ラムサール条約湿地管理者、環境教育と普及啓発を専門とする施設、地域の関係者が含まれるようにラムサール条約の世界規模のメーリングリストを管理し、さらなる拡大に努める。同様のメーリングリストを国内で設立し、支援し、世界のメーリングリストとリンクさせる。[事務局、CPCEPAIOPOC

2.2.5 野禽湿地トラスト(WWT(UK))の湿地リンクインターナショナル計画が、湿地教育センターを支援してCEPAの推進のための世界規模のネットワークと国内の研究センターを創設し、また先進国、開発途上国、市場経済移行国のセンター間の情報交換を促進できるよう、野禽湿地トラスト(WWT(UK))の湿地リンクインターナショナル計画の調整を促進し、財源調達を図る。[CP、事務局、IOP

2.2.6 先進国、開発途上国、市場経済移行国の湿地教育センター間の情報と専門知識の交換を促進するため、湿地教育センターの姉妹提携を促し、財源調達を図る。[CPCEPAIOP

2.2.7 湿地資源、及びどのように湿地資源を賢明に利用しうるかについての意識と理解の促進を目指した世界、国内、地域の取組を支援するため、ラムサール条約フォトライブラリーを設立する。[事務局]

実施目標2.3 湿地資源の価値を認識することによって、湿地の賢明な利用に参加し貢献する、個人・集団の能力と人々の機会を向上させる。

行動:

2.3.1 湿地教育センター(実施目標3.3を参照)の設立と運営を含め、湿地に関するCEPAの分野での現在の国内のニーズと能力を見直し、これをもとに、国の湿地CEPA行動計画(行動2.1.3を参照)の中での能力育成(キャパシティビルディング)の優先事項を決定する。[CPCEPA

2.3.2 ラムサール条約の国際団体パートナーと協力して、地方、国、地域、世界レベルでの専門知識と知見の共有を促進するため、湿地に関するCEPAについての専門家情報と研修の機会の提供元を特定する。[事務局、CPCEPA

2.3.3 行動2.3.1によって優先事項と特定された能力育成を支援するため、女性や先住民社会・農村社会などの主要グループが見過ごされないことを確保しつつ、適切なメカニズムを通じて、財源を探る。[CP

2.3.4 湿地の賢明な利用の原則を推進し、湿地の賢明な利用という目標を追求する際のCEPAの重要性を認識しつつ、湿地が提供する生態系サービスに関する情報を公式の教育課程に確実に組み込むために、公式の教育課程を見直す。[CPIOPOC

総合目標3:湿地の賢明な利用を社会で主流化し、人々に行動する力を与える。

:既述の実施目標はすべてこの総合目標を達成するのにも役立つ行動を含む。

実施目標3.1 湿地が提供する重要な生態系サービスと湿地の社会的、経済的文化的価値を地域社会に啓発するための国レベルの継続的なキャンペーン、計画、プロジェクトを促進する。

行動:

3.1.1 認識を高め、地域社会の支援を構築し、「自然の管理人」アプローチ(スチュワードシップ)と湿地と向き合う姿勢を促進するための国レベルのキャンペーン、計画またはプロジェクトを実施する。[CPCEPAOC

3.1.2 湿地の価値と機能についての認識を高めるため、国と地方のレベルで適切なイベント・広報活動や参考資料の配布を行って、世界湿地の日、世界湿地週間を祝う。[CPCEPA、事務局、 IOPOC

3.1.3 政策決定者及び広く社会の人々に湿地の価値と利益を知らせるために、メディアと協力する。[CPCEPA、事務局、IOPOC

3.1.4 適当なラムサール条約湿地を条約の賢明な利用の原則の実証湿地として活用し、それらが能力、標識(signage)、説明資料を適切に備えていることを確保する。[CPCEPA

実施目標3.2 CEPAプロセスを、さまざまな関係者が関わる参加型の湿地管理に組み入れることを確保するメカニズムを支援し、開発する。

行動:

3.2.1 地方の管理行動でCEPAの積極的な役割を示すことにより、COP9で検討するために、以下を強化する実際的な経験に基づく追加手引きを策定する。「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」、「湿地の管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」「湿地を効果的に管理するために、湿地の文化的側面を考慮するための基本原則」を強化するため。[STRPCPIOP

3.2.2 上記の手引きが採択されたら、この手引きがそれぞれの管轄で十分に適用されるよう努める。[CP

3.2.3 集水域・河川流域と地方の湿地に関する計画策定と管理の方向と性格を決定付けるものとして複数の利害関係者を含む機関を設置すること、またこれらの機関がCEPAの適切な専門知識を確実に保有することを確保する。[CP

3.2.4 集水域・河川流域の計画策定と管理に関する文書に、水及び湿地管理の全体的な目標を達成するうえでの補完的なプロセスとして、CEPAと能力育成が必ず含まれるようにする。[CP

3.2.5 補完的なCEPAのための適切な戦略と行動を(まだ組み入れていない場合)湿地管理計画に組み入れる。[CP

実施目標3.3 世界、国、地方のCEPAの取組の担当窓口としての湿地センター及びその他の教育センターの役割を推進し、支援する。

行動:

3.3.1 地方や国のCEPAの活動の担当窓口とするため、ラムサール条約湿地や他の湿地に教育センターを設立するよう努める。[CP

3.3.2 湿地教育センターが存在している場合、それらが提供している情報を見直し、その情報がラムサール条約とその賢明な利用の原則を適切な方法で推進するのに役立っていること、そしてこうしたセンターが地方の湿地管理の「主要な実施者」と関係者への広報、適切な場合には、彼らの参加の促進に役立っていることを確実なものとする。[CPCEPAIOPOC

3.3.3 既存及び将来の湿地教育センターには、CEPAに関する世界及び国の専門知識にアクセスするためのメカニズムとして、野禽湿地トラスト(WWT(UK))の湿地リンクインターナショナル計画への参加を奨励する。(行動2.2.5も参照)[CPCEPAIOPOC

3.3.4 学習、教育、研修の適切な施設(博物館、動物園、水族館、植物園及び関連施設)を国のCEPAの取組に含めるよう努める。そうした学習や教育の場として、湿地に関連した解説的な展示物やプログラムの開発を奨励し、湿地を拠点としたセンターとのリンクも奨励する。(実施目標2.3を参照)[CPCEPAIOPOC

3.3.5 国のCEPA担当窓口が湿地センター及び他の教育センターと協力することを奨励し、適宜、湿地に関するCEPA特別部会やその他の計画策定機関にそうしたセンターの代表者を含める(行動2.1.1及び2.1.2を参照)。[CPCEPAIOPOC


添付文書1

CEPA」と「主流化」という用語の意味するものを理解する

1.このプログラムを実施するにあたり、締約国及び他の関連グループが「広報・教育・普及啓発(CEPA)」という用語が意味するものについて共通の理解を共有することが重要である。以下に示す助言は、「生物多様性の主流化[Mainstreaming Biological Diversity]」(UNESCO、生物多様性条約(CBD)、国際自然保護連合(IUCN)が作成)に基づいており、この分野で実践にあたる人々が通常これらの用語をどのような意味に用いているか、またこのプログラムがどのような考え方のもとに策定されたかを示すことを目的とする。

2.広報(Communicationとは、理解促進と相互理解へと導く双方向の情報交換である。これは、「主要な実施者」と関係者の参加を得るために使うことができ、まず始めに彼らに耳を傾け、次に意思決定がなぜ、どのようになされるかを明確に説明することにより、社会のさまざまなグループの協力を得る一つの手段である。手段的アプローチでは、湿地保全を支援し、経済的制約に取り組み、行動を促す他の手段とともに広報が使われる。

3.教育(Educationは、人々が湿地保全を支援するよう、情報を提供し、動機を与え、権限を与えることができるプロセスである。これはライフスタイルの変化を誘導するだけではなく、個人、制度、企業、政府の運営の方法に変化を起こすことによって可能となる。

4.普及啓発(Public Awarenessは、結果を変える力を持つ個人や主なグループに、湿地に関連する問題へと目を向けさせる。普及啓発は課題設定と主張の呼びかけであり、何が、なぜ重要な問題であるか、目標を目指す意欲、その達成のために何がなされているか、なしうるかを人々が理解できるようにする。

5.主流化(Mainstreamingはこの「CEPAプログラム」で使われるもう一つの用語である。これには多くの定義があるが、この文脈では、社会、企業、政府が、生態系と自然環境からもたらされる機能、サービス、利益のすべてを認識し、そのうえで意思決定においてこうした価値を適切に発揮させるための行動をとるようにさせることができるプロセスを意味する。したがって、主流化は持続可能なあるいは賢明な利用を実現していくうえで中核をなすものある。


添付文書2

ラムサール条約の「CEPAプログラム」の潜在的な対象グループと関係者

1.この「CEPAプログラム」の対象となりうるグループには、一般社会または市民社会という最も広いカテゴリーにあてはまるものが数多く存在する。本プログラムを利用する締約国等が、行動計画を決定するときの一助とするため、本添付文書に27の小グループを記す。これらは湿地の状態と長期的な持続可能性に、大きく直接的な違いをもたらすことができると特定されたグループである。

2.この「CEPAプログラム」に基づいて国または地方の計画を策定する場合、締約国等は、優先順位が最も高い対象グループを決定する際に、自国の状況に照らして本添付文書の内容を考慮するよう要請される。

3.「CEPAプログラム」は、この計画に対応してとられる行動の結果として、ラムサール条約、及び条約が奨励しようとする諸原則を支持する代理人、使節、擁護者となる「主要な実施者」の数が増えることを基本的に想定している。そのため、「CEPAプログラム」への支援は、政策決定者を支援し、湿地の保全と賢明な利用の実現を目指す地元規模の行動を結集することを目的とする投資として見られるべきである。

A)一般大衆

対象グループ/個人 根拠
地主(特に、湿地の管理に責任を持つ者)地主は湿地に直接影響する決定を下す。締約国とラムサール条約は彼らに情報を与えるとともに、彼らが専門的情報と専門知識を利用できるようにしなければならない。
先住民及び地域社会湿地に関係のある多くの先住民や地域社会は、こうした生態系を持続可能な方法で管理する偉大な知識をもち、また現在でも、湿地と文化的につながっている場合もある。ラムサール条約は、この経験を他の湿地管理者と共有すること及び先住民の湿地の管理者としての立場(スチュワードシップ)を認めることを奨励するよう、目指すべきである。
女性多くの文化では、女性は、家族という単位の中で一番実行力に富み、生活習慣の変更を受け入れやすい傾向があるので、湿地管理に携わる女性を増やすことは優先事項である。女性はまた、家族の中で一番多くこどもと言葉を交わすものである。
子ども子どもは次の世代の環境管理者ないし環境の世話人であり、子どもたちには、ラムサール条約が湿地の重要性とその賢明な利用法を確実に伝えなければならない。子どもたちは自分たちが受けた教育を通じてその親たちの教師となることもできる。
全国規模のNGO、地域NGO多くの国では、地域NGOが行動達成になくてはならない存在である。彼らが専門的な情報と専門知識を利用できるような環境が必要である。
電子メディア、活字メディアに携わる人々電子メディアや活字メディアでのニュースやその他の記事を通じて、一般大衆への湿地に対して肯定的な参考情報の伝達を促進できる。
地域社会のリーダー、著名人:スポーツ選手、宗教の指導者、芸術家、王族、教師、オピニオンリーダー等地域社会のリーダーは、一般に対する存在感を利用して懸案の課題に対する注意を引くことができる。また湿地保全に共感する人々は、ラムサール条約のメッセージを普及する理想的な大使となることができる。

B)すべてのレベルの政府・行政団体

対象グループ/個人 根拠
地方自治体、県又は州の政府及び中央政府内の環境政策決定者及び計画策定者左記の当局者は、地方、地域、及び国の規模での主な意思決定者である。彼らの行動は地方のレベル又は集水域や河川流域の規模で、湿地に対して直接に、プラスにもマイナスにも影響しうる。
地方自治体、県又は州の政府及び中央政府内の湿地管理者(監視人、レンジャー等)こうした人々は、ラムサール条約湿地の管理を担当する場合には特に、湿地生態系を管理する最善の実践例及び彼らの仕事に対して市民の支持と参加を得ることについて、助言を受ける必要がある。湿地管理者は、直接に貴重な湿地管理も経験しているので、これらの経験を管理者や他の人々と共有できる方法を見つけることが優先事項である。
各国のラムサール条約担当省庁彼らは、自己の裁量で適用したり普及したりできる最善の情報を持つべきである。
各国の他の環境関連条約担当省庁及びその担当窓口湿地等の土地及び水資源の管理に対して総合性の高い方法をとるべきだとすれば、他の条約を実施する人々にもラムサール条約への理解と共感を呼び起こす必要がある。
ラムサール条約その他環境関連条約に関する国内諮問委員会(国内ラムサール委員会等)同じく、ラムサール条約その他の条約の実施に関して政府に助言する人々にも、ラムサール条約への理解と共感を呼び起こす必要がある。
持続可能な開発と教育関連のすべての職務及び環境関連条約を担当する大臣ならびに国会議員、州議会議員、県議会議員、地方議会議員彼らは政策の設定、予算配分等に直接介入するため、ラムサール条約はこうした大臣やあらゆる政府閣僚から支持を得る必要がある。野党の国会議員らは、将来こうした地位につく可能性がある。
各国の援助機関、二国間援助機関ラムサール条約は、一連の持続可能な開発問題に関して政府と接触している左記機関が行っている内容について、概ね良好な理解が得られているように確保する必要がある。ラムサール条約は、関係当局者に対して十分な説明がなされ、かつ彼らが締約国内の現地プロジェクトを通じてラムサール条約の原則を支持できるように確保しなければならない。
大使、及び海外任務につく職員中央政府がより良く情報に精通できるように、こうした職員がラムサール条約とその運用方法について全面的に理解していることが重要である。

C)国際的組織及び地域的組織

対象グループ/個人 根拠
世界的な組織 − 世界銀行、地球環境ファシリティー、国連開発計画、国連環境計画、地球水パートナーシップ等ラムサール条約は、一連の持続可能な開発問題に関して政府と接触している左記機関の内部に、条約の活動内容に対する概ね良好な理解があるように確保しなければならない。当該機関に資金供与計画がある場合には、ラムサール条約は、関係当局者に対して十分な説明がなされ、かつ彼らが締約国内の現地プロジェクトを通じてラムサール条約の原則を支持できるように確保しなければならない。
地域的な組織 − 南太平洋地域環境プログラム、欧州委員会、南部アフリカ開発共同体、地域的な開発銀行等同上
世界的なNGOパートナー、その他国際NGO、地域NGO条約の4つの正式なNGOパートナー(IUCN(国際自然保護連合)、WWF(世界自然保護基金)、国際湿地保全連合、バードライフ・インターナショナル)は、いずれもラムサール条約の推進に積極的であり効果的である。さらに多くの国際NGOや地域NGOをラムサール条約のメッセージ伝達に巻き込む必要がある。
他の環境関連条約や計画(生物多様性条約(CBD)、砂漠化対処条約(CCD)、ボン条約(CMS)、気候変動枠組み条約(UNFCCC)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)、世界遺産条約、人と生物圏プログラム(MAB)の事務局世界及び国のレベルで条約間の協働を促進したいならば、左記を対象とすることが不可欠である。

D)企業

対象グループ/個人 根拠
潜在的な後援者、支援者ラムサール条約は湿地の持続可能な利用を推進している。したがって企業の行っている活動が条約の目的に反しないように、働きかけなければならない。
主な産業
・水及び衛生設備
・潅漑及び給水
・農業
・鉱業
・林業
・漁業
・環境管理者
・観光
・廃棄物処理
・エネルギー
産業部門のうち、左記等の部門は、湿地に大きくマイナスの影響を及ぼす可能性がある。ラムサール条約は、企業活動が湿地の減少を招かないような実践方法を、当該部門において推進しなければならない。
職業団体ラムサール条約は、職業団体を通じて同条約の賢明な利用の実践を奨励すべきである。

E)教育部門及び教育機関

対象グループ/個人 根拠
教育大臣、教育課程作成当局、試験委員会・大学、現職教官左記はすべて、湿地の保全と賢明な利用という問題を、学校及び他の公式な教育課程に加えるよう働きかけることができる。
全国教職員協会、国際教職員協会教育課程や学習プログラムにラムサール条約の原則を盛り込むことは、一般的には教職員協会と協力することによって促進できる。
環境教育に関する全国ネットワーク、国際ネットワーク、協会及び評議会左記の組織が作成中の教育資料その他の資料に、湿地と水の問題を盛り込むことができる。
湿地センター、環境センター、動物園、水族館、植物園等左記は、ラムサール条約のメッセージを広める場として理想的であり、適切な情報と資料がそこで入手できるように、努力を傾注すべきである。
全国図書館ネットワーク、国際図書館ネットワーク図書館ネットワークは、ラムサール条約と湿地に関する情報を一般市民に利用しやすいものにできるすばらしい場を提供する。

付属書

2003−2005年の3年間の科学技術検討委員会の広報教育普及啓発作業部会の優先任務

1.科学技術検討委員会(STRP)の3年間の作業計画の各任務について、広報・教育・普及啓発(CEPA)の問題が十分に検討され、第9回締約国会議(COP9)で締約国の検討のために策定される手引きでそれが適切に反映されるよう、各種作業部会に情報提供を継続する。

2.COP8に提出された国別報告書に示されたCEPAに関連する情報を評価し、この分野で締約国が経験した主な障害と制約を明らかにする。これについてまとめた助言をSTRPと常設委員会に提出し、これを作業部会の行動の手引きとして使う。

3.「CEPAプログラム」の目標を促進するうえで、ラムサール条約2003−2008年戦略計画に存在するCEPAに関する問題と機会について、既存のラムサール条約の手引きを見直し、要請されたように、締約国、STRP、条約事務局、国際団体パートナーのために追加手引きを作成する。

4.CEPAが地方の管理行動において果たす役割を示すために(「CEPAプログラム」の行動3.2.1)、COP9での検討に備え、ラムサール条約の以下のガイドラインを強化すべく、実際的な経験に基づいた追加手引きを作成する。「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」(決議.14)、「湿地の管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(決議.8)、決議.19の添付文書「湿地を効果的に管理するために、湿地の文化的側面を考慮するためのガイドライン」。

5.締約国のために用意されているラムサール条約の他の手引き(ラムサールハンドブック「ツールキット」に含まれる)を見直し、CEPAをこうした政策と計画策定のアプローチに組み入れる方法を示すため、適宜、追加手引きを作成する。

6.「CEPAプログラム」と他の国際条約・計画の活動を見直す。国際条約には生物多様性条約、国連気候変動枠組条約、ユネスコの人と生物圏(MAB)プログラムが含まれるが、これに限定されるものではない。より整合性のあるアプローチを進めるにはどうすれはよいかをラムサール条約事務局に助言する(「CEPAプログラム」行動2.1.5)。

7.湿地の賢明な利用の推進にCEPAを応用するための各種アプローチを評価するため、パイロットプロジェクトの範囲と調査事項を策定する(「CEPAプログラム」行動1.2.1)。

8.湿地に関するCEPA活動の既存のモデルとケーススタディを見直し、こうした経験から得られた教訓を記録する(「CEPAプログラム行動1.2.2」)。これらの結論とケーススタディをラムサール条約事務局に提出し、締約国及び他の関連組織に配布できるようにする(CEPAプログラム行動1.2.3)。

9.ラムサール条約事務局と協力して、各国の湿地に関するCEPA行動計画の見直しと改定について結論を、当該計画の実施例として、すべての締約国が入手できるようにする。


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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