執筆紹介9
小売業のIT(情報技術)の活用方法
活性化相談員 鐘井 輝
今日、IT(情報技術)に関連した記事が新聞に載らない日はないといっても過言ではありません。世間で騒がれているこの技術をいかに小売業へ取り入れていけばいいのか、その考え方の概略を紹介します。
一口にIT(情報技術)といっても小売業に関係したこの技術には様々なものが存在します。そのなかでも代表的な技術としてインターネットやカードシステム、POSシステムをあげることができます。
1.IT(情報技術)の活用目的の明確化
これらの技術を小売業がどう活用していけばよいのでしょうか。自店が今後取り組んでいきたいことに応じて決めていく必要があります。
例えば、自店の商圏を越えて多くの消費者に自店の商品やサービスを知ってもらいたい場合はインターネットを活用してホームページを作成することが必要でしょう。
また、自店へ買い物に来る顧客を今まで以上に知るためにはカードの活用が必要です。 どの地域から月に何回来られ、当店での累計買い物金額はいくらになっているのかなどの把握が可能になります。顧客一人ひとりへのきめ細かな対応が実現するのです。
自店の顧客がどのような商品を好んで購入するのか、何曜日のどの時間帯にどの商品がよく売れているのかなどを知るためにはPOSの活用が必要になってきます。POSの活用で売れ筋の品切れを防いだり、品揃えの改善を行うことが可能になります。 紙面の都合もありますため、今回以下ではインターネットの活用についてもう少し説明を加えます。
2.インターネットの活用
インターネットの活用は新しい可能性を出現させます。
新しい市場
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売り手と消費者の情報の不均衡がなくなる
オークション、フリーマーケット、集団購買 |
新しい空間
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自分の空間をどこへでも持っていける
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新しい価値
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地域を越えて情報が流通 巨大なヒットが生まれる可能性
ニッチ価値観のビジネス成立可能性 |
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商品や価格は従来の販売でもインターネット上の販売でも変化することはありませんが、販売促進方法と立地による制約が変わってきます。なぜなら販売においてインターネット上では時間と場所という制約がないからです。いつでも、どこでも、誰でも、情報のネットワークへ接続できれば購入が可能になるのです。
インターネットの導入により24時間顧客への対応が可能となります。その結果商圏は拡大し全国レベルの大商圏ビジネスの可能性も生まれてきます。また、商品の見積もりも簡単に行えるため、新たな販売スタイルでの需要の創造も期待できます。特に購入金額が高く購入の決定に多くの情報が求められ商品はインターネットでの販売方法は適していると考えられます。インターネットの活用で販売を拡大する流れは次
のようになります。
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ホームページの作成 |
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ホームページへの誘導 |
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誘導客の常連化 |
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効果測定 |
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@目標の設定
インターネットを何のために活用するのかという目標の設定が必要です。コストをかけて運用をする以上はホームページへ期待する目標販売金額や目標会員数などの具体的な数値目標設定が求められます。
Aホームページの作成
誰が見るのか、対象顧客を想定して作成するホームページの役割を明確にする必要があります。
Bホームページへの誘導
想定した対象顧客をホームページへ誘導すことがインターネット上での関係作りの出発点となります。
C誘導客の常連化
自店のホームページへ誘導した顧客を一元客からリピート客に、さらにロイヤリティがある優良顧客へ、そして自店を他の人に推奨してくれる推奨客へ今後発展させていく関係づくりが必要です。
D効果の測定
目標販売金額や目標会員数に対しての実績測定を行い、改善や改良を行います。
以上IT(情報技術)活用目的の明確化の必要性とインターネットの活用について概略を説明しました。今後情報技術採用を計画する小売業は既存の販売の仕組み生かしたうえで顧客のニーズや取扱商品特性を考慮に入れ、導入を検討していく必要があるでしょう。
(財)滋賀県産業支援プラザ小売商業支援センター「うちでのこづち」2000年6月、VOL.15執筆原稿