「私…」  第8話
OB1171462697543.png  若い肉体は新陳代謝が早く、早い新陳代謝はがんの進行を早める。
 私が私のためのチームを編成している間も進行は進み、移植した細胞は定着した。
 人工的に作り上げた凄まじいまでの癌を持つ体。

   方法はいくつもあった。
 癌細胞の細胞分裂の抑制はそれまでの研究である程度の成果を上げていた。
 それに加えて、最低限の経口食と点滴で生きながらえさせるための栄養学的アプローチ。
 放射線治療。すべての細胞の分裂抑制。
 可能な限りのデータ摂取と分析から最適な治療を施す。
 私は私を助けることができない代わりに一日も長く延命させることに全てをかけた。
 私は内側から支配する強烈な痛みにのた打ち回った。

 全身で痛みを受け止めながら過ごす一日を、多分私自身は思い出すこともできないだろう。
 だから私は、できる限り私のそばにいるようにした。
 同僚たちは私を偽善者と呼んだ。私はそんな彼らを見て、少し笑った。
 なぜならこれは、私の研究者としてのエゴだったからだ。

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