「涼兄ぃvv」
「緒美…朝早くからどうしたんだ?」
近所に住む俺の従妹である緒美。
昔はよく一緒に遊んでいた。今も…余り変わらないけれど。
「つぐみはね、おっきくなったらりょうにぃとけっこんする!」
そんな緒美の言葉に、おままごとのような結婚式をした。
新婦は緒美、新郎は俺。牧師…のつもりが啓介。
何時も年下の従妹に俺達兄弟は振りまわされていた。
それが嫌だった事は俺には一度もないけれど。
「ねぇ、啓兄ぃー…」
何時からか勉強以外の相談事を啓介に言うようになった彼女。
2人とも俺にとって大切な事に変わりはないのに、
つい啓介に嫉妬してしまう自分がいる。
+◆+
「涼介様。コレ、受け取ってください!」
大学の化粧の香りを指せた女達。
手作りのお菓子…か。毒でも入ってるようで食べれないな。
「ありがとう」
心とは裏腹に笑顔でお礼を言う。
彼女達は知らない。自分達が作った物の行方を――…
「涼兄ぃ、何してるの?」
「あぁ…ちょっと焚き火をな」
庭で『いらないもの』を燃やしていた俺に話しかけてきたのは
勉強の本を片手に遊びに来た緒美だった。
「あのね…涼兄ぃ、好きな人いる?」
首を傾げて聞くその仕草が可愛くて…
抱きしめたいと思っているなんてお前は知らないだろう?
「…いる、かな?」
「なんで疑問系なの〜」
ぷぅ〜と頬を膨らませ「も、いいもん」と
家のほうへ向かっていく彼女にむかい、聞こえないように囁く。
「俺が好きなのは、お前だよ。緒美…」
知られてしまえば今までのようにはいられない…
だから俺は自分の心をしまいこむ。
+◆+
「ねぇ、涼兄ぃ…約束覚えてる?」
「約束?いっぱい約束してるからな…どの約束だ?」
16の彼女の誕生日。
パーティの準備が済むまで俺と勉強。
「私、16歳になったんだよ?」
「そうだな…」
「結婚できるんだよ?」
彼女の言葉に俺は驚きを隠せないでいた。
もう忘れていると思った幼い頃の約束。
「覚えていたのか…」
「忘れるはずないよ。だって昔も今も私は涼兄ぃが好きだモン」
渡せないとは思いながら、二つの誕生日プレゼントを用意した。
その一つを今、渡そう。
「先に言われたな。俺も好きだよ、緒美…」
ムーンドロップの指輪を右の薬指にはめる。
「左はもう少ししたらはめてやるよ」
「うんっ」
幼い頃の小さな約束を果たす日はそう遠くないだろう…
END
† おまけ †
「啓兄ぃ〜涼兄ぃ、覚えてるかな〜〜」
「…多分覚えてると思うぜ?」
「振られたら責任とってくれるの?!」
「んなもん俺が知るか!!」
毎回緒美に相談されていた啓介。
「――…なんだけどさぁ」
「涼介サンの事だから覚えてんじゃねぇの?」
そんな啓介は拓海のトコで愚痴ってたりして(笑)
でも、もうそんな相談は必要なくなると知るのは
数日後の従妹の誕生日パーティの席だったりする(笑)