50/50 -どっちもどっち-

・・・やっぱりやめときゃよかったか・・・? 

まさかこんな顔が見れるとは思ってなかったけどな・・
少しの後悔と喜びが自分の脳裏をぐるぐると駆けめぐる。

いま、自分の前にあるのはこんな顔は峠ではみたことがない・・と思わせるほどの満足そうなほほえみを浮かべた庄司慎吾の顔。
そして・・・空になってしまったパフェグラスが二つ。

くそう。周りの視線が気になる・・
慎吾は窓の外が見える位置だから店内のこの光景は見えてないに違いない。
ちくしょう・・慎吾のヤツ・・わざとそっち側に座ったな?
いつもは今、俺が座ってる側、窓際を背にして座るのに・・珍しいと思ったらそういうことか!
ちらり、ちらりと自分たちの方に向けられる視線に耐えられなくなった毅はがさりとポケットをさぐり、タバコを取り出してむりやりに自分の視線を引き戻す。
不機嫌そうに煙を吐き出す毅を見て慎吾がにしゃりと笑う。
「なんだよ?毅・・んな不機嫌そうな顔して。うまくなかったか?ここの?」
うまかっただろうがよ? 
慎吾は食べ終わった後の一服・・と、今まですっていたタバコをもみ消しながら返ってくる答えはわかってるであろうが、その質問を投げかける。
「うまかった。・・が。慎吾・・おまえわざとそっち座っただろ!」
毅は行儀悪く肘をついた手でタバコをはさみ、慎吾の目の前に指をつきつける。
「あぁ? 当たり前だろ? 男二人でこんなところきてたら・・絶対好奇の目で見られるってなこたぁ。まさか・・そんなことも考えなかったとか?」

くくくと笑いながら、慎吾はまだ物足りない・・とばかりに、グラスにたてられたスプーンをつかみ、グラスの側面をカリカリとひっかく。
「なんだよ・・・足りないってのかよ。 追加かけるか?」
それを見た毅はメニューに手を伸ばそうとする。
「いや、いらねぇって。いくら旨くても一気に食うと旨くなくなっちまうだろが。もうちょっとかなってところが一番いいんだよ。それにいくら俺でもこれもう一個食うってのはちょい、キツイ」
そういいながらスプーンにかきよせられたものを口に運ぶ。
「そうか?お前なら、平気でいけそうな気がするけどな・・」
そういった毅はすかさずのびてきた腕にデコピンを食らう。
「っ痛ぇ!」
「ばーっか。俺でいけんならお前だってそうだろが。なーに冗談いってんだ?」
「ばかはお前だろうが。痛ぇだろ・・・まったくよ・・」
ぶつぶついいながら弾かれた額をさする。
「けどよ。お前よくこんな店知ってたな?」
毅の視線が一瞬、店内をぐるりと回る。
壁面には店の名前の入ったロゴが配され、少し広めのテーブルには花柄のクロスがかけてあり、イスはシンプルなデザインのモノで統一されている、どちらかというと「かわいらしい」感じの店である。
そしてその店の雰囲気にたがわず、客層は女性が中心で、しかも結構若い。さらに店内にいる男は自分たちだけ・・という一般的に見るととても寒い状況をこれでもか、とばかりに再認識させられる。
「ん? ああ、まあな。いろいろつきあいがあるとなぁ?」
少し意味深な言葉回しと表情で慎吾が返す。
その返事に少しむっとした自分の内心を押さえながら毅はどっかりと椅子に座り直す。
「まぁ・・・お前にもお前のつきあいがあるんだしな・・そのおかげで俺はこうして旨いモノがくえるわけだし? ま、せいぜい情報を集めてくれや」
「なんだよ・・それ・・」
慎吾の顔が少し険しいものになる。
「ん?なんだよって・・この店もお前のいう『つきあい』で知ったんだろ? まぁ・・俺としてはこの手の店のレパートリーが増えて困る訳じゃねぇし?」
ほんとはそんなつきあいして欲しい訳じゃねぇけどな・・そんなの俺が口出ししてどうなる訳じゃない。
毅の目線は慎吾を見ようともせず、テーブルの上の一点を凝視している。
その態度は今の言葉が毅の本心でないことを如実に表しており、そのことを敏感に感じ取った慎吾の顔には薄く笑みが浮かんでいた。
まったく・・わかりやすいよな・・毅のヤツ。
「そうだよな・・毅甘いモン好きだもんな。おう。また次も旨い店教えてやるから・・それまで待ってろよ」
「な・・何言ってんだよ。お前こそ甘いモノ好きじゃねえかよ。人のことどうこう言えねぇはずだろが!」
ガタリと椅子の背もたれからあわてて身を起こし反撃をはじめようとする毅に慎吾はすっと手のひらを向けてその動きを制止する。
「ストップ!毅・・店でようぜ? 結構注目浴びてねぇ?」
テーブルの上におかれていたタバコをつかみ、席を立ち出口へと向かう。
「ちょ、慎吾・・・待てって」
一瞬のことに気を抜かれた毅もあわててその後に続いて席を後にする。
店を出たところの階段で慎吾に追いつきその横に並んで一緒に階段を下る。
「よぉ・・・次な、どんなのがいい? また探しとくからよ」
店内での会話など忘れたかのようにしれっと慎吾が訪ねてくる。
「次って・・・なにがだよ?」
「あ? パフェは今回食ったろ? 次はパフェ以外だよな。なにがいい?」
お前の好みに合わせてやるよ。
「何でもいいよ。お前が見つけたところなら」
『お前が』のところにチカラをいれて毅は返事する。
「・・・あ、でも今からの時期だし・・・かき氷かな」
ふと思いついたように毅は口にする。
「かき氷ね・・・で、もち、宇治金時なんだろ?」
びし!と指さして慎吾はニカリと笑う。
「! なんで分かる?」
自分が言おうとしたことを先に言われて毅は一瞬動きを止める。
「ばぁか。毅のいうことなんざお見通しなんだよ!」
「俺のコトって言うよりも・・ただ単にお前が食いたいだけだろ?」
「ん〜・・ま、そうかもな。でも宇治金・・食いたくねぇ?」
「そりゃ・・食いたいけどよ」
「じゃあ、今週末の峠。負けた方が宇治金オゴリな。よし、決定! 毅・・ごっそさん!」
「まて! 慎吾! なんでいきなり俺が負けなきゃなんねぇ?」
「俺が妙義最速ダウンヒラーだからだよ。毅、お前には負けねぇ!」
いつの間にか週末のバトルの約束ができあがっていた。
そして駐車場で再び確認し、そこからはお互い別行動。
夏の盛りにはまだ少しある、けれどもすっかり空は夏色になっていたある日の出来事だった。

おまけちゅうかつっこみっちゅうか。

「ねえ、さっきの二人!どっちもいい感じだよねぇ」
「アタシは、髪長い方がいいけどね〜。なんか、可愛い感じがするし」
「ってゆうかさ、男二人でパフェだよ? しかも食べるの早いし!」
「そうそう。後で器カリカリしてるのとかすっごく可愛くない? 甘いモノが好きなんだね〜!」
「アタシ、男の人の甘い物好きって結構いけるんだけど?」
「あ、アタシも! でさ、ああいうのの彼女に限って甘いモノ駄目で? お茶するたびに前に置かれるモノ取りかえっこしてたりするんだよ? うわぁ見てみた〜い」
隣の席に座っていた女の子たちの会話を一部抜粋。
‥‥ごめんよ?彼女たち‥それはないんだ。
何故かって?
あの二人組はすでに出来上がってて、お互いが甘い物好きってのを認識してるから。


初妙義でした。
結構、いや、かんなり動いてくれません。
頭の中ではじったばったとうごいてくれるんですがねぇ・・
しかも最初に狙ってたのとはまるっきり違うモノに・・・(涙)
↑それはアタシがヘタレなせいですな。精進したいと思います。
実は、これ、7/20の『アクセルオンでDOマイナー』に参加したときに作ったペーパーなのです。一応、オンオフ分けてるんですが・・ペーパーだし・・いいかなって。
持っていってくれた人、どうもありがとうございました!!



案内に戻る  戻る