空
ふと何気なく見上げた空が綺麗だった
そのまま歩みをとめてしまうほどに
雲一つなく澄み渡る空に
丸く輝く月が出ていた
しばらく空を見上げることも忘れていた
日々の流れに流されるままに
回りを見渡してみてもそこには誰もいない
少し離れた道を車が時々走り抜けていく
遠くには街の灯が輝いている
そこには見たこともない人たちの生活がある
何となく寂しくなって携帯を取り出した
少しためらいながらもボタンを押す
繋がらなくても繋がってもいい
そんな気分で耳元のコールを聞いていた
そのうちに不意に飛び込む愛しい声
『もしもし?』
ああ、俺。
空。見て見ろよ・・綺麗だから。
『え?』
それだけ。
うん。それじゃ。
勝手だなと思いながらも電話を切る
そしてまた空を見上げた
今はきっと同じ空を見上げているだろう
相手のことを思いながら
先ほど感じた寂しさは
愛しさに変わっていた
|