ニット


今日は予定があいちゃったから、いつもより早く来ちゃった。
さっき、涼兄ぃに電話したら、入って待ってろって。

こういうときの為に預かってた合い鍵でドアを開ける。

おじゃましま〜す。

だぁれもいないお家はしーんと静まりかえっていて、ちょっと恐い感じ。
リビングの電気をつけても、なんだかさみしくて。
じぃっとソファに座ってるのもちょっと肌寒いし。

・・・お茶でもいれよっかな。
勝手知ったる高橋家のキッチンだもん。
緒美の好きなロイヤルミルクティ。
いつもはノンシュガーなんだけど・・今日は特別。
スプーン1杯サービスしちゃお。

お気に入りの白いマグにいれて。
ソファの上でまるこまって飲んでみた。
マグを持っている手のひらは熱いけど・・でもやっぱり、肌寒さはぬけなくって。でも、エアコンをつけるほどじゃない。

何気なく目線を向けたその先にあったものに気を引かれた。
ダイニングチェアの背に薄緑色のふわりとしたものがかけられている。

なんだろ。あれ。あの場所って涼兄ぃの場所だよね。
さっきは気づかなかったなぁ・・みてみよっと。

飲み終わったマグをシンクにおいて、テーブルの向こうへと回ってみる。

あ・・・カーディガンだぁ。
そっと持ち上げてみたそれは見た目にたがわず、ふわりと軽い感触だった。

・・・これ、涼兄ぃのだよね・・
ぎゅっと腕の中に抱きしめてみる。
ふわりと鼻先をかすめたのは涼兄ぃの香り。

・・・・・・着ちゃだめかな・・
誰もいないことは解っているけれど、つい周りを見回してしまう。
ついでに、耳も澄まして、物音が聞こえないかも確認してしまった。

うん、着ちゃおう!!

ドキドキしながら、カーディガンに腕を通した。
ふぅわりと緒美を包み込んだそれはやはり緒美には大きくて、たぐり寄せた袖の先から指先が少しだけ出るだけだった。

えへへ。・・涼兄ぃのカーディガン着ちゃった・・おっきぃ〜!
なんだか涼兄ぃにだっこされてるみたい。

涼介のカーディガンを着た瞬間に、不思議と感じていた肌寒さが無くなった。
もちろんカーディガンの保温もあるけれど、こっそりと涼介のカーディガンを着ると言う行為も緒美の体感温度を上げていたのだろう。

すっごーい。涼兄ぃのカーディガンあったかーい!!
少し感じていた寂しい気持ちもどっかにいっちゃったみたい。
早く涼兄ぃ戻ってこないかな〜・・

そう思って見上げた時計は約束の時間まで後30分ちょっとだった。
もうちょっとだよ。もうちょっとで涼兄ぃ戻ってくるんだよ。
・・それまでこれ借りてよう。

そのままソファに座って手すりにもたれかかり、袖先から出る手を重ね、そこに顔をうずめる。
自分が動くたびにほのかに涼介の香りが一緒に動く。

そうしてるうちに・・いつの間にか眠りに引き込まれてたみたいで。
頭に軽く何かが触れたような感触でふと意識を取り戻した。
・・なんだったんだろ?

ごそりと身じろぎして、ソファの手すりから身を起こす。
焦点のさだまらないままぼんやりと目の前のテーブルを眺めているうちにその上におかれた箱に気づく。
・・? あれ? こんなのおいてなかったよね? それにこのラッピングってアタシのお気に入りの・・

「ああ、眠り姫のお目覚めだな。 遅くなってすまないな。だが、こんなところで寝てたら風邪引くぞ? まぁ、上着を着てたからよしとするが・・」

!!!!涼兄ぃ!!やーん!いつ帰ってきたのー!! うわぁ、おかえりなさいのお出迎えできなかったー!!
ショックを受けてるアタシにキッチンの方から声がする。
「ほら、緒美。テーブルにおいてあるそれ。そこのケーキ好きだったろ? お茶も淹れたから。これ食べてもう少ししたら勉強始めるぞ?」

涼兄ぃのその声にまだはっきりとしない頭でこくこくとうなづく。
うん。そこのケーキも涼兄ぃのお茶も大好き。勉強もする。

かちゃりとテーブルの上にカップを置いた涼兄ぃの手がぴたりと止まる。
「・・・・緒美・・」

? なに? 涼兄ぃ?声が笑ってるんだけど?

「お前、服の跡付いてる・・くっくっく・・」
そういって、涼兄ぃは緒美のほっぺをつん。とつついた。

!!えええ!!・・さっきので付いちゃったんだ・・
あわてて手のひらで隠してみた。
でも・・涼兄ぃ。ちょっと笑いすぎだよ。

滅多にみれない、聞けない涼兄ぃの笑い顔と声だけど・・
まだ肩が少しふるえてる・・

もう!!
涼兄ぃなんて・・嫌いだよ!

でも・・やっぱり・・大好き。

END  




もちゃ様にいただいた緒美↑に刺激を受けました〜!!
煩悩大爆発って感じでぐるんぐるんといろいろなパターンで頭回りました。そりゃもう、時と場合を選ばず。ふとした時にひょっこりと。
そのなかで、一番形になった感じです。
女の子が大きな服をだぼっと着てるのはかわいらしくて好きですね〜。
もちゃ様、ホントにありがとうございました!(感謝)



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