スタートライン 誰だってそんなときあると思う。 髪にふれてみたり、手を繋ぎたいとか。 腕をくんでみたり、抱きしめたいとか、抱きしめられたいとか。 ・・・もちろんキスだって。 優しく触れてくれる手がすき。 そっと抱きしめてくれる腕が好き。 もたれかかっても大丈夫な大きな背中も大好き。 でもね。それだけじゃだめなんだ。 なんだろうね。この感じ。 ・・わかんないよ。 『どうした? 珍しく、何を考えてる?』 いつのまにか車は家の前に止まっていた。 となりで微笑む人がそんなことを言いながら髪をなでてくれる。 「珍しくって・・ひどいなぁ。そんなことないよ?」 いいながらなでてくれる手をぎゅっと握りしめる。 『そうか? あんまりくだらないことで悩むんじゃないぞ?』 握りしめた手を反対側の手でそっと優しく包んでくれる。 「・・うん。そうする」 決めた。この人が悩むなっていうんだもん。そう自分に言い聞かせて。 「今日もありがとね。楽しかった。又電話するね?」 名残惜しいけど、握ってくれている手をそっとほどく。 『ああ、いつでもいいから。おやすみ』 ほどかれた手がそのままついっと頬をなでていく。 少しくすぐったいけど気持ちいい。 このままでいたいけど。でも。このままじゃダメ。 「涼兄ぃ・・・」 頬を滑る手をひきはがし、今自分が座っていたシートに押しつける。 「・・おやすみなさい」 言いながらシートにヒザをついて身を乗り出す。 何事かと思ったその人の動きは次の瞬間そのまま止まる。 そのまま数秒。 押さえつけていた手がひくりと動いた。 「!!・・おやすみなさい!!」 動いた手に全身の感覚が変わった気がした。 慌てて身をひるがえしバタンとドアを締め、そのまま玄関に逃げ込む。 どうしたんだろ。自分の回りの音が無くなっちゃったよ。 もう、自分の心臓の音しか聞こえない。 なんだか足下もおぼつかない。床がマシュマロになったみたい。 立っていられないよ。 そのままずるりとしゃがみこんでしまう。 しばらくそのままで。 ヒザを抱えてリフレイン。 ・・・アタシ・・なにしたんだろ。 あの顔・・すっごくびっくりしてたよ。 どうしよう。もう電話も取ってもらえなかったりしたら。 ううん。それよりも嫌いになっちゃったりしないよね? どうしよう・・ 嫌なことばかりが脳裏を駆けめぐる。 『緒美? 帰ったの? どうかしたの?』 リビングから投げられる母の声。 「ううん。何もないよー。ただいまぁ」 あわてて玄関から自分の部屋へ移動した。 カバンとともにベッドの上にダイビング。 どうしよう? その言葉以外、何も頭の中に浮かんでこない。 ぎゅっとクッションに額を押しつけてベッドの上でごろごろ。 どうしよう? そのとき。耳元で涼やかな音がした。 ・・何の音だっけこれ・・ 思考能力の落ちた脳がその瞬間にフル回転する。 涼兄ぃからのメールだ!! 慌ててカバンに飛びついて携帯を探り出す。 ボタンを押す手ももどかしく着信画面を見つめる。 『おやすみ、緒美。びっくりして言えなかったから。今度はもっと優しいキスをしような。いや、してくれ、かな。嬉しかったが少し痛かったぞ?』 え?・・・じゃ、あれ・・アタシの聞き間違いじゃないんだ・・ ガチンって・・・聞こえたっていうか感じたっていうか。 思い出すのも恥ずかしいけど・・必死にそのときの事を思い出してみる。 涼兄ぃの目が綺麗だなって思って・・でもそこで目を閉じちゃったし・・ 距離なんてわかんなかったし。 え・・それから・・・それから・・?うわーーーーーー。 そのままアタシ車降りて・・・今ココにいるんだよね・・? 慌てて手の中の携帯画面を見つめ直す。 涼兄ぃ・・ごめんなさいー!! いつもは涼兄ぃがしてくれるから。優しくしてくれるキスは大好き。 でも。 今日は緒美がしたかったの。 理由なんて無いよ。だって。涼兄ぃのこと好きだから。 涼兄ぃ・・今度はちゃんとするよ。今日はごめんなさい! 相手にみえることのない携帯画面にむかって謝ってみた。 なんだか涼兄ぃが画面の向こうで笑ってるような気がした。 ・・・今度は優しいキスをしてくれよ? |
ええっと。どうしましょうかね。この人達を。もう、勝手にやっててくださいって感じなんですが。 ま、昔はやった歌にありましたねぇ。ファーストキスで前歯ぶつけたってヤツが。 あれですな(笑)<オイ。 これを初々しいととるか(ずうずうしくも)、鈍くさいと取るか。 アタシはどんくさー!!を取らせていただきます。だって、ねぇ? 緒美鈍くさそうじゃないですか?ウチだけか。 久しぶりに書いてみればこんな状態です・・小悪魔にはほど遠いな。げほごほ。 |