「官民共同でデータ化を」
人材育成も課題に

 不動産鑑定士で不動産証券化協会認定マスターの三輪勝年氏は次のように述べる。
 「エンジニアリング・レポート(ER)の活用方法が統一されたことと、DCF法の収益費用項目が統一されたことは評価できるが、いくつかの課題も残している」
 「新基準が適用される不動産の範囲に、証券化される見込みの物件も含まれることになったが、証券化する計画なのかどうかは鑑定依頼者しか知らないことで、それをあえて鑑定士に告げるかどうか。ERの提出など負担が増えるからだ」
 DCF法で使う還元利回りの精緻化をどうするかという課題も残されている。各都市の利回り実態を把握し、データベース化していくことが必要だろう。同時に、オフィスや特にレジデンシャルの空室率や賃料データが不足しているので、これについても官民が共同でデータベースを確立していく必要がある」
 「新基準による鑑定作業は一般不動産と比べると、かなり膨大で、しかも緻密な能力が要求されることになる。それなのに、鑑定報酬は競争激化で値下げ競争になってしまっていることが問題だ」
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 不動産投資マーケットの拡大で、新基準をこなすことができる鑑定士への需要は増大する一方だ。しかし、鑑定業が業として発展していくための社会インフラが整備されているとはいえない。
 不動産評価の専門家である鑑定士としてやるべきことは新基準に明記されたが、そうした能力を持つ若い人材をどう育成していくのか、難しい課題が残されている。


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