「法34条の2」告知義務違反

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04. こんなケースは「法34条の2」告知義務違反となる?

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【ケース】

Xは、不動産会社Yとの間で、土地建物の売却に関して媒介価格を
2,880万円とする専任媒介契約を締結しました。

その際、Yはレインズの成約事例および売出事例を示し、Yが本件不動産の
価格を媒介価格と同額と評価した根拠をXに伝えました。

その後、買主Aとの間で売買契約を締結しましたが、その際、特約により、
売主が負う瑕疵担保責任期間は2か月とされていたことを知りました。

引渡し後、雨漏りが発生したため、Aの依頼によりYX
瑕疵担保責任の履行を求めましたが、Xが拒絶し、Yが工事費用を
負担しました。

売買契約締結後2年以上が経過してから、Xは、不動産評価額の
算定根拠および売主の瑕疵担保責任の告知義務違反などが
あったことにより、不適正な売買価格が設定され、損害を負ったとして
Yに対し、損害賠償を求めて提訴しました。


一審では請求がすべて棄却となったため、Xは控訴しました。


裁判所は以下のように判示して、Xの請求を棄却しました。

@Y1は専任媒介契約の締結の際に、Xに対し、レインズを用いて調査した本件不動産周辺の成約事例等の情報を記載した書面を示したうえで、Yらが本件不動産の評価額を告知したことが認められ、Xの主張する算定根拠不告知による債務不履行および不法行為の成立を認めることはできない。

A不動産取引の仲介業者は売買契約の締結時までに瑕疵担保責任の存在を告知すれば十分であって、媒介契約の締結時にこれを告知する義務があるとまではいえない。Y1は本件売買契約締結時にXに対し売買契約上の瑕疵担保責任の内容を告知したことが認められる。

BXは、不動産取引においては売出価格よりも低い額の売買価格が設定されるのが通常であるから、仲介業者には媒介価格よりも若干高い額の売出価格を設定する義務があると主張するが、一般に、媒介価格は売買価格の下限を定める趣旨のものではなく、本件においてもそのような趣旨で媒介価格が定められたとは認められない(平成21324日 東京地裁判決)。

【総評】

 本件は、売買すべき価額またはその評価額の媒介契約書への記載や、媒介価額に関する意見の根拠の明示は法律上の義務であることなど、宅建業法第34条の2に関して再確認すべき事例といえます。また、瑕疵担保責任に関する契約当事者の理解が事前に十分になされていることも実務上重要です。


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