不動産取引現場での意外な誤解

行方不明の賃料滞納者への建物明渡し請求は、どうすれば?

Q.「賃料滞納者に対する建物の明渡し」の話は分かります。ところで、借主が部屋の中に荷物を残したまま行方不明になった場合には、どのような方法で建物の明渡しを求めたらよいのでしょうか。

A.借主に対し、「公示送達」の方法で契約解除の通知を出し、そのうえで建物の明渡しと滞納賃料の支払いを求める訴訟を提起することになります。その場合、裁判所も「公示送達」の方法で訴状等を被告(借主)に送ることになります(民法98条、民事訴訟法110条〜113条)。
 なお、中の荷物については、財産的価値のあるものが残っているときは、建物の明渡しの強制執行の際に動産競売の手続きを併せて行うことになります。


Q.「公示送達」の申立てはどこにするのですか。

A.相手方(借主)の最後の住所地の簡易裁判所ということになっていますので、とりあえずは賃貸物件の所在地を管轄する簡易裁判所と考えておけばよいでしょう(民法98条4項)。


Q.借主との間で、あらかじめ中の荷物について処分してもよいという約定を取り交わしていた場合には、その約定に基づいて荷物を処分することはできないのでしょうか。

A.できないt考えたほうが無難です。その約定は通常の解約による引っ越し後のことを想定しており、その場合の残置物には無価値なものが多いのですが、今回のような場合には、急遽行方をくらますということから、家財道具一式が残されるというようなケースもあるからです。したがって、万一、それが後日高価なものであったということを考えると、競売まで倉庫に保管しておくか、そのままにしておいた方が無難であるということです。


Q.通常、「債務名義」(確定判決)があれば、強制執行ができると言われていますが、なぜ、建物の明渡しについては、改めて「執行文」を付与してもらわないと強制執行ができないのですか。

A.通常の裁判においては、仮執行の宣言を付した判決が得られれば、その判決の確定を待たずに強制執行ができるのですが、建物の明渡しのような強制執行の場合には、上訴審で判決が覆されたときに原状回復が難しいということから、通常は仮執行宣言が付されないのです。


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