月宮殿山の懸装品

 @見送り幕 
本祭り用 
  国指定重要文化財
    トロイア陥落の図
     (16世紀ベルギー製)
この見送り幕は「トロイア陥落図」と題され、有名なホメーロスの叙事詩「イリアス物語」の中でもとくによく知られた「トロイの木馬」の場面を描いたタペストリーの一部です。誰もが知っているトロイの木馬はここに描かれている場面の右側、全体の中央に描かれていましたが、現在その部分の所在は不明です。

かつてはフランス、ルイ王朝のゴブラン工場で織られたものと思われて、ゴブラン織りの見送りと呼ばれていました。ところが、1979年、ベルギー王立美術歴史博物館タペストリー部長のギー・デルマルセル氏から、京都祇園祭の鯉山の胴懸けに使われているタペストリーの図柄が「イリアス物語」の一場面であり、日本に現存する「B・B」イニシャルのタペストリー群は「イリアス物語」に題材を取った一連のものである、という研究結果が寄せられ、この月宮殿山のタペストリーも16世紀のヨーロッパ、ブラバン・ブリュッセル製のイリアス物語を描いた5枚組のタペストリーの一枚で、物語の最後を描写したものであることがわかったのです。

ちなみに、5枚のタペストリーは

@「トロイアの王子パリスとスパルタの王妃ヘレネーの出会い」
  ・前田育徳会所蔵、唯一の完品で加賀前田家三代藩主前田利常
   公の時代よりの伝来品とされる

A「トロイアの王子ヘクトールと妃アンドロマケー、息子アステュア
  ナクスの別れ」
  ・京都祇園祭鶏鉾見送幕(文化12年(1815)以降飾られる)と
   長浜鳳凰山見送幕(文化14年(1817)鶏鉾町藤倉屋十兵衛
   より購入)に使用されている


   B「トロイア王プリアモスと王妃ヘカペーの祈り」
     ・京都祇園祭鯉山懸装品で寛政6年(1794)より文政9年(1826)
      年にかけて調製。一説には京都寺町の天寧寺から渡ったという伝承がある

   C「ギリシャ軍アキレウスの幕舎に王子ヘクトールの遺体返還を乞うプリアモス王」
     ・東京芝増上寺の祭壇に懸けられていたが明治42年の火災にて焼失

   D「トロイア陥落図」
      (大津祭月宮殿山と龍門滝山、京都祇園祭白楽天山)となっています。


当上京町がこの見送りを購入したのは文化四年(1807年}で、伊勢松坂三井本店より銀八貫六百匁で
購入しており、その譲渡文書とともに、国の重要文化財に指定されています。



 
復元新調
   トロイア陥落の図
   (20世紀ベルギー製)
          
宵宮用(二装用)綴織
  八仙人図
  (中国清代初期 大正12年購入)
             
現在は傷みが激しいため、平成11年より、ベルギーにて製作したこのレプリカを懸けて巡行しています
レプリカ製作についてのエピソードについては後日アップ予定です

 
購入の時期から見て、最初から宵宮
(二装)用として購入されたものと考えられます