日吉山王二十一社




山王七社==================================================================
 山王七社とは、一往比叡山に鎮座する延暦寺の守護神と言ってよいでしょう。
大宮・二宮・聖真子・八王子・客人・十禪師・三宮の七社であります。


一、大宮(オオミヤ)俗形 老翁體 御歳四十計り
     大比叡明神 釈迦如来 法宿菩薩 大日如来 天照太神 十一面觀音
 大宮は三輪(ミワ)明神と同体で、大己貴尊(オオナムチノミコト)でありま
す。また、大比叡明神(オオヒエミョウジン)といい、俗人の姿で老翁の体です。
欽明天皇即位元年に大和の国城上郡金刺宮(カナサシノミヤ)に三輪明神として
降りてきました。その後、大津宮天智天皇即位元年に大比叡明神として顕れたと
いわれます。あるいは、大国主尊(オオクニヌシノミコト)、大国作尊、顕国玉
神など多くの尊号があります。

 天智天皇の時代のことです。大津八柳濱において降臨ありまして、その時海上
の漁舟の田中恒世を召されて、「我を唐崎の松の下に送るべし」いい、恒世これ
に応えて「漁舟に乗りたまえ」という。舟中においてまた仰せあり。「我に祭季
の御料を備えるべし」と。恒世答えて「漁舟の間は好物はありません。ただ今は
粟の飯があります。これをどうぞ」と献上しました。その内唐崎の浦に漕ぎ着き
ました。尊神は上陸して「粟の御料どうもどうも、貴方の報謝のために、これよ
り毎年卯月中申日にここに神幸あるであろう」といいました。
ということから、毎年4月にお祭りが行われるようになったとさ。

 また、大宮は、傳教大師最澄さまが金峰山に参詣されて、その時比叡山に佛法
を弘めたがその鎮守となってもらえないかというに、「我は能く大乗を守護出来
ません。三輪明神が適任でありましょう」という託宣がありました。そこで大師
さまが三輪に参詣して祈りました。すると金輪が3つ現れて頭上を照しました。
それを勧請して、その止まるところ三箇所に三聖を崇めましたとさ。


二、二宮(ニノミヤ)俗形 僧形
           小比叡明神 薬師如来 華臺菩薩 地蔵菩薩
 二宮は、小比叡明神(オビエイミョウジン)または二宮権現、地主権現と言い
ます。小比叡は、横川嶺の南尾をいい、あるいは波母山と名付けます。古事記な
どには、「大山咋神、また山末之大主神といい、または、鳴鏑大神ともいい、近
淡海国の日枝山に坐す。」という。または、二宮を天神第一の国常立尊となし、
我が国の地主とする説もあります。これは比叡一山に限らず日本全国の地主の意
味とも取れるところです。この明神は、古代より居られた尊神のようで、傳教大
師さまが、法号華臺菩薩と授けたとされています。


三、聖真子(ショウシンジ)俗形 僧形 御歳五十餘計り
       宇佐八幡 阿彌陀如來 聖真子菩薩 加茂大明神
 聖真子は、もともとは俗体でありましたが、傳教大師さまによって受戒灌頂の
あと、聖真子菩薩という神号なりました。
この尊神は、應神天皇即位元年に天より降り、また欽明天皇三十二年に豊前国宇
佐郡八幡大菩薩として顕れました。そして天武天皇即位元年に滋賀郡に垂迹しま
したとさ。また加茂明大神とも一体とされ、正哉吾勝命、舍利弗の垂迹とも言わ
れます。上加茂明神は、別雷神であり、大山咋神(二宮)の子とされます。

 以上の三神を「山王三聖」といいます。
 例えば、惠心僧都源信さまの『山王和讃』には、「法宿、華臺、聖真子。三聖、
一の山に棲む。」ともいわれ、また別の本には、「三座の神は、三輪の金光の形、
天竺より小比叡の峰に影向したもので、これは傳教大師さまの三輪参詣による」
とされたりします。


四、八王子(ハチオウジ)俗形 五男三女神 千手觀音 御歳三十有餘
 八王子は、天神第二の国狭槌尊で、第十代崇神天皇即位元年に滋賀郡小比叡東
山金大巖(コガネノオオイワ)に降りてきました。時に八人の皇子を引き連れて
いましたので、八王子といわれます。
 また八王子権現とは、天照太神の子ども五男三女(イヲシメ)の八王子だ、と
いうようにも言われます。


五、客人(マロウド)女形 白山神 十一面観音 御歳二十有餘
 客人は、白山神といわれます。桓武天皇即位延暦元年に八王子の麓に降りてき
ました。もともとは、白山の妙理権現のことであります。
妙理権現は、天照太神の御母伊奘冉尊であるとされたり、伊奘諾・伊奘冉ともに
白山におったという説もあります。無動寺に居りました天台座主慶命さまの頃に
勧請されたともいわれ、割合新しい尊神のようです。


六、十禪師(ジュウゼンジ)僧形 童子形
  地蔵菩薩 虚空蔵菩薩 弥勒菩薩 春日明神 弁才天女 荒神 不動明王
 十禪師は、桓武天皇延暦二年の正月十六日に、地主宮の前に降りてきました。
天照太神の孫の火瓊瓊杵尊のこととも言われます。あるいは春日明神ともいわれ
天孫ともいわれます。また天神七代、地神の三代目ということで十禪師とも言わ
れます。また天津彦彦火瓊瓊杵尊で稲荷神ということもあります。
 むかし内供奉十禪師の延秀という僧が横川の香積寺において託宣を蒙りて、樹
下宮を造ったという故事があり、この樹下宮が十禪師宮とされます。


七、三宮(サンノミヤ)女形 普賢菩薩 御歳二十有餘
 三宮は、桓武天皇延暦六年に八王子金大巖の傍らに降りてきたされます。この
尊神は、天照太神と素盞烏尊と誓い合って生まれたところの五男三女の中の三女
であります。そこで三宮といいます。天神第六惶根尊とか、田心姫・瑞津姫・市
杵嶋姫の三女を神體とする説など、諸説があります。

==============================================================以上山王七社


山王中七社================================================================
 山王中七社とは、一 大行事。二 牛御子。三 新行事。四 下八王子。五 早尾。
六 王子宮。七 聖女の七社をいいます。
一説に、新行事を除いて気比を加えるという。また一説には、牛御子。新行事。
王子宮を除いて、小禪師。剣宮。気比を加えるという。


一 大行事。
 大行事権現は、大勅して天位の事を行うので、大行事という。天地開闢の時、
 天降りといい、高皇彦靈神(タカミムスビノミコト)であるとされます。
 社頭の建立は、慈覺大師円仁さまの勧請とされ、本地は毘沙門とされます。


二 牛御子。
 牛御子は、牽牛であり、篭御前織女であるとされます。また神体は石聖神とさ
 れます。社頭は実の殿はなく、御体は大石であります。本地は大威徳王です。


三 新行事。
 新行事は、奥津嶋姫(オキツシマノヒメ)といわれ、社頭建立の時節は不明。
 本地は、吉祥天女とされます。


四 下八王子。
 下八王子は、智證大師円珍さまの勧請で、本地は、虚空蔵菩薩とされます。


五 早尾。
 早尾は、桓武天皇延暦七年に降臨し、社頭もまた延暦七年に建立されました。
 本地は、不動明王とされます。


六 王子宮。
 王子宮は、貞觀年中の影現で、熊野太子不思議童子とされます。慈覺大師円仁
 さまの夢にあうところの尊神で、社頭もその時の建立とされます。
 本地は、文殊師利菩薩であります。


七 聖女。
 聖女は、稲荷明神であり、影現は法性房僧正の夢にあうところで、延長四年だ
 とされます。本地は、如意輪とされます。

============================================================以上山王中七社


山王下七社================================================================
 山王下七社とは、一 小禪師。二 大宮竃殿。三 二宮竃殿。四 山末。五 巖瀧。
六 金劍宮。七 気比の七社をいいます。
一説に、小禪師。気比を除いて、惡王子。聖真子竃殿を加えるという。
また一説に、小禪師。大宮竃殿。二宮竃殿。山末。気比を除いて、惡王子。新行
事。牛御子。若宮。護因を加えるという。


一 小禪師。
 小禪師は、地神の第四彦火火出見尊のことで、その社を十禪師の頭に崇めるの
 で小禪師という。本地は、龍樹菩薩とも彌勒菩薩ともいわれる。


二 大宮竃殿(ヘツイドノ)。
 大宮竃殿は、大宮の御孫大年神の子にして、興津彦神(オキツヒコノミコト)
 興津姫神(オキツヒメノミコト)であります。この二神を諸人々拝して竃神と
 する。伊勢の別宮が傳教大師最澄さまに契って垂迹したとされます。
 本地は、金剛界の大日、或は、胎藏界の大日とも、或は、金迦羅ともいう。


三 二宮竃殿。
 二宮竃殿は、国常立尊の御子であり、社頭は、竃殿若宮合殿であります。
 本地は、日光菩薩、或は、観世音菩薩とされます。


四 山末。
 山末は、よく解りませんが神歌に、
 「東より琴の御館にさそはわれて 此の山末にとまる松風」と歌われていて、
 琴御館宇志麿といわれます。本地は、摩利支天とされます。


五 巖瀧。
 巖瀧は、踏鞴姫のことで、山門の第二十八代座主教円さまが崇奉ったとされ、
 近江の竹生島明神であります。本地は、辯才天であります。


六 金劍宮。
 劍宮は、客人の王子金劍明神であります。金劍明神は、妙理権現第一の王子と
 されます。本地は、倶梨伽羅不動といわれます。


七 気比。
 気比は、越前の気比大明神であります。傳教大師最澄さまの時に、越前の敦賀
 郡に勧請したとされます。
 本地は、大日、或は阿彌陀、或は聖觀音とされます。

============================================================以上山王下七社


日吉山王御輿入洛之圖======================================================

上                 +--+--+--+ 旌              比
坂                 |日|梵|七| 旗              叡
本                 |輪|天|星| 文              辻
:                  |摩|帝|九|                 :
:                  |利|釋|曜|                 :
:                  |支|四|二|                 :
:                  |天|大|十|                 :
:                  |  |天|八|                 :
:                  |  |王|宿|                 :
:                  +--+--+--+                 :
:                           |                 :
:                           |                 :
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:                      ||                     :
:                  東  ||  纏                 :
:                  塔  ||  圖                 :
:                  青  ||                     :
:                      ||                     :
:                      ||                     :
:                      ||                     :
濱         :           ||           :         日
:          :          東鶴          :         枝
:          :          塔翼          :         辻
:          +------------------------+         :
:           :         乘護         :          :
:       歩  :          正         :  歩      :
:       兵  :         馬院         :  兵      :
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:           :        |    |        :          :
:           :        |    |        :          :
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:       歩  :          南          :  歩      :
:       兵  :          岸          :  兵      :
:           :          院          :          :
:           :          乘          :          :
:           :          馬          :          :
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:                  西  ||                    堅
眞                 塔  ||                    田
野                 白  ||                     :
:                :           :                :
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:                :     \    :                :
:           歩   :       \  :  歩            :
:                :         \:                :
:                :           :                :
:           兵   :           :  兵            :
:                :         /:                :
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:                               / 雁         :
:                             // 行         :
:                           /// ノ         :
:                         //// 陣         :
:                       ////   ナ         :
:                     ////     リ         :
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:                  横  ||                    :
:                  川  ||                    :
:                  黒  ||                     :
:                                             :
:                     /\     魚             :
:                   / ○ \   鱗             :
:                 / ○  ○ \                :
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:          +------------------       車       :
:         ++                  -      掛       :
:       +-+      +---------+    -             :
:       :      +-+    杉   +-+   -            :
:     :::    +-+      生     +:    -          :
:     :      :        房      :     -         :
:     :      :   :    乘      :      *        :
:           ::   :    馬      :     -         :
:           :    +-+         -+    -          :
:           :      :             -            :
:            :      ----------- -             :
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:                 +-------------+             :
:                                             :
:      :     :          |        :    :       :
:      :     :        \|/  榊  :    :       :
:      :     :        \|/      :    :       :
:      :     :        \|/      :    :       :
:      :     :        \|/      :    :       :
:      :     :          | 坂     :    :       :
:      :     :          | 本     :    :       :
:                         老                  :
:            \                /             :
:              \            /               :
:                \        /                 :
:                  \    /                   :
:                    \/                     :
:                    /                       :
:                -------------                :
:              -----------------              :
:            ---------------------            :
:         +-------------------------+         :
:         :                         :         :
:         :       ||      ||        :         :
:         :    ---++------++---     :         :
:         :    ---++------++---     :         :
:         :    山 ++------++ 山     :         :
:         :    門 ||  神  || 門     :         :
:         :    衆 ||      || 衆     :         :
:         :    徒 ||  輿  || 徒     :         :
:         :       ++------++        :         :
:         :    ---++------++---     :         :
:         :    ---++------++---     :         :
:         :       ||      ||        :         :
:         :                         :         :
:         +-------------------------+         :
:       -------------------------------       :
:       -------------------------------       :
:       -------------------------------       :
:       -------------------------------       :
:       -------------------------------       :
:                  +--------+                 :
:                  |   後   |                 :
:                  |        |                 :
:                  |   殿   |                 :
:                  |        |                 :
:      :   :       +--------+      :   :      :
:      :   :                       :   :      :
:      :   :                       :   :      :
:      :   :                       :   :      :
:      :   :                       :   :      :
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==================================================以上日吉山王御輿入洛之圖



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