このWeb Pageは、長浜市立教育研究所の許可を得て、北中学校パソコン部が作成しました。



研究紀要第17集 環境学習ガイドブック
作成によせて


「発刊にあたって」

長浜市立教育研究所 所長 中 島 敏 雄

 「人生に必要(ひつよう)な知識(ちしき)はすべて幼稚園(ようちえん)の砂場(すなば)で学んだ」。これは、ロバーツ・フルガムのことばですが、「砂場」を近くの森や林、小川に置き換え(おきか)ても同じことが言えると思います。

 幼い頃、泥(どろ)まみれになりながら、木に登り、虫をさがし、魚を捕って遊ぶことで、虫や魚の生きる姿(すがた)や知恵(ちえ)を知り、草木の変化(へんか)にその不可思議(ふかしぎ)さや美(うつく)しさを感じ、時には自然の恵(めぐ)みやこわさを味わいました。その中で、自然に対する謙虚(けんこ)さ、生命(せいめい)に対する尊厳(そんげん)、野に咲く草花に心動かす感性(かんせい)、ひいては人と人とのつきあいにおける信頼(しんらい)の感情(かんじょう)などを身につけていったように思います。

 地球規模(ちきゅうきぼ)での環境問題が取りざたされてから久しく、環境教育の重要性(じゅうようせい)がますます高まっていますが、その基盤(きばん)としてまず、子供たちに「自然」そのものに対する親しみや畏敬(いけい)の念(ねん)を培(つちか)っていくことが緊要(きんよう)と考えます。科学技術(かがくぎじゅつ)の飛躍的(ひやくてき)な進歩(しんぽ)と産業(さんぎょう)の活性化(かっせいか)の中で取り違(ちが)えてきた「人間が地球の主である」という認識(にんしき)を転換(てんかん)し、人間も自然の中の一員であるという「自然との共生意識(きょうせいいしき)」をもった子供たちを育てることが、教育の分野(ぶんや)においてますます重要(じゅうよう)になってきたと思います。そのためには、自然とのかかわりを増(ふ)やし、子供のみずみずしい感受性(かんじゅせい)を刺激(しげき)する具体的(ぐたいてき)な取り組みを積極的(せっきょくてき)に進めることが必要です。子供の頃に自然と深くかかわった経験(けいけん)は、その場だけの喜(よろこび)びや感動(かんどう)にとどまらず、生涯(しょうがい)にわたる生活の中に根(ね)づいて、様々(さまざま)な場面で反映(はんえい)されていくものと考えます。

 このようなことから、自然との共生意識を育てることを主眼(しゅがん)において、子供たちを自然に近づけ、自然への親しみや畏敬の念を感得(かんとく)させるため、その指導(しどう)の手引き書(てびきしょ)として作成したのが「身近な自然とわたしたち」です。本書作成(ほんしょさくせい)の趣旨(しゅし)を御理解(ごりかい)の上、市内各幼稚園,小・中学校において有効(ゆうこう)に活用されることを念願(ねんがん)するものです。

 終わりになりましたが、本書作成にあたり御指導、御協力(ごきょうりょく)いただいた関係各位,(かんけいかくい)ならびに野外観察(やがいかんさつ)や事前実験,編集作業等に献身的(けんしんてき)に御尽力(ごじんりょく)いただいた教育研究員諸氏に深甚の謝意を表します。

平成8年2月



「身近な自然とわたしたち」の作成によせて

 子供たちの自然離れについてはすでに様々な形で報告されている。本冊子作成にあたり実施した長浜市の子供たちの「意識実態調査」からも、自然離れが解消に向かうどころか、低年齢層でも自然とのかかわりが希薄になっているといった「自然離れの低年齢化」が進んでいることがわかった。また、自然体験が多い子ほど環境への関心が高いことも本調査から明らかになった。
 環境学習推進の基盤の一つが、自然との共生意識を持った子供たちの育成であることを考えると、長浜市の子供たちを自然に近づけることが第一であると考えた。もちろん、地域社会に目を向け望ましい文明のあり方を考えていくことは環境学習を進める上でたいへん重要な柱である。しかし今回は、自然環境の汚染,破壊が進行している現状や長浜市の子供たちの実態に鑑み、自然との触れ合いによって、自然に親しみ、自然を知り、自然と人とのかかわりを理解することに焦点を絞って作成することにした。具体的には次の6点に留意した。

(1) 身近な自然とかかわる具体的な方法を提案する
 子供たちが自然に近づき、自然に親しんでいくことが、生涯を通じて自然に関心を持ち、自然との共生意識を持つ基盤になると考える。そのために、難しい理論を説明的に述べたり、構えたりせず、子供たちの生活や遊びのレベルで自然の素材を見直し、子供たちが関心意欲を持って自然と接することができる具体的な方法を提案していくようにした。ダイナミックに自然を取り上げ、自然の中にのめり込むような活動は当然必要であるが、まず子供たちと自然との隔たりを埋めるため、身近で容易に自然とかかわらせることから始めたいと考えた。

(2) 理科の学習という枠にとらわれない

 自然や自然と人々のくらしとのかかわりを対象とした領域での環境学習を取り上げるが、理科を中心とした専門分野という意識を持たず、様々な教育活動の中に取り入れられることを重視した。図工,美術科、家庭科はもとより、特別活動、学級,学校裁量、さらに朝の会、帰りの会などでも豆知識的に話ができる内容を盛り込んでいくようにした。また、たとえ同じ素材を使っても指導者の工夫次第では、幼稚園児にも、小学生にも、中学生にも活用できると考え、幅広い年齢層で活用されるものにした。

(3) 地域素材を重視して、身近な問題として学べるようにする

 自然と触れ合うといっても、1回きりのかかわりだけでは、「自然」に親しみを感じ、そのよさを感得することはできない。何回も何回も触れ合うことが大切である。そのためには、身近な素材を生かすことが大前提となる。そして、その素材がどこにあるかという分布図が重要な資料となる。学習上より有効な素材については、その分布状況を把握し、掲載した。
 さらに、長浜の地域に根ざした資料とするため、身近に豊富にある素材や長浜を代表するものなどを取り上げた。また、酸性雨や森林破壊など、子供たちの生活とは直接かかわってこないような規模の大きな環境問題についても、長浜市の状況を具体的に取り上げ、体験的に調べていく方法を紹介した。

(4) 実地調査や実験を大切にする

 自然の素材を使った遊び方や環境調査の方法、また環境問題やリサイクルについてもその参考文献は数多くある。しかし、本冊子は単なる読み物資料ではなく、子供たち自身による活動や体験の意欲を促し、実践に導く資料である。そのため、すでに他の文献で紹介されていることであっても、実際に素材を使って遊んでみたり、実験してみたり、足を運んで植物を調べたりして、新たな事実やより効果的な活用の仕方について検討し、提示するようにした。自然の素材や環境問題とかかわる方法を開発する上で、事前実験や実地調査を重視してきた。

(5) 素材を多角的にみる

 子供たちにとってとても親しみのある花であるタンポポを例にとると、バッジや髪飾りとして遊ぶこともできるし、笛にして吹くこともできる。茎の切り方次第では音の高低もっけられる。また、根を使ったタンポポコーヒーや花を使ったチーズやケーキ作りも、子供たちをタンポポに親しませる手だてになる。さらに、在来種と外来種の分布からその地域の環境を知る指標にもなる。このように一つの素材をいろいろな角度から見直し、より深く自然とかかわる方法を提示するようにした。

(6) 自然と人のくらしとのかかわりに気づかせる

 自然との共生意識を高めるには、単に自然の素材に触れ、自然を知るだけでは不十分である。人々が草木をくらしの中にどのように生かし、それぞれの草木や生き物が人のくらしとどのようにかかわり影響を受けているかを理解することが不可欠である。素材を多角的にみる中で、人のくらしとのかかわりに着目した内容を取り上げた。


「身近な自然と私たち」の最初のぺーじへ
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Produced by 長浜市立北中学校パソコン部
Last modified 1999/07/03