2022年モーニング感想部屋


四十号  赤崎君、対戦相手に同情される。試合中に相手に同情できる綿谷さんのメンタルが強いのか、鹿島のゴールを十年以上守り続けている玉置さんがスゴイのでしょうか。玉置さん、もしかして現役時代の達海監督や後藤GMと戦ったご経験があるのでは……!?
 紙に書かれていた「P1A」は「プリンス1アンカー」の略だった? 松原コーチが指示を出すあいだに、監督が対策を練る。時間を稼ぐという目的もあるのかもしれませんが、今後鹿島のベンチがメッセージの法則に気づいて対処しようとしたところで、実は……という、どんでん返しが待っているような気もします。
 何にせよ松原コーチの責任は重大。わざわざ「松原プラン」と命名していることもあり、作戦の全貌が気になります。
三十九号  ちょっと邪魔!
 体の大きい男性二人に密着されれば、長身で物怖じしない性格の湯沢君だって驚くものです。あえてファウルをもらうことも作戦のうちですが、ETUゴール裏でも声が上がったように、「セコイ」という印象は拭えません。
 タイトルは努力が間違っていなかったという勝者の証。そこから自己肯定感、欲(=モチベーション)が芽生える。
 自己肯定感が持てない人々が多い世の中において、結果を出す、勝利するという方法は分かりやすいです。しかし、それは簡単にできることでもありません。だからこそアイルトンさんは、タイトルという偉業をなしとげた鹿島の強さに自信を持っているのでしょうか。
 ついに松原プランが発動しました。「P1A」は「プラン1−A」の略なのかもしれませんが、松原コーチがアイドルの応援のような格好をする必要はなかったかと思われます。
 タイトルを取って上がり調子の鹿島相手に「本気でなめてかかる」と言い放つ達海監督。湯沢君を「ユジー」と呼んでいることが判明した王子がアンカーポジションに入ったことで、どのような変化が生まれるのか期待したいです。
三十六・三十七号  気でシュートをそらし、コールリーダーがお祓いをするゴール裏。パッカ君がこっそり潜入していることもあり、実に夏らしいですね。
 厳しい状況を歓迎する五味さんに男の色気を感じました。近づいたら男臭い、でも不快ではない匂いがしそう(個人のイメージです)ですが、彼が泣きだすとイメージが変わるのでしょう。
 横並びの4−4−2に、ETUの4−3−3は有効。既存のフォーメーションに攻略法が確立されるのは理解できますが、サッカーのフォーメーションにも有利不利があることに驚きました。ただ、藤澤さんが指摘するように「正確な立ち位置で正確にプレーできれば」という前提がありますし、ETUが4−3−3の経験が浅いことは事実です。
 タイトル獲得がもたらす圧倒的な自信。リーグ戦と、カップ戦、連覇とではそれぞれ得るものが違うように見えますが、戦力の計算を覆すほどものなのか、興味があります。
六十一巻  後藤さんさあ……。
 これまでのあらすじを教えてくれるのは親切ですが、盗み聞きはマズいです。有里ちゃんに「ホントサイアク」と罵倒されて、後藤さんは引き下がったのか、それとも椿くんと香田さんの話をこっそり聞き続けたのか、気になるところです。
 津川前会長は芸能界で活躍しておられました。彼はメディアに人脈があるという設定でしたので、マスコミと持ちつ持たれつの関係を築きながら、アイドルを育てていくのでしょう。
 筋肉は全てを解決する。代表監督のために道が作られるのも、いい大人のケンカが防がれるのも、全てマルココーチの筋肉のおかげです。日本人が彼ほどのマッスルを身につけるのは難しいでしょうが、代表選手に一人か二人「筋肉枠」がいれば、作戦に幅がでるかもしれません。
 当サイトでは「キョーコちゃん←コータくん」をゆるく応援しています。一時は「椿選手←キョーコちゃん」なのかと考えもしましたが(なおここでの矢印は恋愛感情ではなく、ヒーローへの憧れと尊敬と好意です)現状、キョーコちゃんと仲が良いのはパッカくんです。もしかして、コータくんがパッカくんというクラブの大レジェンドを倒してキョーコちゃんに振り向いてもらうという「ジャイアント・キリング」の前振りなのかもしれませんが、単なる気のせいかもしれません。
三十三号  久しぶりのモーニング表紙。達海監督のピンクの唇が、三十五歳の男性とは思えないほど色っぽいです。
 モーニングの表紙と単行本作業があったなら、休載はやむを得ないと思うのですが、誌面で休載をアナウンスしないこの頑なさはいったい何なのかと、正直首をひねってしまいます。
 今回の話を見た岩淵さんのファンが、SNSで荒ぶっておられました。オールスターゲームで初登場した いわゆる「古株」でありながら、「鹿島のFWで日本代表」ぐらいの情報しか開示されていなかった彼。これから彼がどのようにピックアップされるのか、実に楽しみです。
 岩淵さんといえば、十年以上前の同人界隈では、鹿島でもETUの選手でもなく、日本代表にも選ばれていない選手とのカップリングがなぜか目立っていたことを思い出しました。腐の人の妄想力すごい……。
 試合はETUは押され気味ですが、鹿島がこのまま先制するのでしょうか?
三十号  三週連続で掲載。来週あたり休載するのでは……などと考えてしまいました。どうやら自分のなかからは、週刊誌の読者としての大事な何かが失われているような気がします。思い切って隔週連載や三週掲載して一回休載するシマコー方式に切り替えて、誌面なり公式ツイッターで正式にアナウンスした方がよいのではないか……と思えます。
 ETUの攻撃を防ぐ鹿島。綿谷くんと赤崎くんがバチバチやりあっています。若いっていいですね!
 清川もどんどん上手くなってる。ゴール裏のキッズサポの評価は的確ですが、はしゃぎ方が女子みたいというツッコミを入れられてしまいました。キョーコちゃんの友達の女の子のプロフィールが知りたい今日この頃です。
二十九号  達海監督がキレッキレです。そんな発言をクライトン監督が笑って受け流せるのは、彼の度量なのか、それとも眼鏡の通訳の技量なのでしょうか。ホーム大阪戦の黒田さんとハウアーさんのように、侮辱が言葉の壁を越えた例もありますから、これは前者なのかもしれません。
 松原コーチ、達海監督を叱る。達海監督は礼儀作法に関してはかなり問題があるので、叱ってくれる人は貴重です。ただ、二十六号での達海監督の行動は、悪質なパワハラにも見えましたから、作者と編集が協議して火消しを図った(言い方は悪いですが)ようにも見えます。二十六号の応援スタイルは単行本で修正されるのかもしれませんが。
 ついに鹿島戦キックオフ。どんな試合になるのか楽しみです。
二十八号  しゃべりが上達しないままいい歳(三十二歳)になってしまった五味さん。どちらかと言えば、村越さんも口が立つ方ではありませんが、その彼がツッコミに回るということは、五味さんは昔からこんな感じだったのでしょう。
 サッカーは集団競技です。クラブで長いあいだ一緒にプレイしている相手や、椿君と窪田君のように相性が良い相手ならば、アイコンタクトだけで通じるかもしれませんが、代表や海外などのさまざまな場所で戦うには、自分の考えを伝える力や、勝つためのイメージを言葉にする力が必要なのでしょう。そういう意味では、村越さんや五味さんの世代と椿君たちの世代とでは、フットボーラーに求められる技術が異なるのかもしれません。
 やっておしまい江田!! チームメイトの夏木さんにこんなことを言われてしまった椿君。実績について指摘されると「違うんです、そんなんじゃないんです!」と否定ばかりしているのが、事態を悪化させる原因なのかもしれません。既に香田さんとは代理人契約を結んだようですから、メディア対応と一緒に話し方のトレーニングを受けたほうがいいように思いました。
 観客席でぶつかり合う星と星。自分で見られないのがコレオグラフィーの欠点ですが、これを考えて実行に移せるコレオ職人(サポーターグループの誰かかもしれませんが)のインタビューが聞きたいものです。
 羽田さんを先生呼びしているコータ君たちにほっこりしました。某クラブの算数ドリルのように、先生はちびっ子達が興味を持てる題材を使いながら勉強を教えているのかもしれませんね。
二十六号  松原コーチがアイドルを応援する人みたいな格好になってる……。達海監督には「松原プラン」という作戦があるようですが、磐田戦の猛抗議で味を占めたようにも見えます。
 達海監督の仕事環境が進化したように、長期連載では登場人物の持ち物や価値観が、時代の流れに合せて変化していくものですが、スポーツ界のパワハラが問題になっている令和の世にありながら、松原コーチに対する達海監督の態度が、より横暴さを増しているように見えて心配です。
 見開きの円陣のシーンでは、ちょうどページの間にいる笠野さんが、有里ちゃんの肩に触れない(なお右隣の佐藤君は触っています)という紳士的配慮を見せており、セクハラに関する編集部や作者の意識の高さがうかがえます。また、左手の指で緑川さんのジャージをつまむものの、矢野さんには触れないところに「男になんか触りたくない」という王子の主張が感じられました。
 邂逅する因縁の二人――。ハシラが村越さんと五味さんの対決を煽ります。物語に五味さんが登場してから、直接対決まで、ものすごく時間がかかったような気がします。構想を練った分、濃いライバル関係が見られるのだと規定しても良いのでしょうか?
二十五号  タイトルがかかった試合を前にサプライズ。
 Jリーグでも、鹿島かどこかのチームがやっていた記憶があります。おそらくクライトン監督は、ブラジル方面の人々に許可を取ったのだと思うのですが、いきなり日本人選手の親御さんに「カシマノクライトントモウシマス。ムスコサンノコトデオネガイガアリマス」などという電話が掛かってきたら(メールかもしれませんが)ものすごいサプライズだろうなと考えてしまいました。
 アンデルソンさんにメッセージを送ったのは、実家のお母さまでしょうか。リチャードのママ的な貫禄を感じますが、実は奥様or婚約者ですという衝撃の事実が、単行本のおまけページで明かされるかもしれません。
 五味さんは三児の父。小学校高学年ぐらいのお子さんがいるのに、奥さんが若く見えます。感激屋のパパが家族の目にはどう映っているのか、気になるところです。
二十二・二十三号  立派なお皿にご馳走を盛り付けてパーティー。
 キョーコちゃんの発想は独創的です。予定とは大きく異なるものの、コータくんも気になる女の子に色々と教えることができて良かったのではないでしょうか。
 パッカさんがスタンドにもぐり込むためにやらかした「すごいズル」とは。
 ホーム名古屋戦では、ブラジル人トリオの力を借りたシャッチーが隅田川スタジアムに現れたものですが、マスコットのアウェイ遠征は正攻法では難しいようです。
 キョーコちゃんとパッカくんがどのように意思疎通をしているのかという謎が生まれましたが、試合の展開次第でパッカくんがピッチに乱入しないかが気がかりです。
二十号  ETUはモチベーションで鹿島に挑む。
 アニメの総集編回を見たような気分です。練習後のミーティングなのに、長く濃く感じられたのは気のせいでしょうか。
 アウェイ鹿島戦当日。浅草発の「頂上応援ツアー」が開催され、サポーターからライトなファンまで多くの人が集まります。気合の入った姿の裏にキョーコちゃんの存在があるあたり、コータくんが小学生の男子っぽくて和みます。
 この漫画は椿君←キョーコちゃん←コータくんではなく、パッカさん←キョーコちゃん←コータくんだった……!? 十年以上連載していながら、恋愛要素が薄いこの漫画の貴重な矢印は、(公式ツイッターで、現役達海さんと少女の有里ちゃんの関係が「初恋」だと書かれていた記憶がありますが)予想もしない展開を迎えたようです。でも、椿選手や田沼選手(みらいのすがた)は、ETUを離れてしまう可能性があるので、クラブに骨を埋めることが埋まっているパッカくんを選ぶのは、サポーターとしては間違ってはいないのかもしれません。
 それに、ベンチ外の選手までもが鹿島入りする総動員の決戦に、クラブのマスコットが参戦するのは当然の展開だと思いました。
十八号  パッカくん、恐ろしい河童(こ)……!!!
 達海監督の契約更新も、彼以降の監督人事も、ETUのレジェンドであるパッカくんが指導者ライセンスを取れば解決するような気がしてきました。
 パッカくんの添えを喰らって鬼コーチと化した松原コーチ。達海監督は本当にコスプレさせるの好きですよね……。コンプライアンスやハラスメントに対する社会の考え方は、連載がスタートした時とは大きく変化していますから、達海監督にはそのあたりにも気を配ってもらいたいものです(最大限、配慮した結果が松原さんのあの姿なのかもしれませんが)。
 練習終了後はミーティング。達海監督がタブレットを操作してスクリーンに写真を大写しにしています……!  達海監督に反発していたころの村越さんの姿よりも、たつみたけしさんじゅうごさいが電子機器を使いこなせることの方が意外でした。
 達海監督は、ETUの躍進は意外でも奇跡でもないと言い切りました。次回辺りから、ようやく鹿島戦に舞台が移るのでしょうか……?
十六号  みんなの前で泣くのをがまんしてえらい。
 五味さんじゅうにさいは、鹿島の皆さんにナメられ……もとい愛されているようです。彼を「ちゃん」や「君」と呼んでいる選手は同い年または年上なのでしょうか。ですが綿谷くんはもう少し、先輩に対する態度について顧みたほうがいいと思いました。人気女優を恋人に持つ男は違いますね!
 ブラジルの人はアイルトンのことが大好き。アンデルソンさんはいいことを言っているはずなのに、お尻を例えに出したせいでとんでもない訳がついています。朴さんも人物紹介で「しゃべり方がチャラい」などと書かれてしまっているので、クラブに問題があるのかもしれません。
 クラブのレジェンドにはレジェンドで対抗? パッカ君の鬼コーチっぷりに磨きがかかっています。日を追う毎に言うことが的確になっているのは、彼が成長しているのか、中にブラン監督か誰かが(文章はここで途切れている)。
六十巻  隠居とは。
 個人的な話ですが、私は昨年、「刀剣乱舞」を始めました。その影響か、爺ぃや隠居という自己申告がどうにも信頼できません。ですが少子高齢化が問題視されている現代日本は、倉茂監督のような元気な高齢者の力を必要としているのかもしれません。
 名古屋対大阪の激闘の裏で、マスコットが激しく戦っていました。絵面は対戦格闘ゲームっぽいですが、リーグジャパンのマスコット勢揃いのスマブラ形式も見ている分には楽しそうです。パッカ君が大暴れするのは間違いないですが。
 誰かに優しくされたい。でも、気楽な独り身でいたい。お酒の量が増えた後藤GMの健康が心配です。当サイトでは十年以上、ゴトユリをひっそりと推しているのですが、有里ちゃんは旦那さんの尻を叩くタイプなので、優しいお嫁さんを期待するのは難しいかもしれません。
十二号  監督! アイルトンさんが五味さんを泣かせました!
 すぐ泣くことから、ネットの匿名掲示板で「泣き虫きゃぷてん」と呼ばれていた選手を思い出してしまいました。五味さんが物語に登場してから、かなりの年月が経過していますが、泣き虫という設定がいつごろ固まったのか、興味があります。
 現役時代のアイルトンさんだけではなく、鹿島はシカロックも銅像にしていました。もしかしたら、クラブの黎明期に文字通りに身を削った結果、シカロックは現在の姿になったのかもしれません。とはいえ、人間は所属クラブや外見が変化するものですし、権利やら何やらがありますから、そういった縛りのないマスコットを銅像にするのは良い選択なのかもしれません。
十一号  ワインを傾けつつフットボール談義。ブラン監督はそうでもないですが、アイルトンさんほどの体格だと、エコノミークラスでは窮屈そうです。
 アイルトンさんは現役時代の達海さんと何度か食事をしとた間柄。たまに、コミュニケーション能力は高くないのに、外国人選手にものすごく好かれる日本人選手の話を聞きますが、達海選手もそのタイプだったようです。椿君も名古屋のブラジル人トリオやアルバロに好かれていますから、ワールドワイドなサッカーセンスは名選手の条件なのかもしれません。
 タツミとは仲良しを越えた関係。ブラン監督の謎のアピールは、単なる達海監督との友好度の強調ではなく、負けず嫌いな性格の表現でした。似たもの同士であるがゆえに仲良く出来なかった二人ですが、お酒が入っていたとはいえ、十時間を越えるフライトの大半が悪い雰囲気だったかと思うと、大変そうです。別の席にいたと思われるマルココーチは危険察知能力に優れていると言えるでしょう。
 アイルトンさんが鹿島というクラブに植え付けた哲学。いずれは達海猛という人間が、ETUにコンセプトや遺伝子を残す日が来るのかもしれませんが、だとしたら長期政権が望ましいものです。
九号  鬼のパッカは監督よりも偉い。
 まさかこのネタを節分に合わせるために、予告なく休載したわけではないですよね……? 何年か前に「ハコヅメ」の季節ネタ(クリスマス絡みだったかと)が、スケジュール調整の都合で雑誌に掲載できなかったというエピソードを見かけた記憶がうっすらとあります。
 スケッチブックを使いこなすパッカ君は、リーグジャパンのつば九郎を目指しているのでしょうか? そのうちに選手をいじるだけではなく、フリーエージェント宣言(日本のサッカー界にそんなもはありません)をしてメディアを騒がせるのかもしれません。
 ブラン監督はマルココーチと欧州視察中。治安の良い日本の交通事情を知り尽くして、お忍びで六本木に行っている彼でも、変なマスコミと怖い人は恐ろしいようですが、フィジカルに優れたマルココーチが一緒なら、古川さんがいなくても大丈夫に思えます。通訳に甘えたい監督なりのデレなのでしょうか。
四・五号  椿大介をプロデュース。
 能田達規先生の「フットボールの憂鬱‐裏方イレブン」という漫画で、代理人は外国クラブのワンマンオーナーに脅しをかけられていました。
 当時と現在とでは、代理人を取り巻く事情は大きく異なりますが、選手の代わりにクラブと交渉するだけではなく、メディア対応やプライベートだけでなく、プレー内容や食生活までアドバイスする代理人の仕事に驚きました。彼らにとって、選手は「売り物」ですから、その価値を高めるのは商売として当たり前のことなのかもしれません。
 詫びたところで自己満足。達海監督を目にした香田さんの、それが判断でした。彼が椿君の前で口にした「ETUに不利益な契約はしない」という言葉が本心であることが、その一言で示されたように思います。
 愛情の反対は、憎悪ではなく無関心。使い古された言い回しですし、作中ではコミカルに描かれていますが、達海監督は香田さんの存在を忘れることで、無意識のうちに最も効果的な報復をなしとげたのかもしれません。
 永田兄弟は香田さんの過去の行いが許せず、現在も不信感を持っています。それは当然のことと言えますが、感情のあり方が分かりやすいので、過去の無礼を詫びるとか、そのために第三者である後藤さんが機会を設けるとか、永田兄弟の気持ちが収まらなかったとしても、何らかの行動を起こすことはできます。ですが、香田さんのことを忘れ、関心のない達海さんは、香田さんが何をしても心が動かないでしょう。絶対値というものが「存在」するマイナスよりも、「何もない」ゼロのほうが対処が難しいケースが、世の中には存在するのかもしれません。
 広報という仕事柄、接する機会が多かったとはいえ、きちんと達海さんに覚えて(思い出して?)もらえた永田兄弟は運が良かったのだと思えてきました。
二・三号  三週連続で掲載されていたことに驚きです。年始号ということもありますが、試合のシーンとはページ数が同じでも、費やされる労力が違うのかもしれません。
 代理人はサッカー界では「カネの亡者」扱いされていることが多いです。移籍によって本人が活躍の場やステップアップの機会を得て、代理人が移籍金の何%かを報酬として手に入れるのは、ビジネスとしては当たり前のことですが、元のクラブやそこを応援するサポーターを札束でひっぱたくようなやり方が横行した時期があったのは確かですし、そのようなやり方は、回り回って選手のためにもなりません。
 サッカーが好きで、この世界で働きたい。代理人という仕事を選んだ香田さんの動機は、とてもシンプルなものでした。過去の過ちから、ETUに関わらないと決めていた人間が、椿くんの代理人に名乗り出る。玉砕覚悟という言葉は、少なくとも本心なのでしょう。
 この物語はプロフットボールの世界の選手以外の職業にスポットを当てていますから、「代理人はカネの亡者」という、サッカーを知らない人に偏ったイメージを植え付けるのは良いことではありませんし「やっぱり椿君とETUを騙してました! 人生経験のない若造を騙すのって簡単!」などという展開には、たぶんならないと思います。巨額の移籍金が必要なわけではないけれども、仕事の報酬は欲しい。そのあたりが落としどころではないでしょうか。
 移籍するなら、ETUにたくさんのお金を残したい。達海さんにはなかった金銭感覚が、椿君には備わっているようで安心しました。十年という月日が、サッカー選手を取り巻く環境を変えた影響かもしれません。達海選手は自分の価値というものに無頓着でしたし、リチャードもカネへの意識が薄かったことが、もしかしたら移籍の失敗につながったのでしょうか。
一号  ちゃがいます。
 メディアだけではなく、チームメイト相手にも挙動不審になる椿君。仮に彼が移籍にするとしても、プレスリリースの日まで、秘密を守ることができるのか心配になります。
 勘違い野郎ではない椿君に、ETUとの過去の出来事を自分から明かした香田さんは、やはりかけひき上手な大人だと思いました。アレックさんの代理人である時点で、椿君の警戒心はやや下がっているところに「ETUを敵に回すような契約はしない」などと言われれば、人の良い椿君が「話ぐらいは聞いてみようかな……」となっても不思議ではないように感じられます。
 副会長が言うところの「腰巾着」だった香田さんの立場ならば、都合の悪い部分を全て当時の会長に被せることもできるでしょうし、仲介人という仕事上、自分や会社の利益を追うのも当然なので、椿君に打ち明けたのが本心なのかは判断に迷うところです。
 現実では2015年にFIFAの「公認代理人制度」が撤廃されたため、現在では「仲介人」というそうですが、JFAのサイトを確認したところ、仲介人に「なる」のはそれほど難しくないように感じられました。
 長期連載ゆえに発生した現実の変化と、物語(確か作中では二〇〇七年設定だったと記憶しています)にどのように折り合いを付けるのか、椿君の今後も含めて気になるところです。


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