第九話 灰と追憶

脚本/植田浩二  絵コンテ、演出/泉明宏  作画監督/手塚勇人、篠田章


Aパート
前話のラスト、日本支部崩壊とガイバーTと哲郎さんの脱出の回想シーンが入ります。

一晩中晶君を待ち続けてくたびれてしまったのか、食卓で眠っている深町パパ。
そこへこちらも疲れ果てた晶君が帰ってきます、食卓で眠る父の姿に何を思うのか。
つけっぱなしのテレビはお台場のマックスビル炎上のニュースを映しています。
つい先刻まで自分のいた場所が映るテレビを消して、
布巾で覆われた自分用の食事を見た後、黙って自室に戻る晶君。
人の気配を感じたのでしょうか、目を覚ました深町パパはとりあえず無事に帰宅したことで一安心の様子です。
でも声はかけられないようですが・・・。

自室で晶君は、自分がユニットによって再生されたクローンであることに悩んでいます。
本物の深町晶はエンザイムに殺されてもうこの世にはいないはずなのに、
自分という存在、記憶も感情もそのままの深町晶がいるのですからそりゃ悩みますって。
(コミックでは噛み千切られた腕から再生した強殖生物に遭遇した事で
自身の肉体が強殖装甲に取り込まれたおぞましさとも対決していましたけど)
自分の存在とはいったい何なのか、これからどうなっていくのかという恐怖に震えています。

深町パパは遠慮がちにですが、朝食の用意が出来た事を知らせに来ます。
これ以上父親に心配をかける訳にはいかないと思ったのか、素直に食卓へ向かう晶君。
今朝はご飯食ですね、・・・おや、冷蔵庫に入っていた水槽のような物体は、
まさかぬか床? 男所帯の深町家にまさか!?
なにかぎこちないままで食事を摂る親子、
いつもと変わらない味噌汁の味に晶君は何を思うのでしょう。
パパは晶君を待つ間に見た無邪気にパパママに甘えていた幼い晶君が出てくる夢の話を始めます。
そして、ママのお葬式の時、晶君が人前では涙を見せなかった事、
その代わり一人きりでは泣いていた事を話しました。
誰もいないのを確認して泣いていたつもりの晶君、見られていた事に驚いています。
(あのね晶君、親なめたらイカンよ)
妻を亡くして悲しむ父親にこれ以上の心配をかけまいと、
一人でこっそりと泣いていた晶君を「強い子だ」と思いやる深町パパ、
だからこそ悩みがあるのなら一人で抱え込んでないで、話してくれないかと迫ります。
なんでもないとかわす晶君に「やはり話してはくれん。」と溜息のパパ。
でも、「実は僕、変身ヒーローになってしまいました、謎の秘密結社と戦っています。」なんて
告白できる訳ありませんよねえ。(と、こっちも溜息)

さて瑞紀ちゃんの退院の日です、お迎えの晶君と哲郎さんは、いつの間にか夏服です。
途中交番の机に置かれた田中巡査の写真を見やった後、巻島病院へ。
瑞紀ちゃんに会う前に「ガイバーである事を瑞紀には知られたくない。」と言い出す晶君、
コミックスでは、自分が強殖装甲という得体の知れないシステムに支配されている、
つまりは怪物も同様だという事を知られたくないのだとよく分かりましたが
アニメだけの視聴者には、そういう複雑な心情が分かりづらかったのではないかと思えます。
お父さんとの会話も必要だったのでしょうが、(今後への伏線として)
出来れば強殖装甲の恐ろしさ、おぞましさを見せつける為にも、
強殖クローンとの対決も入れて欲しかったと思います。

瑞紀ちゃんの病室に何故かいる顎人君、さりげない風を装って晶君に嫌味をかましています。
(みんなが夏服なのに顎人君だけ冬服のままだ)
もくろみ通りに日本支部諸共ガイバーのデータを消し去りギュオーも葬った、
すべては計画通りと邪悪な本性を現してほくそ笑んでいます。
病院の廊下歩きながらそんな表情していると通報されますよ〜っと。
屋敷に戻るとお客様がお待ちかねとのこと、
誰じゃいなと応接室に入ると、でかい図体をソファに預けたギュオー閣下のお姿がっ。
「生きていたのかっ。」と愕然の顎人君でした。
そこで何喰わぬ顔で「ご無事でしたか。」ぐらいはかまして欲しかったなあ・・・は個人的な意見です。


Bパート
帰宅中の晶君達ですが、瑞紀ちゃんのご機嫌がよろしくありません。
晶君哲郎君に隠している事があるのなら話せと攻撃的に迫っています。
瑞紀ちゃんに殖装者であることを知られたくない晶君を思いやってこの場は誤魔化す哲郎さん、
いずれ話せる時が来たら話すからそれまで待ってくれと瑞紀ちゃんに頼んでいます。
哲郎さんは、この時点では既にクロノスは倒れたと思っているので
時間さえ経てば晶君も落ち着いてガイバーの事を瑞紀ちゃんに話せると考えたのでしょう。
実際は終わりどころか始まりだった訳ですが。
無事に帰宅した瑞紀ちゃんは溜まった洗濯物を片づけると張り切っています。
おい、瀬川家には親はおらんのかい。

一方巻島邸に愉快な三人組が到着、そう損種実験体のお三方です。
ロストナンバーズを遺跡から出した事に驚く顎人君、
ギュオーは使えるモノは何でも使えの様ですが、
この場合のロストナンバーズはたんなる消耗品の扱いでしょうね。
でも、気になる、巻島邸には歩いてやって来た風情の三人、
・・・まさか魅奈神山から電車やバスでやって来たわけではないですよね?

夜になりました、深町家では晶君が夕食の用意をしています。
コンロには美味しそうなシチューが湯気を立てています、これはクリームシチューかな?
二人前にしては量が多いみたいですが。
で、食卓には・・・、いつぞやの朝メシと同じメニューじゃないかっ、
もしかして晶君これしか作れないとか? て事はシチューはレトルトか冷凍物を解凍しただけ?

6:57、深町家のチャイムが鳴りました、パパの帰宅だと「おかえり。」と扉を開けましたが、
そこには父ではなく見知らぬおっさんの姿が。
こんな怪しげなおっさんがきちんとチャイムを鳴らして
扉を開けて貰うのを待っている図というのは妙に笑いを誘います。
OVAのACTTでもダーゼルブとエレゲンが(人間体ですよ)瀬川家のチャイムを鳴らして
哲郎さんが出てくるのをおとなしく待っていたという笑える場面がありましたっけ。
そして両方の共通点は、扉が開くまではおとなしく玄関に立っているのに、
一度扉が開くとごめんくださいとも言わずに家の中に乱入してくる事でしょう。
(ダーゼルブの場合は背が高すぎて頭がぶつかるので一度お辞儀をしてから入室してましたがね)
不審な訪問者は扉を壊して(ついでに晶君も転ばせて)乱入してきます。
大慌てで食卓まで逃げ戻り椅子を振りかぶる晶君。
椅子を構えた晶君に「何のジョークだ。」とからかって獣化する超獣化兵パナダイン。
クロノスの構成員て案外礼儀正しいというか、社員教育が行き届いている感じだったのに、
このパナダイン、随分とガラが悪いなあと言う印象です。
パナダインの攻撃に食卓はまっぷたつ、せっかく用意した食事が滅茶苦茶になって飛び散ります。
おまけにこいつ深町一家の写真立てまで踏みつけたっ、許さんっ、
この所行とあまりにも酷い肩口の塗り分けに怒りを覚えてしまいます。
(ここの色指定クラクラくる位に酷い、パナダインの射出口は生えているのであって乗っかっているんじゃ無いよ)
場所柄もわきまえずに攻撃してくるパナダインから逃げ出す晶君に、
「さっさとガイバーになれ、でないとコントロールメタルが取れないだろ。」と(確かに)
晶君の殖装を迫りますが、こんな所で殖装は出来ないと
塀を乗り越えて逃走する晶君めがけて撃ちだされた液体爆薬が炸裂、ご近所一帯は炎上してしまいます。

あれほどに護りたかった晶君の大事な日常が踏みにじられていきます。
と、炎上する一件の家の前で子供を助けてくれと叫ぶ若い母親の姿が。
既に手がつけられる状態ではありませんが、自分ならと考えた晶君が飛び込みました。
ガイバーに殖装して(そのせいでちょっと爆発事故があったようですが)
無事に赤ん坊を救出して母親に渡します。変なコスプレにーちゃんの姿に
誰も動じてないのがおかしいひとときでした。

「燃えろ、燃えろ。」と楽しんでいるとしか思えない様子で
町中に液体爆薬をばらまくパナダインに怒って突撃するガイバーT。
そこへ入るのは深町ママの映った想い出の家族写真が、炎に包まれゆっくりと焼けこげていく場面でした。
大切な何かを失っていくガイバーTを、パナダインは自分の液体爆薬からも
クロノスからも逃げる事なんか出来ないと容赦なく追いつめます。
ガイバーTはパナダインの猛攻の中逃げまどいますが、
崩れた壁の下敷きになって身動きがとれなくなってしまいました。

このまま捕らわれるかコントロールメタルを奪われるのかという危機に。

「待て。」

きゃあああっ、出たああっ。
村上さん、本格的ご登場だーっ!

路地の奥からゆっくりと姿を現す村上さん、
夜だと言うのにしっかりサングラスかけてらっしゃいます。
これでは、某教師のように「目が見えん」とかいう事態にならないか心配になります。
(そういや今回の村上さんは、あの親父にも似ているな・・・)
村上さんはゾアノイドバスターを構えますが、
パナダインは「超獣化兵にハジキが通用するか。」と馬鹿にします。(無礼者)
村上さんは落ち着いた様子で「どうかな。」と返すと右手を獣神変、
ただならぬ雰囲気に危険を察したのか逃げ出そうとするパナダインめがけて発砲、
左腕を肩口から粉砕してのけました。
その間に瓦礫から這い出たガイバーTが、
「みんなを守る」と叫んで、ソニックバスターでパナダインにトドメを刺します。
助けてくれた誰かを捜すガイバーTですが、もうそこには誰もいませんでした。

パナダインの思考を読んでいたギュオーが今のは何だと考え込んでいます。

戦いは終わりました、
が、深町一家の想い出の写真は何かが壊れていく象徴のように、ゆっくりと灰になっていきました。

たたずむガイバーTの後方から哲郎さんが駆け寄ってきます。
(ここでのガイバーT、私が描いたのかという位作画が酷い、これは無いですよぉ)
哲郎さんにクロノスが襲ってきた事を告げるガイバーT。
日本支部を潰した事でクロノスは壊滅したと思いこんでいたのに、
再びの襲撃、そしてこの町の惨状に「終わっていなかったのかっ。」と驚く哲郎さん。
晶君は燃え上がる町を振り返り、「俺達の町が。」と嘆きます。
しかし、いつまでもこんな場所にガイバーのままで突っ立っている訳にはいきません、
とりあえず殖装して解除して一息つくと、哲郎さんの様子がおかしい、
何だと振り返ってみれば、そこには怯えて震えている瑞紀ちゃんの姿が。
殖装を解く所を瑞紀に見られてしまったと愕然となる晶君でした。