黄檗宗・慧日山永明寺HP
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黄檗宗資料集
黄檗山萬福寺聯額集
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〔解説〕
聯額とは、中国家屋の玄関口に懸けられた額のことです。
柱に懸けられたものを柱聯(ちゅうれん)といい、その屋の屋号などを書いた額を扁額(へんがく)といいます。
柱聯は、僅かな字数で深遠な意味合いを表現します。
ほとんどが対句となっていて、なかには韻を踏んだものもあります。
日本国内の黄檗系寺院ではどこでもみかけられるものですが、特に黄檗山萬福寺のそれは、殆どが重要文化財に指定され、書の模範ともされているものです。
ここではそれら柱聯の中から味わいのあるものを紹介します。
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〔凡例〕
○ 揮筆者別にまとめて紹介した。 配列は50音順である。
○ 紹介順序は、順不同。
〔参考〕
▷ 聯額がどのようなものかを知りたい方は、臨書をし解説した書籍2冊が発刊されている。
1 「黄檗山聯額集」 福山朝丸著、昭和11年12月13日、三浦良吉発行。 163×268和綴56頁。
2 「黄檗山の聯と額」 中尾文雄著、平成2年6月17日、黄檗宗務本院発行。 B5判76頁。
1は絶版であるが、2は黄檗山売店で現在も販売されているので求められる。
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隠元隆琦 筆
◇ 黄檗山・山門表
右 地闢千秋日月山川同慶喜 地闢(ひら)いて千秋 日月山川同じく慶喜し
左 門開萬福人天龍象任登臨 門開いて萬福 人天龍象登臨するに任す
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〔大意〕 |
この宇治の地に黄檗山が開かれ万物全てが皆同じように歓喜している
山門を開くとそこにはあらゆる幸せが溢れていて僧侶と言わず誰もがそれを得るためにここを自由に通れるのだ
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◇ 黄檗山・齋堂(禅悦道)内陣
右 法眼圓明日費斗金非分外 法眼圓明ならば日に斗金を費やすとも分外に非ず
左 偸心不死時嘗滴水也難消 偸心死せずんば時に滴水を嘗(な)めるも也た消し難し
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〔大意〕 |
悟りの眼が出来上がっているなら、その人は一日にどれだけ大金を使おうが不相応なことではない
盗み心や邪な心があるようなら、たとえ一滴の水といえども呑む資格はない
〔注〕 黄檗山の数ある柱聯の中でも、最も有名な聯額。
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慧林性機 筆
◇ 黄檗山・開山堂
右 佩祖印渡鯨波盡道達磨現在 祖印を佩(お)びて鯨波を渡る 尽く道(い)う達磨現在すと
左 振宗門開檗嶠分明斷際重來 宗門を振るい檗嶠を開く 分明たり断際の重ねて来ることを
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〔大意〕 |
禅の教えをひっさげ隠元禅師は荒海を渡ってこられた。 誰もが達磨大師が来られたかのようだと喜び迎えた。
ここ宇治に黄檗山を開かれ、黄檗希運禅師の再来であることをはっきりと示されている。
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〔注〕 【斷際】黄檗希運禅師のこと。「斷際」は唐の宣宗皇帝から黄檗希運禅師に贈られた諡号。
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華頂文秀 筆
◇ 黄檗山・聯燈堂
右 一華開五葉々々悉聯芳 一華五葉開き五葉悉(ことごと)く聯芳(れんぽう)
左 一炬分千燈々々皆続燄 一炬千燈を分かち千燈皆続燄(しょくえん)
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〔大意〕 |
達磨大師の教えは臨済、曹洞、潙仰、雲門、法眼と5つに別れ、それぞれが香りを放っている
一つの火は次々と広がり続けそれぞれが燃え続けるように達磨大師の教えは燃え続けている
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高泉性潡 筆
◇ 黄檗山・総門(漢門)
右 宗綱済道重恢廓 宗綱済道重ねて恢廓(かいかく)し
左 聖主賢臣悉仰尊 聖主賢臣悉く仰尊(ぎょうそん)す
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〔大意〕 |
臨済禅の正しい教えが中国のみならず我が国にも再び広く唱えられている
天皇はもとより将軍ほか臣下の全てが心から仰ぎ尊んでいる
〔注〕 【恢廓】わくをひろげて大きくする。 拡大。 拡張。 心がひろく大きい。
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◇ 黄檗山・山門右脇窟門 通宵路
右 眼底有疑休縦歩 眼底に疑(ぎ)有らば縦(ほしいまま)に歩することを休(や)めよ
左 胸中無碍自通宵 胸中碍(げ)無ければ自(おのずか)ら通宵(つうしょう)
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〔大意〕 |
少しでも疑いが有るようなら勝手にこの門から入ってはならぬ
胸中に差し支えるものが無ければ自然とこの門は開けてくるだろう
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◇ 黄檗山・山門左脇窟門 白雲關
右 門外已無差別路 門外已に差別の路(みち)無し
左 雲邊又有一重關 雲辺又一重の関有り
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〔大意〕 |
この門より外は差別の道など無かっただろう
この門から中は差別など無いようだが悟りに達するための大きな関門があるぞ
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即非如一 筆
◇ 黄檗山・大雄宝殿
右 仏是了事漢 仏は是れ了事(りょうじ)の漢
左 世豈無全人 世豈に全人(ぜんにん)無からんや
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〔大意〕 |
仏様というのは悟られたお方のことである
では私たちは悟れないのか。 いやそんなことはない。 私たち人間で悟れないものがあろうか。
〔注〕 この聯の書体は、唐の懐素の書風である。
【了事】事の理を明らかに悟り知ること。
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張 瑞図 筆
◇ 西方丈 正面
右 指撝如意天花落 指撝(しき)し 意天花の落つるが如く
左 坐臥禅房春草深 禅房に坐臥して春草深し
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〔大意〕 |
招かれてここにいるが、心の中は天の花が舞い落ちるようだ
寝起きしているこの部屋から見ると、早や春の草が茂っている。
〔注〕 山内の聯額はほとんどが檗僧て占められているが、この聯額の筆者、張瑞図(1570~1640)は明時代の政治家、書家だった人で、千呆禅師と交際があったという。 また、木庵禅師も張氏の息子と知り合いだったと言うから、恐らく、両師のいずれかが渡来時に将来したものであろう。
参考・田能村竹田『山中人饒舌』等
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南源性派 筆
◇ 黄檗山・方丈 中門
右 妙高峰擁千年翠 妙高峰 千年の翠を擁す
左 華蔵圖開萬國春 華蔵図 萬國の春を開く
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〔大意〕 |
方丈裏山の妙高峰は千年もの翠で囲まれているかのようだ
まさに仏の教えを絵にした様な春の景色が広がっている
〔注〕 妙高峰の位置は、方丈からは真裏(東)にあたり、山で包まれた様に感じる位置にあたる。
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費隠通容 筆
◇ 黄檗山・法堂
右 棒喝交馳國師千古猶在 棒喝交馳(こうち)して國師千古猶お在り
左 象龍圍繞霊山一會儼然 象龍圍繞(いにょう)して霊山の一會儼然たり
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〔大意〕 |
徳山の棒、臨済の喝と言われた臨済正灯の禅は、今、隠元国師によって再現されている
多くの優れた僧たちが霊鷲山が取り囲み釈尊の説法が行われたのと同じ場面が今ここにあるのだ
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木庵性瑫 筆
◇ 黄檗山・妙高亭
右 境妙含華蔵 境 妙にして華蔵(けぞう)を含む
左 亭高納大千 亭 高くして大千を納る
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〔大意〕 |
黄檗山の有るこの妙高峰のあたり一帯は華厳経に書かれた蓮華蔵の世界そのままである
その中心に建てられたこの妙高亭はさながら全て一切を納め取ってしまうかのようだ
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