運転免許をもっている方は多いと思います。万一の事故の際はどうすればいいのでしょうか。意外と知られていない交通事故の法律問題について考えてみましょう。
自動車保険
 
交通事故の賠償金のことで加害者ともめています。どのような解決方法がありますか。
  各種解決方法のメリットとデメリットを教えてください。
  解決案に納得できないときはどうすればよいのですか?
  被害者から「慰謝料を払え」と電話がかかってきます。私は任意保険に入っており、事故の解決には保険会社に任せているのですが、どうしたらよいのでしょうか。
  加害者が「納得するまで病院に行ってください」といったから、ずっと通院しているが、保険会社が途中から治療費の支払いを打ち切ってきました。打切後の治療費を賠償してもらうことはできないのでしょうか。
  整骨院や接骨院での費用は支払ってもらえますか。
  被害者の方へお見舞いに行ったり(けがの場合)、お通夜やお葬式に行ったり(亡くなられた場合)することは必要ですか。行くときにはどんなことに気をつければよいですか。
  交通事故の解決を弁護士に依頼したとき、費用はどれくらいかかるのですか。
  加害者に弁護士費用を払わせることはできますか。
自動車保険
  交通事故の賠償金のことで加害者ともめています。どのような解決方法がありますか。
 

交通事故の解決方法としては、一般的に、示談、調停、裁判があります。まずどのような事故でも、示談からになると思いますが、それで話し合いがつかなければ、調停や裁判によって解決するということになります。
 また、加害者が任意保険に加入している場合には、交通事故紛争処理センターに斡旋を申し立てることもできます。

  各種解決方法のメリットとデメリットを教えてください。
 

それぞれのメリットとデメリットを理解した上で手段を選択してください。わからないときは、迷わず弁護士に相談しましょう。

[示談]
事故の当事者同士で行う場合と、保険会社の担当者が行う場合、弁護士が代理人として行う場合があります(注意:これら以外の人が交通事故の示談を代理することは、弁護士法違反として刑事処罰の対象となることがあります。) 当事者同士で示談を行う場合、専門的知識のない者同士で行うわけですから、法的な問題点を残したまま示談をしてしまうことになりかねません。その結果、後日トラブルとなり、かえって紛争が長引くことになりかねません。
[調停]
簡易裁判所での話し合いによる解決方法です。調停委員が当事者双方から事情を聞いて、適切な賠償額を決定してくれます。費用は請求金額によって異なりますが、一般に安くて済みます。話し合いですから、必ずしも弁護士をつける必要はなく、安上がりです。また、簡易裁判所は、比較的小さい町にもあり、その意味でも便利です。
 但し、あくまで話し合いによる解決ですから、信号が赤だったか青だったかといった争いがあるなど、主張が真っ向から対立するような場合は、調停での解決は困難でしょう。
 また、調停の期日には本人が出て行かなければなりません(弁護士を代理人にした場合は別)。さらに、小さな簡易裁判所では、専門の調停委員がおらず、適切な解決が望めないこともあります。
[裁判]
最終的な解決方法です。請求金額によって簡易裁判所に訴えを提起するか、地方裁判所に訴えを提起するか異なります。 裁判では、当事者双方がそれぞれの主張を書面に記載して提出し、そこで明らかとなった争点について、証人尋問などを行って、裁判官が判断します。 もちろん、判決に至るまでに和解することもあります。
また、請求金額が30万円以下の場合には、「少額訴訟手続」という簡易な手続を利用することもできます。この手続では、基本的に1回の期日だけで解決を図ることができ、裁判を身近に利用することができます。
[紛争処理センター]
調停と同じような、話し合いによる解決の手続です。交通事故に詳しい弁護士が調整役として入って、適切な賠償額を決めてくれます。 但し、この手続は、加害者が任意保険に入っている場合(任意保険の適用がある場合)でなければなりません。また、一部保険会社では利用できません。
 東京や大阪など、比較的大きな都市にしかありませんので、そこまで足を運ぶ必要があります。また、処理件数が多く、最初の期日が入るまでに時間がかかります。但し、期日が入れば、解決までの時間は短いといえるでしょう。夫です。
  解決案に納得できないときはどうすればよいのですか?
 
示談、調停や紛争処理センターでの解決案に納得できないときは、裁判をするということになります。さらに地方裁判所での判決に不服があるときは、高等裁判所に控訴することになります。高等裁判所での判決に不服があるときは、最高裁判所に上告することができますが、これはほとんど認められません。
  被害者から「慰謝料を払え」と電話がかかってきます。私は任意保険に入っており、事故の解決には保険会社に任せているのですが、どうしたらよいのでしょうか。
  こういった場合、被害者の要求は不当なものであることが多いといえるでしょう。このような電話がかかってくるということを保険会社に伝え、場合によっては保険会社の方で弁護士を依頼してもらいましょう。被害者の要求が不当なものであるときは、債務不存在確認訴訟などを提起し、被害者に対して電話をかけたりしないよう、求めることになります。
 事故はわざと起こしたものではありませんから、加害者であるからといって、被害者からの要求にすべて応じなければならないものではありません。ただ、逆に全く保険会社任せにして、事故後お見舞いにも行かないというのは道義的には問題です。
  加害者が「納得するまで病院に行ってください」といったから、ずっと通院しているが、保険会社が途中から治療費の支払いを打ち切ってきました。打切後の治療費を賠償してもらうことはできないのでしょうか。
  事故による損害賠償(治療費等を含む)は、事故と相当因果関係にある範囲の損害に限定されます。すなわち、事故による損害すべてが賠償されるわけではありませんし、加害者が「すべて払わせてもらいます」といっても、必ずしも全部払ってもらえるわけではありません。従って、打切後の治療が事故と相当因果関係がない場合、治療費を賠償してもらうことは難しいです。
  整骨院や接骨院での費用は支払ってもらえますか。
  基本的に支払ってもらえないと考えておいた方がよいでしょう(通常、事故と相当因果関係がある範囲とはいえまえん)。但し、医師の指示で通院している等の事情があるときは支払ってもらえることがあります。
  被害者の方へお見舞いに行ったり(けがの場合)、お通夜やお葬式に行ったり(亡くなられた場合)することは必要ですか。行くときにはどんなことに気をつければよいですか。
  被害者の方へのお見舞い、お通夜やお葬式への出席は、被害者の方が拒否されない限り、できるだけ行った方がよいでしょう。
 但し、その際、損害賠償の額や過失割合についての約束は絶対しないことが必要です。あなたが約束しても保険会社の見解とあなたの見解が異なることがあり、保険会社が被害者への支払いを拒否することがあります。後でトラブルのもとになるので、絶対にやめてください(後に裁判で解決しようとしても、示談等の成立を理由としてあなたの主張が認められないこともあります)。
  交通事故の解決を弁護士に依頼したとき、費用はどれくらいかかるのですか。
  弁護士の費用は、個々の弁護士により異なります。詳しくは、弁護士の費用の項をご覧ください。
  加害者に弁護士費用を払わせることはできますか。
  判決(裁判)になった場合は、弁護士費用の一部が損害として認められますので、加害者から一部を支払ってもらうことができます。それ以外の場合、弁護士費用は弁護士を依頼した人の負担となります。