ペットの問題を始め、近頃では様々なことでご近所の方と揉めることもあると思います。ここでは、ペット問題などお隣りやご近所の方との間で問題となりやすいテーマについて、取り上げていきたいと思います。

ペット@ 繋いでいた飼い犬が他人を噛んだとき
  私は犬を飼っています。ガレージに鎖で繋いでいたのですが、無断で入ってきた人が噛まれて怪我をしてしまいました。飼い主の私に責任はあるのでしょうか?
  「相当な注意」の有無は、どのように判断されるのですか?
  犬を繋留(鎖に繋ぐこと)していただけで「相当な注意」といえますか?
  具体的にどのようなことをしておけばよいのですか?
  具体的にはどのような責任を負うのでしょうか?
被害者側にも落ち度がある場合はどうなるのですか?
< ペットA 散歩中の事故
  飼い犬を鎖で繋いで散歩していたとき、よその犬と出会ったとたん暴れ出し、その犬を噛んで怪我をさせてしまいました。飼い主の私に責任はあるのでしょうか。
  犬を鎖に繋いでいただけで「相当な注意」といえますか?
  具体的にどのようなことをしておけばよいのですか?
  仮に犬の散歩を近所の人に任せていた場合も責任を負うのですか?
ペットB ペットの公害
  隣の人の飼い犬がよく吠えるので、非常に「うるさい」です。苦情を言っても、「犬が吠えるのは仕方ない。吠えるのが習性だ」と言って相手にしてもらえません。このような場合、飼い主である隣の人に責任はあるのでしょうか?
  隣の人(飼い主)が必要な措置をしない場合、どうすればいいのですか?
  隣の人(飼い主)にどのような法的責任を追及できるのですか?
  私はペット禁止の賃貸マンションに住んでいるのに、黙って犬を飼っていました。最近大家さんに見つかって、マンションを出ていってくれと言われています。どうしたらよいのでしょうか。
ペットC 飼い主の義務(犬及び猫の飼養及び保管に関する基準)
  ペットの飼育に関する飼い主の一般的義務について教えてください。
  ペットの健康及び安全の保持に関する飼い主の義務について教えてください。
  ペットの他人に対する危害を防止する飼い主の義務について教えてください。
  近隣の生活環境保全についての飼い主の義務について教えてください。
  その他ペットについての飼い主の義務について教えてください。
ペット@ 繋いでいた飼い犬が他人を噛んだとき
  私は犬を飼っています。ガレージに鎖で繋いでいたのですが、無断で入ってきた人が噛まれて怪我をしてしまいました。飼い主の私に責任はあるのでしょうか?
  動物の飼い主には、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任が課せられています。ただし、飼い主が「相当な注意」をもって飼っていた場合には、責任を免れます。そこで、本件では「相当な注意」で飼っていたかどうかが問題となります。
  「相当な注意」の有無は、どのように判断されるのですか?
  相当かどうかは、その動物の種類(例えば、大型犬か小型犬かなど)、性質(例えば凶暴か大人しいかなど)、飼い主の処置などを総合的に考慮して判断されます(※)。従って、大型の凶暴な犬を飼う場合と小型の大人しい犬を飼う場合では、「相当な注意」の具体的方法が異なってきます。
※動物の種類・雌雄・年齢、動物の性質・性癖・病気、動物の加害前歴、飼い主の職業・熟練度・馴致の程度・加害時の措置態度、保管の態様、被害者の警戒心の有無・被害誘発の有無・被害時の状況などから判断されます(昭和37年度最高裁判所判例解説民事編参照)。 
  犬を繋留(鎖に繋ぐこと)していただけで「相当な注意」といえますか?
  「相当な注意」といえるかは、Q2のように総合的に決まります。
 繋留は、「相当の注意」を判断する上で重要ですが、鎖の長さや繋留場所によっては、責任が否定されないと考えておいた方がよいでしょう。普段大人しい犬だとしても実際に噛んで怪我をさせた場合、「相当な注意」があったとは言えないと思います。
  具体的にどのようなことをしておけばよいのですか?
  「相当な注意」といえるためには、犬を繋留することに加え、他人が容易に入ってこないように門扉を閉めたり、場合によっては「猛犬注意」というプレートをつけておいた方がよいでしょう。
 特に大型の凶暴な犬を飼う場合は、しっかりとした管理が必要です。
  具体的にはどのような責任を負うのでしょうか?
  飼い主は、被害者に対し、通常生じ得る損害を賠償する責任を負います。これは、金銭的な損害を賠償する義務で、治療費(入通院費、通院交通費など)、慰謝料などがその対象となります。なお、飼い主はこのような場合に備えてきちんと保険をかけておくべきでしょう。また、予防注射などもしっかりとしておく必要があります。
  被害者側にも落ち度がある場合はどうなるのですか?
  被害者に落ち度があっても飼い主の責任が無くなるわけではありません。
 ただ、損害賠償額の算定にあたっては、被害者の落ち度も考慮されることがあります(これを過失相殺といいます)。
 また、被害者が自ら招いた事故である場合には、飼い主が責任を免れる場合があります。例えば、犬に危害を加える目的でちょっかを出し、逆に反撃された場合などは、飼い主は責任を免れると思われます。
ペットA 散歩中の事故
  飼い犬を鎖で繋いで散歩していたとき、よその犬と出会ったとたん暴れ出し、その犬を噛んで怪我をさせてしまいました。飼い主の私に責任はあるのでしょうか。
  本件でも「繋いでいた飼い犬が他人を噛んだとき」と同じように、飼い主が「相当な注意」をもって管理していた場合には、責任を免れます。そこで、今回も「相当な注意」かどうかが問題となります。
  犬を鎖に繋いでいただけで「相当な注意」といえますか?
  飼い主は、散歩にでている間も鎖等に繋いで犬をしっかりコントロールしている必要があります。従って、鎖で繋いでいてもコントロールできない状態であれば「相当な注意」と言えず、責任を負うことになるでしょう。例えば、鎖が必要以上に長く犬が暴れるのを直ちにコントロールできなかった場合や鎖をしっかりと持っていなかった場合などは、責任を負うと思います。
  具体的にどのようなことをしておけばよいのですか?
  「相当な注意」といえるためには、周囲の状況によっては犬が突然通行人やよその犬に暴れ出すことをも予見して、十分コントロールできる状態を保っていなければなりません。鎖をしっかり持つことも重要ですが、場合によっては首輪の近くを持つなどして犬をコントロールしなければならないでしょう。
  仮に犬の散歩を近所の人に任せていた場合も責任を負うのですか?
  まず、犬を実際に散歩させていた人は、原則として責任を負います。そして、飼い主であるあなたも原則として責任を負いますが、「相当な注意」をもってその近所の人に散歩を任せていた(選任・監督していた)場合は、責任を免れます。例えば、その人が犬の扱いに慣れていないことを知っていながら任せた場合は、「相当な注意」がないとして、責任を負うでしょう。
 また、近所の人ではなく、自分の子どもに散歩を任せていた場合も責任を負うと思います。この場合、仮に子どもが犬の扱いに慣れていても(子どもの年齢等によりますが)、「相当な注意」がないとされるからです。
ペットB ペットの公害
  隣の人の飼い犬がよく吠えるので、非常に「うるさい」です。苦情を言っても、「犬が吠えるのは仕方ない。吠えるのが習性だ」と言って相手にしてもらえません。このような場合、飼い主である隣の人に責任はあるのでしょうか?
  犬の飼い主には、動物を適正に飼養・保管し、人の生命・身体等に害を加え又は人に迷惑を及ぼすことのないように努める義務があります。ですから、飼い主には、犬が吠えて他人に迷惑をかけないよう必要な措置(例えば、防音設備を備えたり、散歩をしてストレスを発散させるなど)をとる義務があり、犬が吠えることよる迷惑については当然飼い主に責任があるでしょう。本件では、犬の声が限度を超えると不法行為となり、隣の人に対し、法的な責任を追及できることにもなります。
  隣の人(飼い主)が必要な措置をしない場合、どうすればいいのですか?
  まず、犬が吠えるのを防止してくれるよう隣の人に頼みましょう。被害の実情を説明すれば分かってくれることもあります。また、地方自治体の相談窓口を利用することもできます。動物愛護担当職員がいる自治体もありますし、都道府県知事等には動物愛護法に基づく必要な措置を命じる権限があるからです。
 それでも効果がない場合は、次の法的な責任追及を考えてみてください。
  隣の人(飼い主)にどのような法的責任を追及できるのですか?
  まず、犬が吠えることにより損害(精神的苦痛などを含む)が生じている場合は、隣の人に対し、損害賠償を請求できるでしょう。また、損害(被害)が酷い場合などは、隣の人に犬の飼育自体を禁止する差止請求をすることも考えられます。
 ただ、これらの法的な責任は、吠え声などの騒音が近隣者間の受忍限度を超えた場合に初めて生じることに注意してください。
 具体的な責任追及方法としては、@裁判(訴訟)やA調停という手続があります。トラブル解決のQ&Aを参考にしてください。
  私はペット禁止の賃貸マンションに住んでいるのに、黙って犬を飼っていました。最近大家さんに見つかって、マンションを出ていってくれと言われています。どうしたらよいのでしょうか。
  もし「ペット禁止」が賃貸借契約で決まっているのに黙って犬を飼っているのなら、契約違反(債務不履行)となります。この場合、原則として貸主は、契約を解除してあなた(借主)に立ち退きを求めることができます。このような問題が発生したときは、直ちに犬を飼うのをやめましょう。やめた後も大家さんが納得してくれないときは、一度弁護士にご相談ください。
ペットC 飼い主の義務(犬及び猫の飼養及び保管に関する基準)
  ペットの飼育に関する飼い主の一般的義務について教えてください。
  飼い主には、犬又は猫の本能、習性及び生理を理解し、家族同様の愛情をもって保護するとともに、人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止し、及び生活環境を害することがないよう責任をもって飼養及び保管に努め、並びに終生飼養するように努める義務があります。
  ペットの健康及び安全の保持に関する飼い主の義務について教えてください。
  飼い主には以下の義務があります。
@給餌及び給水
 犬又は猫の種類、発育状況等に応じて適正に飼料及び水の給与を行うように努める義務
A健康管理
 犬又は猫の外部寄生虫の防除、疾病の予防等健康管理に努める義務
B運動
 犬の種類、発育状況、健康状態等に応じて適正は運動をさせるように努める義務。
C保管施設
 犬又は猫の種類、習性及び飼養数、飼養目的等を考慮して犬又は猫を適正に保管し、必要に応じて保管施設を設けるように努める義務。
  ペットの他人に対する危害を防止する飼い主の義務について教えてください。
  飼い主には以下の義務があります。
@放し飼い防止
 犬の放し飼いをしないように努める義務
A脱出防止
 犬が施設から脱出しないよう必要な措置を講ずるように努める義務
Bけい留
 犬をけい留する場合にはけい留されている犬の行動範囲が道路又は通路に接しないように留意する義務
Cしつけ及び訓練
 適当な時期に飼養目的等に応じて適正な方法でしつけを行うとともに、特に飼い主の制止に従うよう訓練に努める義務
D運動上の留意事項
 犬を道路等屋外で運動させる場合には、下記事項を遵守するように努める義務
(1)犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと。
(2)犬の突発的な行動に対応できるよう引綱の点検及び調節に配慮すること。
(3)運動場所、時刻等に十分配慮すること。
  近隣の生活環境保全についての飼い主の義務について教えてください。
  飼い主には以下の義務があります。
@損壊等の防止
 公園、道路等公共の場所及び他人の土地、建物等が犬若しくは猫により損壊され、又は犬若しくは猫の汚物で汚されないように努める義務
A悪臭等の発生防止
 汚物及び排水の処理等施設を常に清潔にし、悪臭等の発生防止に努める義務
  その他ペットについての飼い主の義務について教えてください。
  飼い主には以下の義務があります。
@繁殖制限
 犬又は猫の繁殖を希望しない所有者は、去勢手術、不妊手術等繁殖制限の措置を行うように努める義務
A譲渡又は引取り
(1)やむを得ず犬又は猫を継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に当該犬又は猫を譲渡するように努め、新たな飼養者を見出すことができないときは、都道府県知事等に引取りを求める義務
(2) 特別の場合を除き、離乳前の子犬又は猫を譲渡しないように努める義務