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耳下腺腫瘍・側頚嚢胞は顔面、頚部に腫瘤が存在します。通常の耳下腺腫瘍手術における切開は、耳前部から開始し耳垂をやや後方にまわり、頚部に伸ばすという、いわゆるS字状切開を行います。これをBlair incisionといいますが、顔面・頚部に切開痕が残るという欠点があります。
また、側頚嚢胞は通常、腫瘤の直上である頚部を横切開します。この切開により、腫瘤を十分な視野にて摘出することができますが、頚部に切開痕が残ってしまいます。
そのため、これらの疾患の治療の必要性は理解しても、手術を躊躇し経過観察を選択される患者さんも多いことでしょう。 治療はすべきであるが美容的な面を気にすることは当然であり、病気の性質や治療の必要性につき十分に聞いていただいていても、手術を希望せず経過観察することも止むを得ないことと考えていました。 当科でも、手術後は切開痕が残ることを納得してもらうことに対し、申し訳ない気持ちで説明をしておりました。
そこで当科では、2011年よりfacelift incisionという手技を用い、美容面に配慮した耳下腺腫瘍・側頚嚢胞手術を施行しています。
facelift incisionは、形成外科で主にしわとり手術に用いる手技ですが、頸部に切開を加えないことから目立った線は残らず、審美的に優れた方法です。耳前部は耳珠軟骨の頂点から耳垂付着部を通り、耳介後方に上方へ回りこみ、およそ外耳道のレベルにて後方の頭髪の生え際に入り、生え際に平行に約5 mmの幅にて後下方へ切開を伸ばします。この切開は上方、下方とも腫瘤の大きさ、発生部位によって適宜延長させます。当科ではその手技を用い、facelift incisionは耳下腺腫瘍症例を適応としています。さらにfacelift
incisionに、耳前部の切開を除いた手技であるretroauricular hairline
incision (RAHI)は耳下腺腫瘍・側頚嚢胞症例を適応とし手術を施行しています。
特にRAHIは、耳下腺腫瘍の場合、中から下極に腫瘍が存在するものと適応は限定されるものの、耳後部のみの切開であるため顔面(耳前部)にも切開痕が残ることはなく、さらに優れた方法です。
術後の切開痕ですが、耳後部とそれより後方の頭髪の生え際のものは、髪が伸びてくればどちらも隠れてしまい、正面、側面からみても手術したことがわかりません。
これらの手技は従来のものと同様の視野を得ることができ、出血量や手術時間も通常の手術と大差なく、安全に手術操作を行うことができます。その他重大な合併症も生じていません。最近は小児や女性だけでなく男性も審美性を求めることが多く、今後必要度は増すものと思われます。
関心がお有りの方は、電話などでもお気軽に耳鼻科外来までご相談ください。【0749-68-2300(代表)】
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