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1.まずはじめにあまり怖くない病気から(胃切後貧血)
2.悪性リンパ腫-リンパ球のがん
3.白血病について
4.抗癌剤の副作用-1
5.抗癌剤の副作用-2
6.抗癌剤の副作用-3
7.骨髄腫について-1
8.骨髄腫について-2, 治療
9.骨髄腫について-3, 治療
 
 まずはじめにあまり怖くない話から (胃切後貧血)
 
 血液内科の患者様で一番多い病気は貧血ですが、胃の手術のあとに起きてくる特殊な貧血についてお話しようと思います。貧血というのは血液中の赤血球が少なくなっている状態で、酸素の運び屋である赤血球が減ることによって、息切れ・立ちくらみ・少しのことで疲れてしまうなどの症状が出てきます。貧血の原因はさまざまですが、赤血球をつくる原料が不足することによるものが一般的です。特に鉄分の不足によるものがもっとも多く、若い女性では、生理の出血量が多い(鉄分が体外に逃げてしまう)・ダイエットによる偏食(鉄分の取り方が少ない)などが原因となって貧血がよく起こります。
 胃の手術を受けられた人にもこのような鉄不足による貧血(鉄欠乏性貧血といいます)が時に見られます。この原因は、胃と腸をつなぎあわせた部分の潰瘍などによる消化管出血や胃酸分泌の減少による鉄分の吸収不良(鉄分が身体に吸収されるためには胃酸が必要です)などです。消化管出血がないか検査をし、その原因の治療が必要となります。
 鉄分の吸収不良の場合は、注射・点滴で鉄分を補給することが必要となります。鉄分以外の原料不足も胃の手術後に見られることがあります。ビタミンB12という赤血球などを造るときに必要となる特殊なビタミンは、体内では作られず、つねに食事で補給しなければなりません。このビタミンを体内に取り込むためにも胃の働きが大切で、胃が無くなるとこのビタミンが吸収されず、不足します。胃の手術後3年から7年たって(平均5年)体内のビタミンの貯金がなくなると、貧血が認められるようになります。また白髪が目立つようになったり、ひどくなると手足が先の方からしびれてきます。しびれがひどくなるとなかなか治すのが大変になります。治療はビタミンB12を2週間ほど連続筋肉注射したあと、その後も3カ月に1回の筋肉注射を続ければ大丈夫です。胃の手術を受けられてから何年もたつと医者と疎遠になりがちですが、あとあとこのような貧血が出てくることがありますから、定期的な検診を受けるようにしましょう。  
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 悪性リンパ腫-リンパ球のがん 
 
リンパ球とは

私たちの血液の中には、外から入ってきたばい菌(細菌)やウイルスなどの敵と闘うために白血球という細胞が含まれています。 白血球の集まりを軍隊と考えると、その中には直接敵を食べてやっつける兵隊にあたる細胞と、戦争を勝利に導くための指揮をとったり、ミサイルのような飛び道具を使ったりする細胞が存在します。リンパ球はこの指揮官ないし飛び道具を使う細胞にあたります。リンパ球は血管とリンパ管という2つの道路を使ってからだ中をパトロールしています。例えば風邪をひいた時など、首にぐりぐりが出来ることがありますが、このぐりぐりはリンパ球の集まっている袋、リンパ節です。
 リンパ節はリンパ球のいわば駐屯所で、普段から頭の中以外のからだ中にありますが、敵が来て戦争になった時にはリンパ球が集まってきたり中で増えたりするので腫れて大きくなります。

敵が外から来ていないのにリンパ節が大きくなるとしたら

特に感染(外からの敵の侵入)などが無いのにリンパ節が腫れているとしたら、一部のリンパ球が反乱軍(=がん)になって、ひそかに部隊を集結させている可能性を考えなくてはなりません。このリンパ球のがんを悪性リンパ腫といいます。 リンパ節はからだ中にありますから、悪性リンパ腫が見つかるきっかけはさまざまです。熱だけで見つかったり、黄疸で見つかったりすることもあります。ただ首、腋の下、足の付け根など、外から触ってリンパ節の分かりやすい場所がありますので、自分で気付いて受診される方もおられます。
 こういうところのぐりぐり( リンパ節)を触った時、
  1. 気付いた時点で大きさが1cmを越えている
  2. いくつもの場所で触れる 
  3. 最初ふと気付いてから,だんだん大きくなってくる

ような時は要注意です。 受診はまず内科、血液外来へ。リンパ節は感染と悪性リンパ腫以外にもいろいろな原因で腫れてきます。原因を突きとめるためには、腫れたリンパ節を切り取ってきて、顕微鏡で調べてみる必要があります。切る、というと造作ですが、入院せずに外来で簡単にすますことも可能です。

悪性リンパ腫と診断がついた時

胃癌は胃にでき、肺癌は肺にできます。この場合、治療はまず悪いところを手術で切り取ってもらうことを考えます。ところが悪性リンパ腫は病気が一つのリンパ節に留まらないことが多いため、腫れているリンパ節を切り取って終わり、とはいかない場合がほとんどです。
  1. 身体中に治療効果を及ぼすために、抗癌剤を使った治療を主体とし、
  2. 一部は敵をふろしきで包み込むように放射線を当ててやっつける
というのが現在の治療の基本戦略です。一言に悪性リンパ腫といってもその中にはいろいろな程度、種類のものが含まれるため、治療方針や効果は一人ひとり異なります。抗癌剤による治療も放射線療法も、やり方や考えられる副作用をよく説明してから始めます。この病気は 抗癌剤や放射線が最も効く病気のひとつで、治療が効いてリンパ節が見えないくらい小さくなる確率は70%くらい、そのうち半数以上の人が完全に治ります。がんとは言っても、すでに不治の病ではなくなりつつあります。     
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 白血病について
 
白血病の分類

白血病は、大きく
1.
 急性白血病
2.
 慢性白血病

に分けられます。急性、慢性の違いは白血病になった細胞の性質の違いによるのですが、急性白血病が何らかの症状がでて医療機関を受診し、診断されることが多いのに対し、慢性白血病は自覚症状を欠き、健診で偶然発見されたりする場合が多い、という特徴があります。

次に、白血病は親となった細胞の由来から大きく
   1. 骨髄性白血病
   2. リンパ性白血病

に分けられます(詳しくはTOPページの知っておいた方がいい話をみて下さい)。骨髄性、リンパ性と決めることは、治療に使う薬の選択や治療方針を決める上で重要となります。

このような二通りの分類を組みあわせることによって、白血病は大ざっぱには4つの形に分類できます。すなわち、
   1. 急性の骨髄性の白血病
   2. 急性のリンパ性の白血病
   3. 慢性の骨髄性の白血病
   4. 慢性のリンパ性の白血病

です。実際にはいろいろな技術の進歩によりそれぞれの白血病にはさらに詳しい分類が出来上がっており、例えば急性骨髄性白血病は0から7まで細かく8種類に分類されます。血液の医者はそれらに基づいて治療の方針を考えていくのです。

白血病になったらどのようなことが起きるのか

これが白血病だ、という特徴的な症状はありません。 ただ、 白血病の症状は、次のいくつかが組み合わさって見られることが多いようです。

   1. 正常な血液を造れないことによる症状

骨髄という血を造る工場の殆どが白血病細胞に占拠されるため、正常な血液細胞の生産は著しく阻害されます。赤血球が足りなくなると貧血となり、動悸、立ちくらみ、息切れという貧血の症状が現れます。正常な白血球が足りなくなると(白血病細胞もたしかに白血球ですが、役立たずです)、感染への抵抗力が落ちてび熱が出たり、風邪が治らなかったり、肺炎になったりします。血小板が足りなくなると、あざができたり鼻血がでたり、歯茎から血が出て止まらなかったりします。これらはどちらかというと急性の白血病によくみられます。
 一つずつは大きな症状でなくても、例えば風邪の治りがあまりに悪いとき、採血検査がされ、そこではじめて白血病が疑われることになります。

   2. 身体の中に白血病という余計なものを抱え込んだための症状 

白血病細胞が入り込むことでリンパ節や脾臓が腫れることがあります。また、栄養をとられて体重が減少したり、風邪などひいていないのに熱が続いたり寝汗をかいたりすることもあります。増えすぎた白血球で細い血管の流れが悪くなり、頭の血の流れが減ってめまいがおこることもあります。これらはどちらかというと慢性の白血病に多い症状です。
  
 特徴的な症状を欠くために、白血病の患者様が血液科を直接受診されることはまずありません。かかりつけのお医者さんや、内科以外の科の医師が、「おかしいぞ」と疑って病気を発見し、紹介して下さることが殆どです。実際当院に血液化学療法科ができて9年目になりますが、全くの初診で血液外来を受診され白血病と分かった人は3人にすぎません。しかも内2人は血液の病気で来られたのではなく、風邪や眼の病気と思って受診され、こちらも最初は白血病は疑わず、検査で分かってぎょっとした、というのが真相です。白血病に限りませんが、気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、治らなかったらもう一度来るように言われたら必ず行く事が病気の早期発見につながります。       


白血病が疑われた時に行う検査について

通常の血液検査で白血病が疑わしいか、おおよその見当はつきます。ただ白血病細胞は血を造る工場である骨髄(まさに「ほね」の「ずい」です)中で増殖するため、白血病の診断には、骨髄を調べることが必要不可欠となります。「ほね」のなかを調べると言われると、手術でもして骨を切り取るのかと御心配されるかも知れませんが、検査に必要なのは骨ではなく、骨の中の骨髄液という液体ですので、実際の検査では骨髄穿刺針(ボールペンの芯くらいの太さです)を骨に刺し、針の根元に注射器を付けて、骨髄液を吸い取るだけで済みます。検査は胸骨(胸の前の板状の骨)または腸骨(腰の骨)から行いますが、麻酔は局所麻酔ですので、外来で行うことができます。十分麻酔をしますので、それほど痛い検査ではありません。検査の時間は後の安静30分を含めて1時間以内です。まれに骨髄の中が細胞で充満していたり、線維化(堅くなっている)を起こしていると注射器で吸っても、骨髄液が吸い取れないことがあります。この場合は骨髄生検針という骨髄穿刺針より一回り太い針を腸骨に刺して、骨髄を骨ごと少しだけ取ってきます。骨髄液を吸い取る検査とと同じく、麻酔は局所麻酔ですので、外来で行うことができますし、検査の時間もほぼ変わりません。これらの検査により白血病の正確な診断ができるようになります。
 
 
急性白血病の治療)

抗がん剤を使った治療(化学療法と言います)が基本になります。

   1. 寛解導入療法

治療の第1段階は、 骨髄の検査で白血病細胞が見つからない状態(完全寛解と呼びます)を目指す寛解導入療法です。白血病の種類によって多少異なりますが、いくつかの抗がん剤を1週間から 4週間くらい点滴や内服で使用します。
 治療開始から10日ないし14日くらいすると、薬の副作用で正常な血液細胞が減少するため (骨髄抑制と呼びます)、感染や出血を起こしやすくなります。
 白血病の患者さんはもともと正常な血液を造る働きがひどく落ちているので、なおさらこのような危険は増えることになります。感染を防ぐためには無菌室に入ってもらったり正常の白血球を増やす薬を使ったりします。赤血球や血小板の輸血も必要になります。患者様にとって一番つらい時期です。この時期を越えて、治療開始から3ないし4週間経つと、白血病細胞は大幅に減少し、骨髄に空きができることと、薬による骨髄抑制が無くなることによって、再び 正常な血液が造られるようになります。正常な血液が増えてきたところで骨髄の検査を行い、完全寛解に入ったかどうかを確認します。完全寛解に入る率は、現在大体60から80%です。 1回の治療で完全寛解にならない時は、薬の組み合わせを替えたりしながら再度完全寛解をめざす治療を行います。

   2. 地固め療法

「完全寛解」は、「骨髄で白血病細胞が一見みえない状態」にすぎません。逆にいうと、この時点では身体の中には必ずまだ白血病細胞が残っています。完全寛解になったあと、潜んでいる白血病細胞を出来るだけ減らすために(完全にやっつけないと、いつか再発してきます)、寛解導入療法のあと、すぐに地固め療法を開始します。寛解導入療法と同様、いくつかの抗がん剤を組み合わせて1から2週間治療し、骨髄抑制の時期を経て3から4週間で回復(この治療1回を1クールと数えます)、を当院では3回繰り返します。完全寛解後の骨髄は元気なので、いろいろな副作用は寛解導入療法よりは軽くすむ場合が多いのですが、もちろん油断はできません。やはり無菌的処置や輸血は必要です。
 3回の地固め療法後、骨髄が完全寛解のままであることが確認できたら一度退院です。ここまで大体4ヶ月かかります。

   3. 強化療法 / 維持療法 

昔は、外来で出来る程度の軽い化学療法と、入院による治療を組み合わせて何年も治療し、再発を予防する方法がとられ、これを維持療法と呼んできました。最近では、弱い治療の効果が疑問視され、地固め療法と同じ治療を入院で繰り返すように変ってきています。病院により、やり方は多少異なります。
 当院の場合、地固め療法が終了して退院した後、1ヶ月して再入院、1クール治療して退院、 その退院後1ヶ月してまた入院、 1クール治療、 と繰り返し、その後治療間隔をのばしながらさらに治療を続け、全治療期間1年半くらいで終了するようにしています。
 先に述べたように、完全寛解=治った(治癒と呼びます)ではありません。全てのがんに共通して言えることですが、白血病が治癒した、と考えるためには少なくとも5年(場合によっては10年)再発が起きないことを見張っていかなければなりません。再発したときは、あきらめずにまた治療開始です。現在当院の白血病の通常化学療法による5年無再発生存率(ほぼ治ったと考えられる人の割合)は30%ちょっとで、これは他の血液専門施設での成績と同じです。
 以上、急性白血病の治療の流れをお話ししました。根気のいる大変な病気であることは間違いありません。ただ、白血病は全てのがんの中で最も抗がん剤の効く病気のひとつです。白血病に関して言えば、患者様は、病気と闘うべきです。治療法を医師からしっかり説明してもらい、前向きに考えて治療を受けていかれることを願ってやみません。
  

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 抗癌剤の副作用-1
 

まず初めには副作用とは何か、という一般的なことを中心にお話しします。
 薬には本来の薬として期待される作用(主作用)と患者様にとって有難くない副作用があります。副作用と言っても色々とあり、まず第一には薬の主作用の裏返しとしての副作用、例えば便秘薬で下痢になる。睡眠薬で眠気が残るなど、ある意味では当たり前の副作用があります。第二には薬の働きが一つとは限らないことによる副作用です。今はやりの毛生え薬は本来は血圧を下げる薬として開発されてきました。試験段階で毛が生えることが副作用として判明し、毛生え薬として完成されました。ただしこの場合は血圧が下がることが副作用となりました。このように人間の身体と薬との間には未知の部分が多くあり、意外な副作用から新たな薬が作られる場合すらあるのです。第三には患者様の体質による副作用です。アレルギー反応ということですが、じんましんが出るというような単純なものから、アレルギー反応により肝臓が悪くなったり、白血球や血小板という血液の成分が極端に減ってしまったり、ショックを起こしたり、時に生命に関わる副作用さえ起こしてしまうことがあります。ただしアレルギーによる副作用は頻度的に高いものではなく、まれに(何千〜何万人に一人)見られる程度です。

次にその対策ですが、まず第一の副作用では、薬の使い方の適正化が必要です。便秘薬は便通がよくなってくれば量を減らしたり、一度やめてみる。睡眠薬は時間の余裕をみて使う。朝5時に起きないといけないのに前の日の夜11時に薬を飲めば、朝まで薬の作用が残るのは当然です。したがって、患者様にどういう目的で薬を飲んでいるのか、その薬の働きは何かということを良く御了解頂いておく(インフォームドコンセント)ことが重要です。第二の副作用については、医者の勉強ということになります。抗癌剤についていえば、当然副作用も強く、抗癌剤を使う専門医にとっては、如何に副作用を押さえ込みながら抗癌剤を使いきるか、ということが腕の見せ所となります。また副作用が強い分、それに関しての情報も豊富です。第三の副作用については、これを事前に予測することは不可能です。ただ、やはり体質があり、ある薬にアレルギーのある人は要注意です。
 また一度じんましんなどのアレルギーが出た場合、必ずその薬が何であったのか、その旨を患者さんにお話し、メモをお渡しします。患者様も安易に薬(売薬も含めて)を飲まない、医療機関を受診するときは必ず、これこれの薬でアレルギーが出ますということを申告して頂くことが大事です。    

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 抗癌剤の副作用-2
 
 抗癌剤は生きている癌細胞を殺す薬ですが、現在の抗癌剤は特別に癌細胞だけを殺す薬ではありません。その他の正常な体の細胞も同時に殺してしまいます。副作用を減らすためモノクローナル抗体など癌細胞だけを殺すような薬の研究開発がなされていますが、広く一般化されるところまでには至っておりません。したがって他の薬と比べて、副作用が非常に強くなります。ただ、全ての生きている細胞を殺すわけでもありません。盛んに分裂を繰り返し、増殖する細胞を殺す薬なのです。
 多くの抗癌剤は細胞分裂の過程で作用し、分裂していない細胞には作用しません。したがって、副作用は盛んに細胞が分裂する臓器に集中します。具体的に言えば骨髄・消化管粘膜・毛根などです。骨髄は血液細胞を作っている場所ですから、ここがしょうがいされると、白血球・赤血球・血小板の生産が減少します。白血球が減少すると、病原体に対する抵抗力が落ち、感染症を起こしやすくなります。
 赤血球が減れば貧血になりますし、血小板が減れば出血を起こしやすくなります。そしてその間、身体を支えるために、場合によっては、無菌管理(病原体の少ない環境をつくる)や赤血球・血小板の輸血が必要になります。ただしこれらが永久に持続するわけではありません。骨髄造血幹細胞という普段は眠っている(分裂をしていない)細胞が増殖を始め、抗癌剤投与後 34週間後には骨髄は元に戻ります。次に粘膜のしょうがいは口内炎・下痢などの形で症状が出てきます。これらは抗癌剤の副作用だけでなくそこに存在する細菌などによって症状がさらに悪くなりますので、消毒剤によるうがいや、あらかじめ抗菌剤を内服によりある程度の予防を図ります。毛根のしょうがいは脱毛という形で現れます。ある意味で見た目の問題といえばそれまでですが、やはり外見が一変しますので患者様の精神的苦痛となります。抗癌剤投与時に頭部を冷却する(抗癌剤が毛根に作用しないよう冷やして血管を収縮させる)という予防法はありますが、万全ではありません。ただしこれも必ず回復します(抗癌剤投与後9週間で生えてくる)ので、その旨を患者様にお伝えして安心していただく。また必要があればかつらを着けて頂くことになります。以上が前回お話しした主作用の裏返しの副作用で、薬により強弱はありますが、避けて通れない副作用です。  
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 抗癌剤の副作用-3
 
抗癌剤の第ニの副作用は薬により異なります。詳細は余りに多岐におよびますので、血液悪性腫瘍で使われる代表的な薬剤に限ります。
1. 嘔吐・悪心:アントラサイクリン系(アドリアマイシン・ダウノマイシンなど)やシスプラチンで強く出現します。現在は制吐剤の事前投与でかなり緩和されるようになりました。
2.
 心毒性:アントラサイクリン系で問題となり、総投与量がある一定限度を超えると出現頻度が高くなります。
3.
 肺毒性:ブレオマイシン・メソトレキセートなどで問題となります。ブレオマオシンでは総投与量が問題となります。
4.
 神経毒性:ビンカアルカロイド系(オンコビンなど)で一時的な末梢神経しょうがい(手足のしびれ)、麻痺性イレウス(腸閉塞)・便秘(自律神経のしょうがい)が出現します。緩い下剤などを予防的に飲んで頂きます。
5.
 肝毒性:アントラサイクリン系などで問題となります。肝臓の働きを経時的に見張ります。
6.
 腎毒性:メソトレキセート・エンドキサン・シスプラチンなどで問題となります。十分な水分を補給しながら薬剤を投与します。
7.
 皮膚毒性:アントラサイクリン系・ビンカアルカロイド系などの抗癌剤が点滴時に皮膚に漏れた場合に皮膚にひどい炎症や壊死を起こします。血管確保をして、漏れないように工夫したうえで薬剤を投与します。
 まだまだ書き出せばキリがないのですが、医師も含めて医療スタッフが十分にこれらの副作用を承知し、適切な予防策を取り、またいざ副作用が出現した場合に適切な対応処置がとれることが肝要です。そして、副作用を早く見つけるためには、患者さんが遠慮なく気になる症状をお話しして下さることも大切なのです。
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 骨髄腫について-1
 

骨髄腫とは

この病気のことを知っている人はあまり多くないと思いますし、また実際に患者様も少ないのですが、血液の病気の中ではとても重要な病気の一つです。その病態は複雑で、診断・治療にも苦労することが多いのですが、最近では新しい治療法がいろいろと試され、明るい話題も出てきています。

人間の血液中を流れる白血球の中には、「Bリンパ球」とよばれる細胞があります。このリンパ球は「抗体」という特殊なタンパク質をつくって細胞の表面上にくっつけ、細菌やウイルスなど、体内に進入してきた外敵から生体を防御する、いわゆる「免疫応答」に一役買っています。そしてこのリンパ球がさらに成熟すると「形質細胞」と呼ばれるようになり、やがて血管を出て骨髄その他、全身の組織の中に定住し、抗体を血液中に分泌するようになります。

骨髄腫とは、この形質細胞が腫瘍性に増殖する病気です。増殖の場としては、骨髄中で腫瘍塊をつくることもあれば、口腔・咽頭・頭蓋内など骨髄以外の場所で増殖することもあります。殆どの場合全身の骨髄に多発し、多発性骨髄腫と呼ばれます。血液疾患の症状は多彩でつかみどころがないのことが多いのですが、中でも骨髄腫による症状は、腫瘍細胞が体のどこで増えるかによって異なり、極めて多彩です。代表的なものとしては腫瘍細胞が骨の中で増殖し、骨を破壊することによって激しい痛みを生じたり、腫瘍細胞の化学的な働きによって貧血を生じ、なんとなく体がだるくなったりすることが挙げられます。またこの他、吐き気がして食欲が落ちたり、腎臓のはたらきが悪くなって体がむくんだり、かぜや肺炎などにかかりやすくなったり、体のどこかに急にできものができたりと、実にさまざまなケースがあります。例えば最初頑固な腰痛や疲れやすいなどの症状で病院を受診し、採血などの検査で異常に気づかれ、血液内科を紹介され精査して診断される場合も多いです。

では実際にどんな検査をするかというと、血液と尿の検査、またレントゲン写真の検査が中心となります。血液と尿の検査では、最初に出てきた「抗体」が一つの鍵になります。人間の体はとてもうまくできていて、どんな外敵が入ってきてもそれに対応した抗体を用意できるように、あらかじめ無数の種類の抗体が用意されています。言い換えればそれを生産する無数の種類の形質細胞があるわけですが、骨髄腫ではただ1種類の形質細胞ばかりが増えるため、抗体もただ1種類だけが大量に生産されます。このような抗体を「Mタンパク」と呼びますが、血液や尿の中にこのMタンパクが検出された場合にはこの病気の可能性を考える必要があります。また一方、レントゲン写真で骨は白くうつりますが、その中に黒く抜けた部分が見えることがあり、これが骨髄腫の病変を示している場合があります。この他、血液検査で貧血の有無や腎臓のはたらきを調べたり、骨に細い針を刺して骨髄を調べたりして、すべての結果を集めた上でこの病気かどうかを判断します。ただ、ここに挙げたことは骨髄腫のすべての患者様にあてはまるわけではなく、中にはこれらの結果をもってしても骨髄腫かどうかきちんと見極められない場合もあります。そのときは患者様の症状や検査データを定期的に追いかけていく中で判断していくことになります。

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 骨髄腫について-2
 

骨髄腫の治療

治療の目標は異常な形質細胞をやっつけることですが、白血病や悪性リンパ腫と同じように、まず基本になるのは抗がん剤を使った化学療法です。具体的には、何種類かの抗がん剤やホルモン剤を組み合わせ、内服薬として飲んでもらったり、点滴をしたりします。1回の治療は数日ないし10日間程度で、これを 3〜4 週間に1回のペースで繰り返していきます。前回お話ししたように骨髄腫の症状はつかみどころがないのですが、そのどれもがこの異常な形質細胞のふるまいによって起きることなので、薬が効いて細胞をたくさんやっつけることができれば、症状は次第にとれていきます。どの薬をどれだけ使うかについては、患者様の年齢、また骨や腎臓の傷み具合などを考慮し、総合的に判断して決定します。薬が効いてくるまでには数日ないし数週間というようにある程度の時間を要することが多く、その間の症状をとるため別の治療が必要になることがあります。例えば、背骨にできた腫瘍が脊髄という神経の束を傷つけ、激しい痛みが生じることがあります。このような場合に薬で治療したとき、治るまであまり時間がかかっていてはつらいですし、また治ったとしても神経の傷み具合によっては手足がずっと動かないままということもあり得ます。こんなとき、薬の治療に加えて放射線治療を行うことがあります。これは腫瘍そのものに集中砲火を浴びせてやっつけようとするもので、いわば「飛び道具」的な治療法と言えるでしょう。ねらった場所にはかなりの確実性とスピードをもって威力を発揮し、実際病変が1箇所だけならば放射線治療を第一選択に考える場合もあります。一方全身に散らばった形質細胞に対する治療法としてはやはり限界も存在します。

骨髄腫の治療法としては、かねてからこの2つ(化学療法と放射線療法)が大きな柱となってきました。しかしながらこれらのみで骨髄腫を「治しきる」のは決して容易でなく、近年は治療成績の向上のためさまざまな新しい治療法が試みられています。その一つとして「自己末梢血幹細胞移植」という特殊な処置と並行して大量の抗がん剤を使うというやり方があります。使う抗がん剤の量を増やせばそれだけ多くの形質細胞をやっつけることができますが、その反面副作用も強く、そのままでは患者さんの命も危険です。それでは困るのでこの処置を併用するわけです。いわば抗がん剤の副作用を最小限に抑え、安全に治療を行うための奥の手といったところです。この治療法は今では比較的安全に施行でき、またその治療成績も以前より良好な結果がしばしば報告されるようになっています。解決すべき問題点もいくつかあり、またすべての場合で行えるわけでもないのですが、これからの骨髄腫治療では欠かせない方法の一つとなると考えられ、当科でも積極的に行いつつあります。

 骨髄腫に対してはこの他にも世界中でいろいろな薬や治療法が試され、この分野の研究はまさに日進月歩です。当科ではこういった中から、個々の患者様の年齢や状態に合わせてもっともふさわしい方法を選択して治療にあたっています。この病気を「治しきる」のは現在でもやはり容易ではありませんが、病気の進行自体は白血病などと比べて割とゆっくりしていることが多く、あせらずじっくりと治療していくことが大切です。  
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 骨髄腫について-3
 

骨髄腫の治療

 「Mタンパク」について簡単に説明しました。本来人間の血液中にはいろんな種類のタンパク質があるはずなのに、あるタンパク質が何らかの原因でただ1種類だけ異常に増えたものです。このようなタンパク質がある状態というのは実は骨髄腫に限った話ではなく、この他にもいくつかの状態で出現することがわかっています。
最初に取り上げるのはMGUS(monoclonalgammopathyofundeterminedsign
ificance )
と呼ばれる状態です。

見慣れない英語が出てきて何だか分かりにくいですが、その意味するところは決して難しくありません。強引に日本語にすると「まだどうなるか分からないMタンパク血症」ですが、もう少し言い換えると「Mタンパクは確かにあるけれど、それが体の中で何も悪いことをしていない状態」ということです。前々回説明した中で、骨髄腫では骨が壊されたり、貧血が進んだり、腎臓のはたらきが落ちたりするとお話ししましたが、MGUSとはこれらのことが全くみられない状態を指します。なぜこんなことが起こるのでしょうか。体内でただ1種類の形質細胞(このような蛋白=免疫グロブリンを作る細胞)が増えるという意味ではもちろん異常なのですが、その形質細胞が骨髄腫のときほどには急速に増加せず、また問題となるような悪さもしないからだと思われます。少し難しい言葉を使うと「悪性度が低い」ないし「良性に近い」ということだと考えられます。実際のところこの辺の良性・悪性の区別はかなり曖昧で、普段の診療において「骨髄腫かMGUSか」で悩むことは少なくありません。そんな場合には最初にお話しした通り、1回の検査結果だけでどちらか決めるのではなく、しばらく本人の症状や検査結果を追いかけ、悪くなってくる様子がないかどうかをみながら判断していくことになります。
 少し前までMGUSは「良性Mタンパク血症」と呼ばれていて、ずっと放っておいても悪くなることはないと考えられていました。しかし最近MGUS20年以上にわたって追跡した報告などによると、このうちの一部(2030%)は骨髄腫へと移行することがわかってきました。つまり、最初に出てきた「まだどうなるか分からない」という言葉には「骨髄腫になるかどうか分からない」といったニュアンスが込められているわけです。ということなので、実際には1〜ら6ヶ月ごとに外来に通ってもらって、Mタンパクの量が増えてはいないかどうか、骨髄腫に移行していないかどうかをしっかり見張っていく必要があります。なお、この時点では身体には何も不都合なことが起こっていないわけですから、特にお薬は使いません。

 次に取り上げるのは「原発性アミロイドーシス」です。この病気もMタンパクを伴いますが、この病気のMタンパクはアミロイドと呼ばれ、単純な骨髄腫の場合とは少し違ったふるまいをします。M蛋白の変性(壊れた)ものであるアミロイドという物質が全身の組織にたまってきて、それら組織のはたらきを邪魔するのです。このため、具体的にはアミロイドが沈着する場所に応じて、例えば腎臓や心臓のはたらきが悪くなったり、手足のしびれや知覚異常がみられたり、下痢や便秘をしたり、血が止まりにくくなったり……、というように全身各所で非常に多彩な症状や異常が起こり得ます。この病気のベースにも何らかの形質細胞の異常があると考えられており、治療は骨髄腫と同じように抗がん剤やホルモン剤を使うことが一般的です。最近はこの他の薬も試されていますが、これらをもってしてもアミロイドを減少させるのは現状ではなかなか難しいので、実際にどういう治療を行うかは患者さんの状態をしっかり見極めた上でじっくり考えなければなりません。なおアミロイドーシスはこの他、骨髄腫や慢性関節リウマチなどを患う人にみられることもあり、「続発性アミロイドーシス」と呼ばれます。病態としては「原発性」とそんなに変わりませんが、もとの病気があるため状況はもう少しややこしくなります。治療はそれぞれのもとの病気をしっかり治療することが前提ですが、こちらもなかなか難しい場合が多いです。

 以上で骨髄腫に関する話は終わりです。決して明るくない話題も多く出てきましたが、それを改善するため現在も世界中で数多くの試みが進行中です。そのうちのいくつかは確実に実を結びつつあり、現場で応用される日もきっと来るでしょう。そのことも合わせて頭の片隅に残していただければ、幸いです。 
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市立長浜病院
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