前回の「ウチの会社の問題社員」が好評でしたので、今回はその第2弾です。法律を扱ったテレビ番組が流行の昨今。前回も述べたとおり、法的な知識やノウハウを身につけた従業員が増え、一昔前のような家族的な感覚や感情論では、労務管理上の問題を解決できない時代となってきました。事業主の皆さんも、ぜひ正しい法律知識を身につけ、トラブル防止に役立てていただきたいと思います。

事例@ ウソの理由で有給休暇を取って旅行に行ったAさん

Q.
Aさんが体調不良を理由に年次有給休暇を取得して3日間休みました。
ところが、その間、実は旅行に行っていたことが同僚の目撃で発覚しました。有給休暇を取り消し、欠勤扱いとすることはできますか?



A.
結論から言うと、有給休暇を取り消し、欠勤(無給)扱いとすることはできません。なぜなら「年次有給休暇」は労働基準法第39条に定められた要件を満たせば当然に発生する労働者の権利で、その休暇をどのように利用するかは労働者の自由であり、労働者は有給休暇の使用目的を事業主に申告する義務はなく、仮に申告したとして、その理由が事実と違っていても、有給休暇を取得する権利が消えるということはないからです。

 では、Aさんに対して、何のペナルティーも課すことはできないのでしょうか。休暇届に虚偽の記載をしたことは、「勤務に関する所定の手続を怠った」ということで懲戒事由に該当するとした判例があります。(東京高判 昭和55・2・18古河鉱業事件)しかし、前記の通り年次有給休暇は自由に利用できるものであり、請求に当たって取得理由を申告する必要のないものなのであるから、取得理由を偽ったからといって誠実義務に違背するものでないとする判例(大阪地裁 昭和41・7・8久保田鉄工事件)もあり見解の分かれるところです。
 ただ、Aさんの一件を知った同僚たちは、「病気というから心配して、みんなでAさんの仕事もフォローしていたのに・・・・・・・・・・・・まじめに働いていた自分たちがバカみたいじゃないか!」と一様にやる気を失い、職場の雰囲気は非常に悪くなりました。そのことを考えると、就業規則の懲戒事由「職場の風紀・秩序を著しく乱したとき」に該当するとして懲戒処分を行うことは場合によっては可能かと思われます。


事例A 会社の事務用品を持ち帰るBさん

Q.
当社では、事務用品や備品は倉庫のキャビネットに保管しており、各自が必要なとき必要なだけ取り出して使っています。ある日、従業員のBさんがキャビネットから事務用品を取り出し、自分のカバンに入れているのを目撃してしまいました。問いただすと、ボールペン2本と消しゴム1個を、つい出来心で、自宅用に持って帰ろうとしたとのこと。本人は非常に反省しており、持ち帰ろうとしたものは直ちに返却しました。会社としてどんな対応をしたらいいですか?


A.
Bさんに対しては、会社のルールブックである就業規則に基づいて懲戒処分をすることができます。この会社の就業規則には、「会社の物品、金銭等を隠匿もしくは横領し、または無断で持ち出したとき。またはそれらの行為に及ぼうとしたとき」は「懲戒解雇に処する。ただし、情状酌量の余地がある場合は、譴責(けんせき)・減給・出勤停止の処分にとどめることがある。」とあります。Bさんの持ち出そうとしたものはわずかで、本人も非常に反省し、物品も直ちに返却していることを考えると、懲戒解雇は厳しすぎ、譴責処分(始末書を取り将来を戒める)程度が妥当かと思われます。もしこれが、たびたび繰り返されたものであったり、被害額が多額であったりした場合は、その程度に応じて最高の処分として懲戒解雇もできるということになります。

 また、この場合、悪いのはもちろんBさんですが、事務用品を勝手に持ち出してしまえるような会社の管理の甘さにも問題があるのではないでしょうか。人気のない倉庫に保管し、必要なときいつでも自由に持ち出せるというのでは、「自宅用に1個持って帰ろう」という悪い心が芽生えるのを助長しているようなものです。たとえペン1本、消しゴム1個でも、会社の物品を無断で持ち出すのは窃盗罪に当たります。会社側が「1本くらいでことを荒立てるのも・・・」と見過ごしていると、会社はそれを容認したことになってしまいます。きっちりけじめをつけておかなければ、どんどんエスカレートしていくかもしれません。次のような対策をとってみてはいかがでしょうか。


方法@
 在庫管理簿に発注日と発注個数、使用者と使用日と使用個数、在庫数などを記録するようにする。

方法A 事務用品は担当者が保管し、必要個数を申請して担当者から受け取るようにする。

 そこまでするのは手間がかかって無理、というのであれば、自由に出し入れできる場所に置くのは最低限の個数だけにし、残りは鍵のかかるところに保管するとか、保管場所を倉庫等の人気のない場所から人目につく場所に変えるだけでも、ある程度は余分な持ち出しを防げるでしょう。
会社として、事務用品の管理をきっちりしているという姿勢が従業員に伝われば、今回のように「ちょっと私用のために拝借」といった行為を防ぐだけでなく、紛失や無駄使いも防ぐことができ、思わぬところで経費節減ができるかもしれません。



〜あなたの会社にも
「問題社員」いませんか?!〜
労務管理のお悩みは、大きなトラブルに発展する前に西多事務所までご相談ください!!