■高年齢者賃金の最適設計

 最近、新聞や雑誌などを通じて注目される「団塊世代」ですが、一斉に来年から定年退職し始めるため「2007年問題」として、さまざまな分野において大きな影響を及ぼすといわれています。人事関連分野では、18年4月からの改正高齢者雇用安定法の施行による原則65歳までの雇用延長義務化による人件費コストの増大が経営を圧迫することを危惧している事業所様もおられると思います。今回は、「経営を圧迫しないで雇用延長義務を果たす」方法である、「給料」、「年金」および「雇用継続給付」を組合わせた、60歳以降の高齢者賃金の最適な設計の重要なポイントについて解説します。


■ポイント@、59歳時の賞与支給日は退職月にするとメリットがある。

 
60歳以降も在職中で、厚生年金(社会保険)に加入している場合に受け取れる厚生年金は、給与と賞与の額によって最長70歳まで(H19年4月以降は70歳以降も退職するまで)支給制限を受ける場合があります。賞与による制限は、直近1年間の賞与額によって決まります。そのため60歳からの1年間は、59歳時の賞与によって在職老齢年金の支給停止が行われることになります。ここで、ポイントになるのが、定年退職日を月末以外の日に設定し、定年前の最後の賞与算定期間に対する賞与を退職月に支払い清算することです。支払日は定年退職日前とします。これは、「同日得喪(ドウジツトクソウ)」という、社会保険上の手続きと関係しています。「同日得喪」とは、一定の条件に基づき定年の時だけは、同日に社会保険の資格を喪失し、再取得することにより、標準報酬月額(社会保険事務所に登録してある給料のランク)を即時改定する特例措置が認められています。この制度を活用すると定年退職日前に支払われた賞与は届出義務が無いため、社会保険料の徴収もされませんし、60歳から1年間の在職老齢年金の支給停止額を下表のとおり、かなり抑えることができます。


■ポイントA、同日得喪は、月の途中にするとメリットがある。

 例えば、7月10日が60歳の誕生日で、7月20日が定年退職日(給与〆日付)、翌日の7月21日が再雇用される日、すなわち7月21日が資格喪失日と資格取得日(同日得喪の日)とすると、年金の支給は、誕生月の翌月である8月からとなります。この場合、7月20日以前の標準報酬月額は、50万円、7月21日以降の標準報酬月額は、20万円になった場合、下がった20万円という標準報酬月額を使って在職老齢年金が計算され、8月分から20万円の標準報酬月額に基づく年金が支払われます。ところが、退職日が7月31日(月末)ですと、同日得喪の日は8月1日となり、下がった20万円の標準報酬月額を使って在職老齢年金が計算され改定されるのは喪失月の翌月となって、9月分からの年金となります。この場合、年金の受給権がすでに発生している8月分の年金はどうなるのかというと、下がる前の50万円という標準報酬月額による在職老齢年金となり、多くの場合は全額支給停止になってしまいます。定年退職日は月末にするより、月の途中にする方が有利になります。

■ポイントB、週3日勤務なら年金が満額受給になるメリットがある。

 前出のように、60歳以降、厚生年金に加入して勤務すると年金がカットされる場合があります。より具体的に言うと、正社員の4分の3以上の日数・時間で勤務すると厚生年金へ加入する義務が生じ、年金がカットされます。そのため、週5日勤務の会社なら、4分の3未満になる週3日勤務にすれば厚生年金に加入しないので、年金はカットされません。また、1週20時間以上勤務のときに加入する雇用保険の制度からは、60歳時の給与に比べ60歳以降の給与が75%未満に低下した場合は、最高で給与の15%相当額の高年齢雇用継続給付が支給されます。そこで、週3日(1週20時間以上〜30時間未満で)勤務することにより、年金が全額支給され、高年齢雇用継続給付が受給可能となります。下表のSさんの事例のように、60歳からもらえる厚生年金が月額10万程度ですと、60歳以降週3日勤務で、公的年金等を上手く活用すればほとんど差がでません。

 


 
西多事務所では、顧問契約をいただいている事業所様には、希望があれば、60歳になる従業員が発生した時点で、60歳賃金設計の資料をその都度、ご提案させていただきます。