■退職後に受けられる健康保険の給付金

 健康保険の給付金の中には、退職した後でも受けられるものがあります。これを「資格喪失後の給付」といいます。あまり知られていないため、もらえる権利があるのに請求しないまま終わってしまっているケースも多いと思われます。本人様も事業主様もせっかくがんばって掛けてきた保険料です。もらえるものは、もれなくしっかりもらいましょう。


●傷病手当金

 
「傷病手当金」とは、病気やケガ(労災は除く)により、4日以上仕事を休み、給料を受けられないとき、欠勤4日目から、お給料(標準報酬)の60%が支給されるというものです。退職前に1年以上継続して健康保険に加入していた方が、退職時に傷病手当金を受けている場合(受けていないが受ける条件を満たしている場合も含む)は、退職後も引き続き受給することができます。 ※ただし、老齢厚生年金等の受給者には支給されません。年金の日額が「傷病手当金」の日額より少ないときは、差額分だけが「傷病手当金」として支給されます。


(事例1)
 A男さんは、最近持病が悪化してきて仕事に行けなくなり、1ケ月ほど欠勤して「傷病手当金」を受給していましたが、治療に専念するため退職することにしました。A男さんは、健康保険に1年以上継続して加入していたので、退職後も引き続き「傷病手当金」が受けられます。A男さんのお給料(標準報酬)は30万円でした。日額に換算すると10,000円になります。10,000円×60%で、1日あたり6,000円の「傷病手当金」が受けられることになり、収入の途絶えたA男さんは、大変助かりました。(保険料はいりません。)


(事例2)
 B子さんは、4月28日に脳梗塞で倒れました。28日〜30日まで欠勤し、月末で退職することにしました。B子さんは、「傷病手当金」をもらえるでしょうか。答えはNOです。上記のとおり、「傷病手当金」を退職後に受けるためには、退職時に「傷病手当金」を受けているか、あるいは受ける条件を満たしていることが必要です。傷病手当金の支給条件は「欠勤4日以上」ですが、B子さんは、欠勤3日目で退職したため、この条件を満たしていません。そのため、B子さんは傷病手当金を受けられないのです。もし、退職日をあと1日後ろへずらしていれば、「欠勤4日以上」の条件を満たすことになりますので、4日目から傷病手当金がもらえたことになります。(病気退職のときは退職日に注意!!)


●出産育児一時金・出産手当金

  「出産育児一時金」は、出産費用として30万円が支給されるというものです。「出産手当金」は、産前42日から産後56日について、仕事を休んで給料を受けられないときに、お給料(標準報酬)の60%が支給されるものです。退職前に1年以上継続して健康保険に加入していた方が、退職後6ヶ月以内に出産した場合、これらの給付金を受けることができます。


(事例3)
 C子さんは、結婚後も仕事を続けてきましたが、この度妊娠していることが分かりました。出産直前まで働くつもりでしたが、つわりがひどかったので、予定を早めて退職し、7ヶ月後に無事出産しました。ところがC子さんは、残念ながら、「退職後6ヶ月以内に出産」という条件を満たさなかったため、「出産育児一時金」と「出産手当金」はもらうことができませんでした。(ただし、退職後、夫の扶養家族になったため、
夫の健康保険から「家族出産育児一時金(30万円)」だけは支給されました。)


(事例4)
 D子さんも妊娠中です。産後も仕事を続けるつもりで頑張っていましたが、切迫流産で入院してしまいました。D子さんは、「傷病手当金」をもらいながらしばらく療養しましたが、体調は快復せず退職を決意しました。D子さんは、退職後の「傷病手当金」を受ける条件を満たしていたので、退職後も「傷病手当金」を受けて療養し、4ヶ月後に無事出産。産前42日、産後56日については、「出産手当金」をもらい、「出産育児一時金」の30万円ももらうことができました。(出産退職のときも退職日によって損得がでるので注意!!)

●埋葬料

 「埋葬料」とは、健康保険の加入者本人が死亡したときに、その人の標準報酬の1ヶ月分(最低10万円)が、遺された家族に支給されるというものです。@退職後3ヶ月以内に死亡したとき、A退職後、傷病手当金・出産手当金を受給中に死亡したとき、Bそれらの給付の受給後3ヶ月以内に死亡したときは、在職中と同じく支給されます。(加入1年以上の条件はなし。)


 
●健康保険の加入が1年未満の方は…
 
 「埋葬料」以外は、健康保険の1年以上の加入が条件となっています。
そのため、加入1年未満の方が、病気や出産で退職するときは、次の方法をお勧めします。それは「任意継続被保険者」になることです。加入期間2ヶ月以上の方が退職後20日以内に申請すると、退職前の健康保険に引き続き2年間加入することができ、「傷病手当金」や「出産手当金」等を受けることができます。ただし、保険料が当然かかります。在職中は事業主と本人の折半負担ですが、任意継続の場合は全額本人負担です。払う保険料と、もらえる給付金の額を天秤にかけて、任意継続を申請するかどうか決めるといいでしょう。

今回ご紹介した資格喪失後の給付・任意継続被保険者の給付については、一部廃止の案が出ています。今後の法改正情報にご注意を!