●あっせん制度とは?

@、最近は、企業の人事労務管理の個別化の進展等を背景として、解雇、賃金や労働条件の変更等、個々の労働者と事業主との間のトラブルが非常に多く、最終的に裁判沙汰になることも少なくありません。しかし、裁判の場合、判決に要する時間や費用を考えると、これらトラブルの悪化、長期化は当事者である労使双方にとって大きな負担となります。


A、そこで、労働条件のトラブルについて、事実関係の整理を行い、当事者に対してトラブルの早期解決のために無料で助言指導を行う制度として、労働局の紛争調整委員会の「あっせん制度」があります。具体的には、「あっせん」の申請がいずれか一方の当事者からあり、相手方も「あっせん」による解決を望んだ場合、担当するあっせん委員が当事者から事情を聴き取り、双方の主張を確かめ、トラブルの解決に必要な「あっせん案」を作成してくれます。この「あっせん案」を受け入れるかどうかは強制されることはありません。このような制度は裁判外紛争処理制度(ADR)といって、トラブルの解決手段として最近非常に注目を集めています


B、一番のメリットは「あっせん」によって当事者間の合意がなされると、民事上の「和解」と同様の効果を生じることです。結果的に金銭的解決となる場合が多いのですが、その場合でも裁判より、かなり低い金額での決着を図ることができます。そのようなことから、この「あっせん制度」を事業主が利用しない手はありません。


●事業主側からの申請事例1
ミスが多く、仕事の遅い社員の身分を変更し、賃金を引下げた「あっせん事例」

「あっせん」を申請することに至った経過

 
A社では、正社員として2年経過した社員Xが仕事が遅い上にミスも多く、このままでは得意先に迷惑をかける恐れがあることから、本来なら解雇したいところであったが、当面、身分を正社員からパートに変更し、賃金を引下げたいと考えました。しかし、社員Xは「言われた仕事はやっており、解雇や労働条件の変更には応じられない!」と主張して譲らないことから、「裁判などは考えていないが何とか解決を図りたい。」と、事業主側が「あっせん」の申請を行いました。


結 果
「あっせん」当初は、双方の主張に大きな隔たりがありましたが、「あっせん」の途中で社員Xが「半年後に結婚するので、自己都合による退職というのであれば納得する。」という提案をしてきたため、事業主もそれを了承し、結果、「Xは今後も正社員として現行の仕事を行い、半年後の平成○年○月○日に自己都合退職する。」とする和解が成立し、労使トラブルを解決することが出来ました。



●事業主側からの申請事例2
約束した契約の更新がされなかったことをめぐる「あっせん事例」

「あっせん」を申請することに至った経過

 Y社会福祉法人でケアワーカーとして勤務する職員Fは、契約期間満了に伴い、更新のための面接を受けたが、契約の更新は行われませんでした。職員Fはこの結果に納得がいかず、Y法人に対して執拗に契約の継続を訴え、「もし雇用がムリなら慰謝料等を支払え!」と主張してきたため、労使トラブルに発展し、事態が平行線の状態となったため、事業主側が「あっせん」の申請を行ないました。


結 果

 当初、職員Fは、口頭で理事長から「来年もよろしく。」と言われ、次年度の業務についても色々と相談を受けていたので、契約更新に期待を持っていたから、「当然に契約更新を望むが、それが無理なら精神的・経済的ダメージの補償として解雇予告手当相当分1ヶ月の賃金25万円と慰謝料50万円で合計75万円を支払って欲しい。」と主張しました。それに対して、Y法人側では、理事長は「来年の面接も受けてください。」と言っただけであるし、「次年度の事業についても、参考のために全員から聴いていただけ。」、また、「他の職員よりケアワーカーとしての資質が足りないし、残業ができないこと」などが雇い止めの理由であから、「金銭的に解決するとしても、和解金で10万円位なら出せるだけである・・・・」などと、当初感情的な確執があり、当事者間の話し合いが困難でしたが、あっせん委員が両者の問題点を指摘したところ、双方が金銭解決の意向を示し、さらに補償金額についても双方が譲歩を繰り返し、「期間満了で退職とし、事業主YがXに対して、解決金として30万円を支払う」との合意が成立しました。

●社労士は「あっせん代理人」です!

 以上のように、「あっせん制度」は、労使トラブルが平行線で当事者同士で解決しない状態の場合、無料でかつ簡易・迅速に紛争解決の道が開けることがポイントだと思います。
 それに、トラブルの実情に即した柔軟な解決が可能となります。また、非公開であり、裁判のように公開の場で争われることにならないので、労使ともにプライバシーが守られることもメリットです。社会保険労務士は、「あっせん代理人」として、労働局の「あっせん制度」ではクライアントの代理をすることが認められております。「あっせん制度」について詳しく知りたい、或いは利用したい場合は、西多事務所までご相談ください。