何かとあわただしい年の暮れ、気があせって思わぬケガをしたり、疲れや寒さから体調を崩したりする方が多いようです。西多事務所では、毎年、年末から正月休み明けにかけて、労災の取扱い件数がふえる傾向にあります。忙しいときこそ、機械器具の点検・整備を徹底していただき、作業マニュアルを守って、慎重な行動を取るよう心がけ、安全に年末年始を過ごしていただきたいと思います。


さて、今年1月から12月13日現在までの西多事務所の労災取扱い件数は、業務災害(仕事中のケガ)が80件、通勤災害が9件です。そのうち、今年特に多かった「腰痛災害」(19件)についてお知らせします。


ご存知の通り、仕事が原因となるケガや病気については、「健康保険」ではなく、「労災保険」を使って治療することになります。腰痛についても同様なのですが、腰痛は、加齢やその人の生活習慣、体型など、仕事に関係のないことも絡み合って発生することが多いため、仕事が原因かどうかの判断がつきにくいものです。そのため、昭和51年に「業務上腰痛の認定基準等について」という通達が出されており、それに基づいて業務上・外の認定が行われています。その内容を簡単にご紹介しましょう。



●(1)災害性の原因による腰痛


「いつ、どこで、何をしているときに」という点がはっきりしている急性の腰痛の場合です。次のいずれにも該当する場合に業務上の災害として認定されます。

@ 通常の動作と異なる動作による腰部に対する急激な力の作用が業務遂行中に突発的なできごととして生じたと明らかに認められること。

A 腰部に作用した力が腰痛を発生させ、又は腰痛の既往症若しくは基礎疾患を著しく増悪させたと医学的に認めるに足りるものであること。

 原文をそのまま読むと難しいので、具体的な例を挙げましょう。


<例1> 重量物を二人で運搬中、一人が手を滑らせ荷物を落としそうになったため、もう一人に大きい負担がかかり腰を痛めた。

<例2> 
高齢者施設の介護職員が、高齢者の歩行介助をしていたところ、高齢者がふらついたので転倒防止のため、支えようとしたところ、不自然な姿勢になり腰をひねって激痛が走った。

<例3> 
何年か前に「椎間板ヘルニア」の診断を受け、時々腰の痛みがあるものの、仕事にはそれ程支障のなかった者が、段ボール箱を持ち上げようとしたところ、予想以上に重く、腰に大きな負担がかかって、痛みが走り動けなくなった。


 これらのように、「腰に大きな力や急激な力がかかった」とか「不自然な姿勢となり腰をひねった」などのせいで腰痛が発生した場合、あるいは、そういったことが原因で持病の腰痛が著しく悪化したというような場合は、前記の要件に該当するものとして、労災として認められる可能性が高いといえます。では、次のような場合はどうでしょうか。


<例4>
 事務員が、机から落ちた書類を拾おうとして「ぎっくり腰」になった。

これは、単に落ちた書類を拾っただけで、日常生活上の動作や通常の作業動作と変わらず、腰に異常な力の作用があったとは認めらないため、業務上のケガと認められることは難しいと思われます。



●(2)災害性の原因によらない腰痛


 
長年、腰に負担のかかる仕事をしたために徐々に起こる慢性的な腰痛がこれにあたります。原文は引用すると長くなりますので省略しますが、腰部に過度の負担のかかる業務への従事年数や、負担のかかる業務の内容(重量物の取扱いや不自然な姿勢など)に関する基準が示されています。次のようなケースが考えられます。



<例5> 
重症身体障害者施設の介護職員として10年間、障害者を抱き上げたり、中腰での作業など腰に負担のかかる業務が多く、腰の痛みがひどくなり我慢できなくなった。

<例6> 
電気工事会社の外線作業員として5年間、電柱の上での不自然な姿勢による作業を毎日数時間続けているうちに、腰痛がひどくなってきた。


 このようなケースは、通達に示されている認定基準に照らし合わせながら、労災として認定される可能性があります。しかし、(1)の災害性の腰痛に比べて判断が難しいので、労働基準監督署への提出書類が多く、認定にも時間がかかります。
腰痛災害が発生した場合は、急性・慢性にかかわらず西多事務所までご相談ください。