20年3月1日より労働契約法(新法)、4月1日より改正パート労働法が施行されます。
そこで今回は、これらの法律(改正)のポイントについて見ていきたいと思います。


1、労働契約法(契約法)について
■1■新しく契約法ができた理由は?

 最近は、使用者と労働者との間で、労働条件等をめぐる問題が多発しています。実際、西多事務所でも数年前とは比較にならないくらい、労使トラブルによる相談が頻繁に寄せられます。「サービス残業」といった問題なら、「1週の所定労働は40時間制、残業時の割増賃金は2割5分増・・・」などと、労働基準法(労基法)は労働条件の最低基準を明確に数値で定めているので「適法か違法か」、解決・判断できます。

 しかし、「労働条件の不利益変更、配置転換や出向、解雇」といった労基法には違反しないトラブルの場合、労働契約上「有効か無効か?」ということが、判断できないケースがあります。その場合、一般法である民法の「権利濫用」、「信義則」、「公序良俗」といった一般条項を用いて過去に裁判所が示した法律的判断の「判例」などによって説明するのが実情です。そこで、「判例」などで認められてきた労働契約のルールを法律にし、「有効か無効か?」の判断ルールをはっきりと定めて、未然にトラブルを防いだり、解決がスムーズに行くように制定されたのが、「労働契約法」です。

■2■労働基準法と労働契約法の違いは?
 
 いずれの法律も、労働契約と就業規則について定めがあります。しかし、この両者には絶対的に違うところがあります。それは、契約法には労基法のような強制力・罰則規定がないことです。労基法は、最低労働条件を下回るような措置を行うことを禁止し、違反した場合には労働基準監督官が使用者を監督指導し、悪質な場合は強制捜査、逮捕・送検、刑事罰もありえます。これに対し、契約法は労使間の自主的ルールを定めたもので、労使に対する強制力、罰則規定はありません。

 しかし、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などにも罰則がありませんが、セクハラ行為や育児休業を拒否するといったことなどは実際、認められません。仮に、裁判などになれば違反した側は間違いなく損害賠償を負担することになるはずです。したがって、今後は契約法に関しても、違反をすれば同様のことが考えられます。


■3■労働契約法のポイント

 契約法は、条文数がわずか19条ですが、大きく4つのポイントに分かれています。
 

●イ、【労働契約の原則ポイント】第1〜5条

@労働契約は、労使が対等の立場で合意に基づき締結・変更すべきであること
A労使は、労働契約を遵守し、誠実に権利を行使し、義務を履行すべきであること
B労使は、お互いに労働契約に基づく権利を濫用しないこと
C使用者は、労働者へ提示する労働条件や締結・変更後の内容について労働者の理解を深めるようにすること、またできる限り書面により確認すること
D使用者は、労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮すること


●ロ、【労働契約の成立・変更ポイント】第6〜13条

@労働契約は、労使が合意することによって成立する。また、契約締結時に就業規則の内容を周知しておれば、その内容が労働条件となる。ただし、特約などがあればそちらを優先する。
A労働契約は、労使が合意することによって変更することができる。
B使用者は、労働者の合意なく就業規則に書いてある労働条件を不利益に変更できない。ただし、例外としてやむを得ない事情などがあり、合理的であれば労働者の「合意」なく変更ができる。ただし、特約などがあればそちらを優先する。
C就業規則は、法令や労働協約に違反していないこと


●ハ、【労働契約の継続・終了ポイント】第14〜16条

@権利を濫用した「出向」命令は無効とする。
A社会通念上相当でない理由による労働者の「懲戒」や「解雇」は無効とする。
 


●二、【期間の定めある労働契約のポイント】第17条

@「有期雇用」は、必要以上に短い期間を定めて、更新を繰り返さないよう配慮する。

■4■事業所の対応策 

 契約法は、具体的な数値による定めなどがないため、たちまち「法に抵触するから・・・」といったことでの、就業規則等の変更が必要になるものではありません。しかし、今後の紛争防止と紛争発生時の有利な解決を目指すためにも以下のような対策が望まれます。

1、前出ポイントの【イC】の観点から、パートはもちろんのこと、正社員であっても入社時などは、給与辞令などでなく、雇用契約書を作成する。

2、前出ポイントの【ロ】に関しては、「就業規則を労働者が閲覧できるようにする、変更時などは、労働者に充分説明するなどのステップを踏む」

3、前出ポイントの【ハ】の観点から出向などがありえる場合は、出向規程などを定める。「懲戒」や「解雇」の処分をするには理由等が予め定めてあるという罪刑法定主義などの観点から具体的にありえる事由について就業規則上に明記しておく。・・・などが考えられます。


2、改正パート労働法(短時間労働者の雇用改善に関する法律)について
■1■法改正の趣旨等

 近年はパートの労働者が増加し、中には事業所内で基幹的な役割を担うパートも増えてきています。しかし、従来からパートは「安い労働力」と認識され、正社員と同様の仕事をしながら賃金等が低く設定され待遇の格差が大きいことや、入社時に労働条件が明示されず、後々にトラブルに発展するなどのケースが多い現状があります。
そこで、今回のパート労働法の改正では、パートが安心・納得して働くことができる、公正な職場ルールを確立する観点からの法改正が行われます。

 ちなみに、パート労働法での「パート」とは、「1週間の所定労働時間が通常の労働者よりも短い者」と定義しています。したがって、フルタイムパートなどは、法の対象とはしていません。しかし、厚労省の指針では「フルタイムパートにもパート労働法の趣旨が考慮されるべきである。」としていますので、実務上はフルタイムパートについても法改正の対応をすべきと考えられます。

■2■改正のポイント

 ここでは、義務化(強行規定)される点について見ていきます。(よって努力義務は除く)


 @労働条件の文書の交付義務(パート法第6条)
現在でも、労基法第15条で以下の事項は書面での明示が義務付けられています。
それに加えて、パート労働法第6条に基づき、
新たに朱書部分の事項について文書での明示が義務付けられます。したがって、パートを雇用している各事業所様では、20年4月以降の契約書には、新たに追加記載の必要があります。

法律名 書面での明示事項
労働基準法第15条によるもの @契約期間、A就業の場所・従事する業務B始終業時刻、休憩、休日 C賃金 D退職など
パート労働法第6条によるもの @昇給の有無 A賞与の有無 B退職金の有無

また、昇給や賞与について「業績による」などとなっている場合は、「有り」と明示し、併せてその旨を明示する必要があります。


 A正社員並みパートに対する差別的取扱の禁止(パート法第8条)
下記の3要件を満たす、通常の労働者と同視すべきパートに対して、その待遇について、通常の労働者と差別的な取扱をすることが禁止されます。

正社員と同視すべきパートの3要件 (1)職務内容の同一性(業務内容・責任の程度が正社員と同一)
(2)雇用契約期間の同一性(期間の定めなし、ただし、有期契約であっても反復更新され実質定めなしと同視できる場合を含む)
(3)人材活用の仕組・運用等の同一性(職務内容・配置が正社員と同一)

よって、3要件が全て満たされると、そのようなパートに対しては、時給換算で正社員と同じ、給与・賞与・退職金支給が必要となります。

■例■陶器製造会社
・正社員と同様の製造ラインに配置され、品質管理をしている。・・・職務内容同じ
・契約の自動更新となっており、勤務時間は正社員より1時間短い・・・雇用契約期間同じ
・正社員も人事異動や昇進がない。・・・人材活用の仕組・運用等の同じ

従来の待遇 変更すべき待遇
●基本給 ・正社員は時給換算で1,500円・パートは時給換算で800円●賞与は正社員のみ ●基本給正社員もパートも同じく時給換算で1,500円●賞与はパートにも支給


B職務同一パートに対する教育訓練の実施(パート法第10条)
職務に関連する教育訓練は、通常の労働者と職務内容が同じパートについても実施しなければいけません。


 Cパートの正社員への転換の推進(パート法第12条)
事業主は、パートの通常の労働者への転換を推進するための措置を講じる必要があり、以下の3つのうち少なくとも1つを実施する必要があります。
(1)募集条件の周知 正社員を募集する際、事業所に求人を掲示するなどする。
(2)希望申し出の機会付与 新部門などに正社員を配置する際、配置の希望を申し出る機会を与える。
(3)転換制度を設ける 正社員転換制度など、一定の資格を有するパートを対象とした試験制度を設ける。



 
D待遇についての説明義務(パート法第13条)
パートの求めに応じて本人の待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明することが義務付けられます。例えば、これまではパートに「何で私は時給800円なの?」と質問されても、「あなたは、パートだから800円なのだ!」と回答しても問題なしでした。
しかし、今後は「この地区の世間相場を調べその点を勘案して決定している。」「職務内容を勘案している」などといった説明をする必要があります。
ただし、パートが納得するまで説明することを課しているわけではないので、合理的な範囲で説明を行えばよいとされています。