ご存知の方も多いかと思いますが今年の1月下旬、日本マクドナルドの店長が残業代を支払う必要のない管理職かどうかが争われた裁判で、東京地裁は「管理職にはあたらない。」と判断して、残業代などの支払いを会社側に命じました。この判決を  きっかけに、「名ばかり管理職」という言葉が、マスコミでも大きく  取り上げられました。また4月1日には、厚生労働省より「管理監督者の範囲の適正化について(※通達全文は下記リンク参照)」の通達が出されており今後、労働基準監督署が各企業・事業所に対して「名ばかり管理職」への残業代の不払いをはじめとした、労働条件等を是正すべく監督・指導を強化することが予想されます。

 ●法律でいう「管理職」とは?

@、法律では、労働基準法第41条2号に定める「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」と言う)」を指し  ます。この管理監督者は「労働時間、休憩及び休日に関する規定については適用しない。」としています。よって、残業代や休日出勤手当の支払いが不要とされています。
 しかし、注意すべき点は労働基準法上の「管理監督者」の範囲と、各企業・事業所で「管理職」として扱っている範囲とが、一致するとは限らないということです。
厚生労働省の解釈例規によると「管理監督者とは、部長・工場長等で労働条件の決定  その他、労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず実態に即して判断されるべきである。」とし、「職務内容や職責からして労働時間の規制になじまない」、「地位にふさわしい待遇がなされている」なども考慮して判断すべきとしており、過去に「管理職が法でいう管理監督者かどうか?」を争った裁判例の見解もほぼ同じです。


A、以上の見解などをまとめると、「労働基準法で言う管理監督者」に該当するのは、次の3つ要件を満たした場合のみとなります。

 ●法律でいう管理監督者の3要件
●要件1、イ、経営方針など経営に関する重要事項の決定に参画する権限を有していることまたは、ロ、労務管理に関する指揮監督権限のいずれかを有していること
具体的には。。。。・人事、営業、経営等に関する重要な会議に出席し、事案決定に関与する権限があること・アルバイトだけでなく正社員の採用・昇進・退職・解雇等の決定権限があること・部下の人事考課で最終的の評価決定の権限があること。。。。など

●要件2、出退勤・欠勤などについて管理をされず、自己の勤務時間について自由裁量を有していること
具体的には。。。。・タイムカードを打刻させていたとしても、欠勤・遅刻・早退をしても給与カットをしていないこと・実態として、始業から終業時刻まで勤務が事実上義務付けられていないこと。。。。など

●要件3、賃金・賞与・退職金などの待遇面で、管理職の地位にふさわしい待遇がなされていること
具体的には。。。。・部下と賃金を比較した場合、逆転していたり、ほとんど差がないかといったことがないこと・役職手当の額が(長時間労働・休日労働相当の)残業代が支給されないことに対する代償として十分であること。。。。など


 
結局、原則として前出の「3要件」を満たさなければ、労基法上の「管理監督者」とすることは認められないということです。つまり、法律でいう「管理監督者」に該当しない「管理職」の場合もあり得るわけです。(各企業・事業所においてはこのケースが結構、多いのではないでしょうか?。。。)
なお、権限の付与や処遇が充分でないにもかかわらず「管理職」として残業代等を支給していないと、「3要件」を満たしていないので「名ばかり管理職」として法違反の可能性が高まります。実際、西多事務所の関与先が労働基準監督署の調査を受け、「(
基本給28万円+課長手当4万円=月額32万円)」の課長が、労基法上の「管理監督者」とは認められず、残業代を支払うようにとの是正勧告を受けたこともありました。


●各企業・事業所の対応策について

今後、各企業・事業所においては、どのような対策をとればよいでしょうか?結論的には次の2つの方法が挙げられます。

@労基法上の「管理監督者」として取扱う方法

 権限・処遇等を前出の「3要件」を満たすように、労働条件等を改善し、「労基法上の   管理監督者に適合する」ように労働条件を整備する方法です。
具体的にはまず、権限については「管理職職務規程」などを作成し、その中で、「重要な経営会議の参加や同会議での決議権の付与」、「管理職には出退勤の裁量があること」  などを定義・明記しておく、「実際の長時間労働(残業時間)に相当する程度の金額へ役職 手当額を改善する・年間の賃金支給額が部下と逆転することのないよう水準を向上させる」ことなどが効果的な対策です。

A労基法上の「管理監督者」として取扱わない方法
 
 会社内では管理職としての身分を有する(いわゆる「社内管理職」)とし、「労基法上の管理監督者とは違う」とする方法です。
この社内管理職の処遇のポイントは、「残業代や休日出勤手当等を支給する  こと」です。
通常の労働者と同様の賃金支払をするのが原則ですが、通常の労働者とは違うステージで、管理職であることを強調したいなら、これまでの「管理職手当」を「特別職務手当」などの名称に変更し、「定額の残業代として支給する方法」などが適切かもしれません。ただしこの場合、必ず就業規則などで以下の記載例のような文章を、「特別職務手当」が残業代である旨を記載しておくことが重要です。
※記載例
「特別職務手当」は、残業代(40時間)、休日出勤手当(8時間)相当分の内払いとする。
ただし、実際の残業・休日出勤等が特別職務手当の相当時間を超える場合は、その差額を別途支給するものとする。

各企業・事業所において実務上は、@Aを併用し、管理職の中でも統括的な者を@の労基法上の「管理監督者」とし、その他の者はAの「社内管理職」として取扱うといったことがベストといえます。

●まとめ

いかがでしたでしょうか?
みなさまの職場においては、「名ばかり管理職」はいませんか?
今後、管理職従業員との残業代等をめぐる争いや、管理職処遇の労働基準監督署の調査等が増えることが予想されるため各企業・事業所においても、管理職の労務管理を適切に行うことが重要です。
不適切と思われるケースがあれば、管理職の労働条件を早急に見直す必要があります。「対策を検討したい。」と思われた顧問先事業所様は、今すぐ  西多事務所までご相談ください。


●参考・・・・通達「管理監督者の範囲の適正化について」


管理監督者の範囲の適正化について(基監発第0401001号)
http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/siryo/pdf/20080404.pdf