毎月、税金や社会保険料などを控除して支払われる給料ですが通常、  そのなかで一番大きい金額になるのが「社会保険料(健康保険料、厚生  年金保険料)」です。丁度7月はその社会保険料を決めなおす(定時決定)時期なので今回は、それらを含めて社会保険料の決定の仕組みを取り上げます。

●1、標準報酬月額について
 
 社会保険では従業員の報酬(給料)を、区切りよい幅で区分されている標準報酬等級表に当てはめた「標準報酬月額」をもとに毎月の社会保険料を計算します。
この「報酬」とは、賃金・給料・手当・賞与などの名称を問わず、労務の対償として受けるもの全てをいいます。
標準報酬月額は、健康保険が1等級58,000円〜47等級1,210,000円、厚生年金保険が1等級98,000円〜30等級620,000円の区分となっています。

部分抜粋した標準報酬等級表   

 

健保標準
報酬
月額

厚年標準
報酬
月額

報酬の範囲

 

健保

厚年

(円以上

円未満)

 

1

1

\58,000

 

 

\63,000

 

5

1

\98,000

\98,000

\93,000

\101,000

 

14

10

\170,000

\170,000

\165,000

\175,000

例、173,000円の給料なら

←「170,000円」の等級になる。

20

16

\260,000

\260,000

\250,000

\270,000

 

24

20

\340,000

\340,000

\330,000

\350,000

 

30

26

\500,000

\500,000

\485,000

\515,000

 

34

30

\620,000

\620,000

\605,000

\635,000

 

40

30

\830,000

 

\810,000

\855,000

 

47

30

\1,210,000

 

\1,175,000

 

 


●2、標準報酬月額の決め方

 所得税や雇用保険料は、毎月の給料の額に応じて保険料が変動しますが、社会保険料は、次の3つの時期に諸届出を行い、一度、標準報酬月額が決められると、原則として保険料は(変動せず)固定することになります。


@、資格取得時決定(入社時に決定)

イ、新しく人を採用した場合、標準報酬月額を決定することになります。これを「資格取得時決定」といいます。給料支払の前に届出をすることになるので、見込みの報酬を記入することになります。この場合、基本給のほか通勤手当・住宅手当などの固定的な諸手当と見込みの残業手当などを加えて標準報酬月額を決定することになります。時給制の人などの場合は、月当たりに直して記入します。
ロ、見込額で諸手当のモレがあると訂正を求められることもあります。なお、残業手当に関しては、昨年に日本年金機より、「資格取得時に見込んでいた残業手当が実際に支払われた残業手当と著しい差異が生じたとしても、資格取得時の報酬訂正は行わないのが妥当である。」との見解がでており、「同僚等の実績からしてこれくらいの残業を見込んでいた。」という根拠に基づく数字であることを説明すれば、特に修正は求められないことになっています。


 
A、定時決定(毎年7月に決定)
イ、従業員が実際に受取る報酬と、固定している標準報酬月額の間に大きな差が出ないよう定期的に毎年1回、7月に標準報酬月額を決めなおす「定時決定」があります。このときに使用する用紙が「算定基礎届」なので、通称「算定(さんてい)」とも言います。
ロ、従業員が「4・5・6月」の3ヶ月に受けた報酬の1ヶ月あたりの平均月額を算出し、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定することになります。
このとき、給料支払の対象となる日数(支払基礎日数)が17日未満だった月は計算の対象から除きます。(パートの場合15日以上の支払基礎日数を用いる例外もあります。)
ハ、今年3月31日に出た通達により新たな「保険者算定」が認められることになりました。これまで「保険者算定」は、「(1)給料遅配、(2)休職した場合、(3)ストライキによる賃金カット」だけだったものが、「業務の性質上、季節的に報酬が変動する場合」も認められるようになりました。具体的には、A「4・5・6月に受けた報酬」とB「前年の7月から当年の6月までに受けた報酬」の月平均を比較して標準報酬等級で2等級以上の差が出た場合は、Bによる標準報酬月額(等級)を「保険者算定」として認めるものです。
                                                  

例、4〜6月が繁忙期で、その他の時期は閑散期の事業所

7

8

9

10

11

12

1

2

3

4

5

6

20万

20万

20万

20万

20万

20万

20万

20万

20万

40万

40万

40万


A、4〜6月平均標準報酬月額   410,000円(原則)

B、前年7月〜6月平均標準報酬月額         260,000円(保険者算定)

      
                               ↑この場合、2等級以上の差があるので、Bの年間平均の保険者算定が適用できる。
                                                                                

ただし、この取扱いは、従業員が望んだ場合にのみ適用されるため、別添で従業員本人の同意書も必要となっています。西多事務所では、該当しそうなケースを見つけた場合はその都度対応させていただきます。


B、随時決定(報酬が大幅に変動したときに決定)
、原則、標準報酬月額は前出のA「定時決定」までは固定です。しかし、途中で昇給や降給などにより基本給や諸手当など支給額や支給率が決まっているもの(「固定的賃金」といいます。)が大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されます。これを「随時改定」といいます。このときに使用する用紙が「月額変更届」なので、通称「月変(げつへん)」とも言います。
、「随時改定」は次の3つの全てに該当するときに行われます。

(1)昇給・降給などで固定的賃金に変動があった。
          ↓
(2)変動月(昇給・降給月)からの3ヶ月の間に支払われた報酬(残業手当などの非固定的賃金も含む)の1ヶ月あたりの平均額の標準報酬月額と従来の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
          ↓
(3)3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上だった。


、固定的賃金に変動が無く、2等級以上差が生じても「随時改定」になりません。
また、固定的賃金が上がっても残業代が減ったため、報酬が逆に2等級以上下がったり、固定的賃金が下がったが残業代が増えて、報酬が2等級以上がるケースも対象外になります。



●3、その他の参考事項

これまで触れてきた3つの方法により、標準報酬月額を決定し、社会保険料を決めるのが大原則ですが、以下のような特殊な取り扱いもあります。
イ、育児休業終了時改定
育児休業等を終了し、かつ3歳未満の子を養育している人が仕事に復帰したとき、短時間勤務や残業の免除などで、休業前に比べて報酬が低下する場合があります。この場合、前出のB「随時改定」の要件に該当しなくても、育児休業終了日から3ヶ月に支払われた報酬で標準報酬月額が1等級でも差が出れば標準報酬月額の見直しができます。

ロ、同日得喪
60歳以上の従業員で年金の受給権者が、同じ会社で再雇用される場合、使用関係が一旦中断したものとみなし、定年時などの「高い給料の状態を一旦退職」して、翌日に「低い給料で再入社」した扱いとして、「資格喪失届」と「資格取得届」を特例で提出することができます。(これを同日得喪【どうじつとくそう】といいます。)。通常、標準報酬月額は、前出のB「随時改定」により、給料が下がって3ヶ月経過してから4ヶ月目に月額変更届の提出をして下げることが可能となります。しかし、この同日得喪の特例を使うと、すぐに、標準報酬月額を引下げることができ、年金もすぐに受給可能とすることができます。