最近は、リストラ・就業条件のミスマッチ・成果主義的人事への移行による不適合などを背景にして、労働条件トラブルにより法違反を問われ、事業主が書類送検・逮捕されるなどの問題が頻繁にマスコミで報道されています。そんな中で特に賃金(給料)に関する トラブルが多いのではないでしょうか? 労働条件の中で賃金は、労働時間と並んで或いはそれ以上に中心的な地位を占めていますから、賃金の決定、計算、支払方法については、法的に間違いのないようにしておかないと、深刻なトラブルになる可能性があります。



●給料を口座振込する際の注意点
現在、給料を口座振込みで支払っていますが、何人かの従業員が、現金で支払って欲しいと言ってきました。またある女性の従業員は自分の口座がないため夫の口座への振込みを希望していますが、これに応じてよいでしょうか?


⇒ 労働基準法24条では、給料は原則現金で直接本人に支払うことになっています。
しかし、「労働者の同意」があれば口座振込によって賃金を支払うことができます。
同意しない従業員には、現金で支払う必要があります。給与を口座振込で管理したいなら、採用時に、予め「給与振込みの同意書」の一筆取っておくことが効果的です。
⇒また、給料はあくまでも本人名義の口座に振込む必要があります。


●求人票の賃金と実際の賃金が相違する際の注意点
求人票に時給800円と記載して募集し、採用したAさんは当社の業務未経験のため時給750円で計算して給料を支払ったところ、「約束違反で違法である。」と言われましたが、どのようなものでしょうか?


⇒ 労働基準法15条では、労働契約の際に、労働条件を明示するようになっています。
したがって求人募集する時点は労働契約締結の前なので、必ずしも求人票の条件どおりで採用する必要はありません。もっとも職業安定法で求人の申込に当たっての労働条件の 明示義務がありますので全くのデタラメを書くことは出来ません。
対応策としては、求人票の時給額を700〜850円などと幅を持たせて記載するとよいでしょう。また、求人票と条件が相違する時は面接段階で変更後の条件で求職者の合意を得ておくことです。そして最終的に採用日に雇用契約書で労働条件を明示すれば万全です。



●賃金カットをする際の注意点
経営不振なので、仕事のレベルが低い従業員の賃下げをしたいが、可能か?


⇒ まず、会社側が一方的に賃金を下げるとこれは、レッドカードです。新聞に「○○会社賃金20%カット」と会社側の決定であるかのような表現がありますが、それは労働組合と合意が成立したことを報道しているのであって決して会社が一方的に賃下げをしているのではありません。一方、労働組合のない中小企業で賃下げをする場合は個々の従業員と合意をする必要があります。そのため、「賃金カットの合意書」を作成し、一筆を取っておくことが大事です。また、就業規則に「賃下げ」に関して記載しておくことも効果的です。

例えば・・・、
第○条(降給)会社の経営状況が悪化、従業員の勤務成績が不良、人事評価の結果が著しく悪い場合、顧客から評価が悪い場合は、降給たる給与の改定を行うことがある。
                                    ・・・・・・・などと、記載すればよいでしょう。

昇給のことが書いてある就業規則は数多くありますが、降給のことを記載している就業規則はほとんど見当たりません。ただし、注意すべき点として就業規則の不利益変更をする場合は、その必要性、合理性がないと認められないことになっています。



●遅刻の賃金計算注意点
遅刻した従業員の残業にも残業手当を支払うべきか?また30分未満の遅刻を30分の遅刻とみなして賃金カットできるか?


⇒ 労働基準法37条では8時間を超える労働をした場合、割増賃金を支払わなければいけないのですが、この事例の場合、1時間遅刻し1時間残業した労働者は始業も終業も1時間遅くなっただけで働いた時間の長さは普段の日と同じですから、割増賃金を支払う必要はありません。

⇒ 5分の遅刻に対して、5分に相当する賃金をカットすることは差し支えありません。
しかし、5分の遅刻に対して単純に30分相当の賃金カットをすることは労働基準法24条の全額払いに違反することになります。そこで、労働基準法91条の減給の制裁として職場規律に違反した労働者に対するペナルティーとして取扱えば違法とはなりません。
5分の賃金カットは当然として、あとの25分の賃金カットは遅刻という職場規律違反に対する減給の制裁として取扱えば、法律には触れないことになります。



〜以上、賃金に関する注意点について説明させていただきました。
さらに詳しいことを知りたい場合は西多事務所へお問い合わせ下さい〜