「問題社員」と呼ばれる従業員がここ数年、急増しているような気がします。社会的なモラルの低下、価値観の多様化、長引く不況による労使関係の変化などが複雑に絡み合った結果でしょうか。近年、インターネットの急速な普及により、誰でも簡単に様々な情報を手に入れられるようになりました。「問題社員」と呼ばれる人の中には、そういったものを利用して法律的な知識やノウハウを身に付け、理論武装して権利を主張してくる者も増えてきました。そうなってくると、事業主側も一昔前の家族的な感覚や感情論では、もはや問題を解決することはできません。それどころか、かえってこじらせ、近頃はやりの「訴えてやる!!」といったところにまで発展する可能性もあります。事業主側も正しい法律知識を身に付け、普段からトラブル防止に努める必要があるといえます。



事例@ ダラダラ残業で残業代稼ぎをするA君


Q.
A君は、大した業務量でもないのに、毎日のようにダラダラと残業をします。どうやら残業代稼ぎのためにわざと残っているようです。こんな人にも残業手当を支払わなくてはならないのですか?A君と同期入社のB君は、仕事のスピードが速く、毎日きっちり時間内に仕事を終わらせます。有能なB君よりも、A君の方が結果として高い給料を払っていることになり、納得いきません。


A.お気持ちはよくわかりますが、労働基準法により、定められた時間を超えて労働した分については、1.25倍の割増賃金の支払が義務付けられています。また、最近は残業手当の不払いに対する労働基準監督署の取り締まりも厳しくなってきています。ですから、この場合、残業手当を支払わなくてよい方法を考えるより、残業をさせない方法を考える方がよいでしょう。まずは上司がA君の仕事内容をよく把握し、重要性や優先順位も踏まえて、時間内に終了できるよう適切な指示を出すこと。急ぎではない仕事をだらだらと続ける場合は帰らせること。残業はあらかじめその内容や終了予定時刻を申告させ、許可制にするというのも一つの方法です。ノー残業デーを設けるのもよいでしょう。また、少々荒っぽいやり方ですが、ある一定の時間がきたら、照明を強制的に消す、冷暖房を止めてしまうという手もあります。また、能力のあるB君とのバランスですが、昇給や賞与の査定に反映させることで、両者に差をつければ法違反になることはありません。


事例A 無断欠勤が続き、行方不明のCさん


Q.
当社のCさんが先日から無断欠勤をしており、電話をしても出ないし、家には鍵がかかっています。就業規則では、懲戒解雇の事由として「無断欠勤が14日以上に及んだとき」とありますが、解雇できますか?何か注意点は?


A.
「無断欠勤14日以上」は、懲戒解雇の事由として妥当なものと思われますので、この場合解雇することはできると言えます。しかし、解雇が決まった途端に姿を現し、「解雇は無効だ」とか、「解雇予告手当を支払え」と主張してくることも考えられますから、注意深く対応しなければなりません。いくつかの注意点を挙げてみましょう

@ 14日間無断欠勤を放置しておくのではなく、電話、手紙、家族や実家への連絡など、出勤を促す働きかけをし、いつ、どのような方法を取ったか記録しておきましょう。

A 懲戒解雇であっても、原則として、30日前の予告または30日分の解雇予告手当の支払が必要。ただし、労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受ければ、予告手当の支払なしに即時解雇できます。

B 解雇通知は、本人に直接会えない場合、本人宛てに郵送する(内容証明郵便などを利用するとよい)か、同居の家族に交付すれば、一応効力が生じたとみなされます。

C 「無断欠勤が14日以上に及んだときは、自動退職とする」との規定を設けるという方法もあります。これなら「解雇」ではありませんから、解雇予告や予告手当などのわずらわしい問題は起こりません。この場合、注意しておきたいのは退職金規程です。
「無断欠勤による退職の場合も懲戒解雇の場合と同様、退職金は支払わない」ということをきっちり定めておかないと、本人から「退職金を支払え」と言われかねません。




事例B
 茶髪、ピアスの派手な格好で仕事するDさん


Q.当社は接客業を営んでいますが、茶髪にピアス、派手な化粧で勤務する社員がいます。お客様に対するイメージが悪いし、同僚たちも違和感を覚えています。茶髪やピアスを禁止することはできますか?


A.
お客様に不快感を与えるもの、同僚が違和感や嫌悪感を抱くもの、あるいは、衛生上や安全上問題のあるものについては、ある程度の規制はできると思われます。しかし、本来、髪型や服装などは本人が自由に決定する権利があるので、全面的な禁止は難しいでしょう。判例でも、「髪の色や服装などに関する企業の制限については、企業の円滑な運営に必要かつ合理的な範囲にとどまり、無制限に許されるものではない」(平成9年、東谷山家事件)とあります。なお、何らかの規制をするのであれば、就業規則(服務規程など)に定める必要があります。規定例として、「服装、髪型などの身だしなみについては、常に清潔と品位を保ち、他人に不快感や違和感を与えるようなものとしないこと」などが考えられます。労働者は労働契約の締結により、合理的な服務規律に従う義務がありますので、それに従わない場合は、懲戒処分を行うことも可能です。また、普段から社会人としてふさわしい服装、身だしなみについて指導し、本人の自覚を促すことも必要でしょう。