採用時のトラブル防止ポイント
   

●必ず雇用契約書を作成して、求人時と採用直後の労働条件の相違を防止

最近ある会社の社長から、次の質問がありました。「今度、雇い入れた社員から、求人広告の内容と実際の労働条件が違っていると指摘されました。残業時間が求人広告より多いことが不満のようです。繁忙期でも求人広告に記載した時間までしか残業させられないのでしょうか?」このようなトラブルが起きた、原因の一つが「雇用契約書」を作成していないことが考えられます。


  労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めており、雇用契約をする場合、雇用主は、労働の基本となる事項(賃金、労働の期間、就業の場所、従事する業務、始業・終業の時間、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、退職)について記載した書面の交付によって明示しなければならないことになっています。


上記のように、傍線部の事項は口頭説明だけでは認められません。そこで、通常、必要となってくる書面の一つとして使用するのが「雇用契約書」となるわけです。
また、書面で明示すべき労働条件については、すべてを「雇用契約書」に記載するのが無理であれば、その労働者に適用する部分を明確にして「就業規則」を労働契約の締結の際に交付することとしてもよいとされています。

 
 
なお、求人広告に記載した条件は、通常その内容が労働契約の内容とされると考えられますが、必ずしもすべての条件がこれに拘束されるわけではありません。今回の事例についていえば、一般に求人広告の残業時間は平均値が記載されていますが、業務や時期により求人広告記載の時間数を超えることがあってもやむを得ないということになります。なぜなら、求人広告は、応募者に対する「申込みの誘引」にすぎないと考えられるからです。
求人広告を見た本人が応募して初めて「契約の申込み」となり、会社が選考し採用を決定した段階で「申込みの承諾」となり、申込みと承諾があったのち、「雇用契約書」を交わして初めて「労働契約の締結」となります。次ページの図を見ていただいたらわかるように、求人広告の記載事項が当然に労働契約の内容となるわけではありません。あくまでも本人と会社との間で結ばれた最終的なCの個別の労働契約によることとなります。

◎求人から採用までの流れ

@        A        B         C  
 求人広告 ⇒ 応募     ⇒ 採用決定  ⇒ 締結
 申込誘引   契約申込     面接        労働契約
                     申込承諾


 しかし、誇大広告により実際の労働条件よりもはるかによい内容で求人して応募者を欺くようなことは、それはそれで、職業安定法違反に問われますので、注意が必要です。当然、求職者は求人広告に記載された条件を見て応募を判断するでしょうし、その内容が労働契約の内容となると考えるはずです。会社も、求人広告の条件が労働契約の内容となるとの前提で、求人を出しているはずです。これらのことから、原則は求人内容がそのまま労働契約の内容となると考えるのが妥当です。


前出の事例のような場合も、求人広告に記載できなかった「時期により残業時間が変動する」ということも含めて、最終的に会社で働くことが決まった時点で、個別の労働条件にて「雇用契約書」を作成しておけば、採用直後のトラブルはおそらく防止できたでしょう。


●身元保証書を作成しておく。


身元保証書は大企業などでは採用時に必ず提出させる書類の1つです。社員が、故意または重大な過失によって使用者側に損害を与えた場合、身元保証人がその賠償の責任を負うという内容の保証書であり、保証契約です。身元保証書があれば、採用直後に社員が大事故を起こりたり、業務上横領をした場合など、保証人に損害賠償請求することができます。ただし、「身元保証に関する法律」で、不当に保証人の責任が加重されることは制限されています。たとえば、「一切の損害の賠償責任を負う」などのように無制限の責任を身元保証書に記載しても法的効果はありません。なお、保証期間は原則として3年です。自動更新は無効ですから継続する場合は再度契約し直すことになります。日頃から身元保証書のメンテナンスはきちんとしておかなければ役立たなくなります。また、本来の目的とは別な効力として、採用時にこの書類を提出させることにより、「保証人に迷惑は掛けられない、しっかりとこの会社で働こう。」といった、本人の気持ちを引き締める点でも効果があり、それを狙って提出させている会社も結構、多いようです。



●●数種類の「雇用契約書」や「身元保証書」の見本がありますので
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