従業員が退職すると、雇用保険の手続きをします。この手続きのことを「資格の喪失」と言います。西多事務所でも年間に430件ほどを処理しています。これは最も基本的な仕事ですから、いかにも簡単そうにみえます。ところが案外これが奥深いのです。そのため、ちょっとしたことで会社が損したり、あるいは従業員が損したりして、トラブルの元になっています。じつは、平成13年4月の雇用保険法改正により「特定受給資格者」という言葉ができました。これは、「退職にあたり特別な事情があるので、解雇と同じように手厚く失業給付を支給する人」のことです。これに該当すると、本人は3ヶ月の給付制限(お預け期間)を受けることなく受給できるようになります。そのことを意識しての発言も多く、実際の手続きの窓口である職安で担当者と話をしていると、まず9割の人が「一身上の都合」で辞めていても、「特別な事情があってやむを得ず退職した。」と言って何とか、特定受給資格者になろうと、主張するそうです。また、会社は特定受給資格者や解雇者を出すと、助成金をもらっている場合は、不支給や返還をさせられることがあります。そこで、今回は労使双方にメリットのある退職の方法を考えてみましょう。

 
【失業給付の貰える日数
              【一般の離職者】・・・自己都合退職者


10年未満

1020年未満

20年以上

65歳未満

90

120

150

【倒産・解雇などの離職者】・・・特定受給資格者

1年未満

15年未満

510年未満

1020年未満

20年以上

30歳未満

90

90

120

180

3035歳未満

90

90

180

210

240

3545歳未満

90

90

180

240

270

4560歳未満

90

180

240

270

330

6065歳未満

90

150

180

210

240


【得するケースその1(パートさんが退職する場合)
 
 多くのパートさんが、雇用期間を定めて雇用していると思います。会社側としては、辞めてもらう場合「労働契約の期間満了」ということで処理したいですが、勤続3年目以降に会社の都合で期間満了にて辞めてもらうケースは、雇用保険では何と、「解雇」扱いになります。本人はすぐ失業給付を受給可能で、解雇と同じ日数をもらえますが、これでは、会社が公的助成金を受給していると、受けられなくなる場合があります。
ところが、1回以上契約更新し、かつ雇用期間が3年以上のパートさんは、契約更新時に「本契約をもって最終契約とする。」の一筆が入っていると、「労働契約の期間満了」扱いになり、助成金には響きませんし、本人はすぐ失業給付を受給でき、解雇と同じ日数をもらえることになります。そうすれば、双方とも傷がつかずに不利益が起きません。

【得するケースその2】(中高齢者の従業員が退職する場合)

 一般的に50歳台の中高齢者は、まだまだ職場で活躍できる年齢ですが、近年のIT化などで劇的に仕事のやり方が変化すると、むしろ若手の方が業務能力が高かったり或いは、健康上の理由で今後、仕事を続けていくのが「この職場では難しい。」と感じている場合があります。そんな場合、通常ですと「一身上の都合」で退職することになりますがそうなると、このケースは給付制限がかかってしまいます。このような場合は、就業規則の定年条項に「勤続10年以上で満年齢が50歳以上の従業員が希望する場合は、定年退職に準ずるものとして取扱う」の一文があれば、「選択定年制度の利用をして退職」と処理でき、職安は失業給付に関しては、すぐに受給できるようにしてくれるのでメリットがあります。

【得するケースその3】(60歳台の従業員が退職する場合)
 
 平成10年4月までは、年金と失業給付が同時に受給可能(現在は不可)であり、定年を迎えると「10ヶ月間は、失業給付を30万円貰ってあと、年金も月20万円支給されるので、1ヶ月の収入が合計50万円・・・会社に勤めているより良いなあ〜。」などとおっしゃる人がいて、今から考えると夢のような時代がありました。じつは現在でも、年金と失業給付を同時にもらう方法があります。この年金と失業給付の調整は65歳までの年金について支給停止を限定したものであって、65歳以降の年金は従来どおりの取扱いになります。ですから、65歳を超えてから退職すれば、失業給付は一時金で50日分になりますが両方もらえます。更に得する方法としては、65歳の誕生日の前々日までに退職すると64歳で退職したことになるので場合によっては、給付制限なしで240日の失業給付が年金と一緒に受け取れる場合もあります。


【まとめ】

 会社と従業員の関係も随分異なってきました。極論ですが・・・・昔なら「長年お世話になった勤務先だから・・・。」と思う従業員が多かったと思います。しかし最近は逆に「長年働かされてきた会社」「不満があったから辞めてやった会社」という殺伐とした職業観を持つ向きが増えています。そして「わずかでも法違反があれば会社を訴えて、取れるものを取ってやれ!」という形でトラブルが発生するケースが非常に多いようですので今回のような、労使双方にダメージ無い方法を活用するのも効果的です。