残業手当不払いの事業主、逮捕 〜 サービス残業の慢性化に警鐘 〜
   

 最近、労働基準監督署は積極的にサービス残業の取締りを行っています。衝撃的なニュースとして、老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長が、約40人の職員の残業手当を支払わなかったとして、労働基準法違反(割増賃金の不払い)の疑いで逮捕されるケースも出ています。労働基準監督署の再三の指導(是正勧告)に従わず、タイムカードを改ざんしたり、虚偽の報告をしたりするなど悪質であったりすると労働基準監督署も逮捕に踏み切るケースがあります。不況が長期化し、人件費削減が進む中、いわゆる「サービス残業」もやむなしとする風潮、あるいは「多少の法律違反はどこの会社でもやっている」という事業主側の安易な考え方に警鐘を鳴らす結果となりました。
 そこでこのコーナーでは、割増賃金の基礎知識、間違いやすい点などについてお話します。


どんなとき割増賃金の支払いが必要? 計算方法は?


@ 時間外労働 ・・・ 法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて労働させたとき

A 休日労働 ・・・ 法定休日(毎週1日または4週につき4日の休日)に労働させたとき

B 深夜労働 ・・・ 深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させたとき

 割増賃金の1時間当たりの単価は、例えば月給制の場合なら次のような計算で求めます。

 
 基本給 + 諸手当                  時間外 1.25
   (※参照)          ×  (割増率)   休 日 1.35
 1ヶ月の所定労働時間                 深 夜 0.25


※ 以下の手当は、原則として計算の基礎から除外できます。逆にいうと、これら以外の手当はすべて含めて割増賃金の計算をしなくてはいけないということです。


家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金



割増賃金Q&A

@ 当社では、1日の所定労働時間が7.5時間で、週5日勤務です。ある週に30分間の残業が発生しました。残業手当はどうなりますか?

⇒ 1.25倍の時間外割増賃金の支払いが必要になるのは、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えたときです。このケースでは、法定労働時間を超えていないため、
1.25倍の割増賃金を支払う必要はなく、通常の賃金の0.5時間分を支払えば足りると考えられます。ただし、法定時間を超える分と超えない分を分けて計算するのは手間がかかるため、一律に1.25倍の時間外手当を支払っている事業所も多いです。



A 当社は1日の所定労働時間が8時間で、土曜と日曜が所定休日です。先日急ぎの仕事が入り、土曜日に出勤しました。(日曜は休みでした)休日割増賃金は必要?

⇒ 週1回の法定休日(この場合日曜日)が確保されているので、土曜日の出勤に対して1.35倍の休日割増賃金の支払いは不要です。では、通常の賃金の1日分を支払えばいいのでしょうか。答えはNOです。なぜなら、土曜日に働いたことにより、この週の労働時間が40時間を超えたからです。つまり、ややこしい話ですが、土曜日の出勤は、時間外労働となり、1.25倍の割増賃金を支払う必要があるのです。


B 毎月割増賃金の計算をするのが面倒です。定額制で支払ってはダメですか?

⇒ 定額で支払うこと自体は法律違反ではありません。ただし、実際の時間外労働等がその額の枠内におさまっていれば問題ないのですが、決められた額相当分以上の時間外労働等をさせた月は、不足分の割増賃金を支払わなければ違法となります。


C 当社は月末が忙しく、月末の1週間は毎日1時間程度の残業が必ず発生します。時間外手当の額がばかにならないのですが・・・。

⇒ 1ヶ月の間に繁閑の差がある事業所には「1ヶ月単位の変形労働時間制」をお勧めします。これは、1ヶ月を平均して1週40時間以内となっていれば、特定の日に8時間を超え、あるいは特定の週に40時間を超えて労働させることができる
という制度です。月の前半の所定労働時間を短くし、月末頃だけ9時間
労働にすることなどが可能です。あらかじめ9時間と定めた日は、
9時間働かせても、時間外労働とならないので、割増賃金は不要です。


D 残業手当を稼ぐため、用もないのに居残りをする人がいます。割増賃金が必要?

⇒ 裁判所の判断では「時間外手当は、管理者が時間外労働を命じた場合(黙示的に命令があったとみなされる場合を含む)で、かつ管理者の指揮命令下において、命じたとおりの時間外労働等を行ったときに支払われるべきもの」とされています。残業する際は、「残業申請書」等に仕事内容や必要時間を記入させ上司の承認・指示を得てからでないと認めないというのも、不要な居残りを防ぐ1つの方法です。