第二十二代目天皇雄略天皇の時代の事です。美濃国本巣郡に奇異な霊水が湧き出すという事が、天皇の耳に入りました。天皇はその存否を確めようと思って勅使を濃州に派遣されました。その使いが、泉の中をよく見てみると、水中より三尺あまりの大きな蟹が這い出てきました。
「これは珍しい蟹だ。天皇にお見せしよう」
と醒井まで持ち帰り、水を飲まそうとして、醒井の泉に放ったところ、たちまち石になってしまいました。この為、蟹石の名前が出たという事です。

蟹石に関して、これとは別の話も言い伝えられていますので、つづけて紹介しましょう。

昔、江戸より勉学の為、京都へ旅する一人の青年がおりました。
青年が旅の途中で醒井の地先で奇麗な湧水を見つけました。非常に喉が乾いていたのでその水を飲もうとして水中を見ますと蟹がいました。
その蟹が、
「お助け下さい。私は足を怪我しました。」
と言いました。青年は可哀相に思い、何か良い方法でもないかなぁと手拭いを取り出し、蟹を拭いたり、足をさすったりして、
「大切にしなさい」
と言って京の町へと出発しようとしました。すると蟹は、
「どうか石にかじりついても勉学にはげんで下さい。」
と言いました。旅の青年は、
「ありがとう。お前も大事にして良くなってくれ」
と言ってその場を立ち去りました。
その青年は一生懸命勉学にはげみました。
それから幾年か経って帰る途中、立ち寄った清水の所で蟹の化石を見て驚きました。
彼が京へ行く時に見た足を怪我した蟹が石になったものだと思い、この石を勉強の化石と呼んで江戸へ帰りましたという事です。