figure

叩きつけた剣
手に伝わる反動
宙を舞う体

いつもいつも
振り下ろす剣がわずかでもダメージを与えかければ
するりと逃げてしまうのに

女は衝撃をまともに浴びた

地へと倒れていく姿が
恐ろしいほどゆっくりと
時が歩みを緩めたように
目に映る

いつも高慢に
冷たく
あざけりを投げていた顔

いくばくかの驚きと
戸惑いと
苦しみを浮かべて
なかば閉ざされた目と
悲鳴を漏らす口元は
どこか幼くさえあり

あの女からは見たことがない

けれど

体が地に触れる寸前
すがるように投げられた視線は…

マホロ…



いや、違う

滑らかな頬も
深い彩りの瞳も
いくら砂に晒されても艶を失うことのなかった髪も
紅い唇も
細く長い手足も

なにもかも

目の前にあるけれど

それはマホロではない

マホロはもういない

この世から消したと女は言った


戦いが終わったら
たくさんの子どもたちに囲まれて暮らしたい、と
ささやくような声とともに寄せられたぬくもりも

そこにあって
そこにないもの

いない
マホロは

そこに
いるのに…?


手を伸ばしかけて
視界が揺れた

手に残る
感触

もっとも傷つけたくなかったもの
何より守りたかったものを
自分の手で傷つけた


守るために

傷つけた


author's note
ABARANGER