覚えているのは、差し出された手の大きさ。
体を包むぬくもり。
「お前の親を救えなくて…すまない」
顔を濡らす、熱い滴。
「私と共に来ることは、いやでも戦いに加わることだ」
くっきりと響く声。
「生まれたばかりのお前には、残酷だとわかっている。だが、ここに残っていても…死ぬしかない」
のぞき込む、黒い大きな目。
「…来てくれるか?」
悲鳴と、響きと、嫌な臭いと…
静けさと寒さの後にやってきた、あたたかさ。
こっくりうなずいて。
出てきたばっかりの卵の中にもう一度入った。
後は…ただ眠くて。何もわからなくて。
ああ、また。
感じる。
聞こえる。
大きな手のひら。
あたたかいぬくもり。
やさしい声。
きれいな音。
待って。
もうちょっとだけ待って。
もうじき、あったかいものでいっぱいになったら。
いっしょに行くから。
あなたといっしょに。