暴走

ここしばらく古巣に独り寝泊まりすることの多かった奴が、ゲームの仕掛け人の「イモウト」とともにあのにぎやかな巣に戻り…。
巣の主に声をかけられた奴の背が、かすかにこわばる。

奴ら二匹が向かったのは白い建物。
そこに、あの赤い龍との契約者が横たわっていた。
常に表情の移り変わる顔が、今は生気無くこわばっている。

そいつが深手を負っているなら、俺たちには好都合だろう。
「ライダー」と戦う手間が省ける。
ほんの少し、手を加えれば。

だが、たぶん…奴はそうはしないだろう。

事実、そのニンゲンを、痛みをこらえるような顔をして見ていただけ。

奴がやらないなら、俺がやろうか。
牙をひとひらめき。
それで終わる。

奴がどう思おうが。
俺は、
知らない。


ニンゲンどもが寝静まるころ、
俺は再び白い建物へと、飛ぶ。

あのニンゲンのいる場所へ向かうと。
突然赤い龍が、躍りかかってきた。

思わず飛び退くと、
龍はゆっくりと弧を描きながら、こちらをねめつける。

そういえば、
役立たずになった契約相手を、喰らいもせず。

低く漏れる唸り。

闇の中に爛々と光る目は、
《殺させはしない》
と告げていた。

馬鹿な。

そんな馬鹿げた話…。

ありえもしないはずの…。


今、
こちらを見る龍の目は
いっそ静かだった。


訳のわからない苛立ちが生まれる。

叫び声を上げ、俺は龍の横をすり抜けようとした。
が、龍の尾の端が俺を弾き飛ばす。

叩きつけられる俺の体。


なぜ
俺は
ここにいるのだろう…

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RYUKI