放棄

たたかいがやっとおわった。
ふわふわとちゅうにうくちからをおれのつばさはまっすぐめざす。
あついちからがからだじゅうにしみこんで、おれはほっといきをつく。
おなじようなことを、おれはなんどもしていたようなきがする。

おれはぼんやりと、ひかるかべのむこうをみる。
おれをよんでおれをたたかわせたにんげんが、すがたをかえてむこうにいる。
あれはだれだ。
なぜおれをあんなめでみた。
やつのせいでおれはくるしい。
やつがおれをにくむから、おれもやつをにくむ。
でもおれはやつのいうとおりにしなければならない。
なぜだかわからないが。



ああ、またやつがすがたをかえてこちらにくる。
おれはつばさをひろげる。

そのときめのまえににんげんがあらわれた。

おれは…

いやだ…

おれは…
このにんげんがいやだ…

「おわりだ」
にんげんはいった。
「けいやくはむこうだ。どこへなりといくがいい」

けいや…く?

「おまえ…」
にんげんはめをほそめた。
「かーどがあわなかったか。しょせんおまえにはにがおもすぎたな」

こいつのいうことはわからないが…
こいつをみているだけでわけもなくぞっとする。

にんげんがかおをゆがめてわらう。
「もう、たたかわなくていい」

…たたかわなくていいのか?
あのくろいにんげんによばれても。

きがつくとにんげんはきえていた。

もうたたかわなくていいのか。
いつのまにかくろいにんげんもいなくなっている。
こえもきこえない。

おれのめのはしを、あかいりゅうがほそいこえをあげながらとおりすぎていった。

おれはつばさをたたみ、めをつぶる。
いまはなにもかんがえたくない。
ただ…ねむりたい。

…ねむりたい…

author's note
RYUKI