奴が戦う相手を求めてよろめき歩く。
なにをトチ狂ったか、奴は仕掛け人に勝負を挑む。
そいつに関わるな、と俺の感覚すべてが告げているが、奴に伝わるはずもない。
奴がむやみに振り回す得物はただ空を切り、
逆に散々に打ち据えられる。
青と金の姿で突っ込んでみたが、金の羽根の存在が振るう一撃は
あっけなく俺の背から奴を弾き飛ばした。
ズキズキと痛む体を起こしてみれば、
地にのびた奴に、金色のやつが今まさに得物を振り下ろそうとしていた。
次の瞬間。
奴の得物が金色の体を貫く。
これで…
金色の存在が消えた…?
まさか…
俺の体を粟立たせる気配は、失せてないというのに。
だが、これで
奴は自分の手で「ライダー」を倒した。
奴の口から凄まじいわめき声が放たれる。
かつて、得物を振り下ろせなかった時よりも、さらに激しく。
己が刺し貫かれたような叫び。
手を差し上げ、わめき続ける奴の体が
ちりちりと滲みはじめる。
《馬鹿がっ》
俺は奴に飛びかかった。
ゴロゴロと転げた体を起こし、一瞬こちらに目を走らせて…
奴は「向こう側」にまろび出た。
死ぬのは奴の勝手だが、
体を塵にされたのでは、俺は喰らうことが出来ない。
痛みと眠気で沈み込みそうな体を引きずり、俺は奴を追う。
奴の手から無駄に血が流れ出る。
どうせなら、さっき、舐めておけばよかった。
小さな「通り道」越しに見える奴の目は
…何も映していないようだ。
あの蛇もどきが騒ぎを起こしている場所へ、
今にも倒れ込みそうになりながら向かう奴を
同じ巣に棲むニンゲンどもが抱き止める。
奴が、向きを変える。
着いたのは、白い建物。
あの雌が体を起こしていた。
己の血まみれの手を見つめた後、
奴が雌を掻き抱く。
奴の戦う理由。
愚かしく命を賭ける、訳。
たわけた望みが、成就してしまった。
こんな道筋があるなんて、俺は思いもしなかった。
もう、お前は…戦わないのか…