奴らが棲む巣を、俺は少し離れた建物の、通り道越しにぼんやりと見ていた。
たぶん、また、あの中で奴と龍との契約者は何か言い争っているんだろう。
ここしばらく、俺はもう奴を間近で眺めるのをやめていた。
いっとき「こちら側」にずいぶんと近づいていたけれど。
奴がもし、万が一、
首尾良く望みをかなえられたなら。
奴はまた弱く脆い、
力無いニンゲンに戻る。
少しでも「こちら側」の臭いを減らしておいたほうがいい。
呼べばこたえ、求めれば力を差し出そう。
けれど……。
突然、通り道がビィンと震える。
仕掛け人の声が響き渡る。
奴と龍との契約者が並んで飛び出す。
俺は「こちら側」から奴らを追う。
その、薄汚れた建物の中に、
三匹の「ライダー」となるニンゲンと、仕掛け人。
三匹がデッキを手にしたとき、
「イモウト」が飛び込んできた。
高い場所で。
「イモウト」がわめきちらし。
腕を広げる。
落ちれば、
もろいニンゲンは
砕ける。
翼がなければ。
砕ければ、何が起こる。
何が…。
何…。
ぞっと背を走るおぞけを振り払い、俺は奴を見た。
奴は「イモウト」だけを見ていた。
俺の翼のことは、奴の頭にはない。
仕掛け人は、翼あるものに「イモウト」を連れ去らせた。
何も起こらなかった。
龍との契約者が静かに語り、
奴がわめき。
別れ。
奴が白い建物に入るのを俺は遠くから眺めた。
建物から出てきて、
乗り物にまたがり、
奴は首を巡らせた。
通り道越しに奴は確かに俺の方を向き、
走り出した。
俺は翼を広げた。
あの忌々しい建物のそばで、
いつかの奴のように
赤い「ライダー」は金色の羽の存在に叩きのめされていた。
風巻くカードを使い、金色を交えた奴が割り込む。
二匹掛かりなら少しはましかもしれない。
もはや、ゲームがゲームとして成立しているのか、
俺にはわからない。
俺は、奴が必要なら、力を差し出すだけ。
必要…なら…。