夢想

爆風と
叫びと
動かなくなった体。

動かない、黒い体。

これは俺のものだ。

誰にも渡さない。


それを抱えて飛び去り、
翼が痛くなるまで飛んで、
ようやく降ろす。


足元にある、奴…だったもの。
俺は口を開く。
肉を噛み切ると、懐かしい血の匂いが流れ込んでくる。

こりこりと音を立てて
筋を噛み切り
骨を砕く。

ゆっくりと時間をかけて
はらわたも何も残さず平らげる。


奴はいなくなった。
俺の中に収まった。


俺は目を瞑る。
何ものにも縛られぬ眠り。





目を覚ます。

奴はいない。

空を翔ける。

奴は消えた。


ニンゲンを襲った。
まずくて一口も食えなかった。




眠る。

目覚める。

眠る。

目覚める。


何も見ない。
どこへも行かない。




飢えが俺を覆い尽くしている。










俺はゆっくりと目を開けた。
傷ついた翼を伸ばしてみる。
消耗した体でも、少しずつ火傷は癒えていくものらしい。

そういえば、これだけ深く眠ったのは久しぶりだ。

のろのろと体を動かし、「向こう側」を覗く。

奴は元の巣へ帰ったようだ。
少しは生気が戻ったようで、結構なことだ。

まあいい。
じきに戦いになれば、
いやでも俺のことを思い出す。

俺はもう一度目を瞑る。
戦う力を残すために。

author's note
RYUKI