再会

ニンゲンの考えることはわからない。 つがい相手が目覚めたというのに、奴はそのそばを離れ、「バイク」で走り回る。
「こちら側」から、奴の動きを追ううちに、こちらから向こうへ抜け出そうとしている連中をみつけた。
奴が…まだ「ライダー」を続ける気があるのなら、こいつらに気付けばきっとやってくる。
俺は奴のことをいったん放っておいて、蜂どもの様子を見ていた。
「向こう側」に抜けた蜂が標的に定めたとおぼしき相手は…
あの白い雌だ。
手足が萎え果てているはずなのに、どうやって白い箱から這い出てきたものか。
蜂が雌に飛びかかろうとした。
俺はとっさに弾き飛ばす。
白い雌が、俺のことを、恐れの目で見る。
そうだ、この俺が、かつて喰らいかけたのだ。
雌のこわばった顔がなんだか可笑しくて、俺はついそばに近づいた。
と、奴の制止の声が飛ぶ。
必死な顔をして、奴が俺に離れるよう命じる。
馬鹿なやつだ。
以前の、ふくふくと血肉の載ったうまそうだった頃ならともかく、屍同然で眠り続け、力も失せ、手足の萎えた雌など、喰う気が起きるものか。
騒ぐくらいなら、目を離さなければよいのだ。
ともあれ、奴に付き合って、「こちら側」に戻る。
そうだな、そろそろ腹ごしらえしても良い頃だ。
とりあえず奴が戦い続ける気なら
乗り物にだろうがなんだろうが、なってやる。





何を考えているのだか、相変わらず奴は雌を放りだしたままだ。
いきなり勤勉になるのは至極結構だが。
雑魚どもを倒し、力を喰らいながら、奴に目をやる。
肩で息をし、こわばった顔を崩さない奴。
まあ、いい。
また近いうちに「ライダー」とやりあうのなら、少しでも俺に力を蓄えさせておけ。


ようやく奴が白い建物に足を向ければ、またも白い雌の周りが騒がしい。
あの雌がまたしても、力無い屍のように横たわっている。
奴が雌を抱き上げる。
雌がかすかに顔を動かす。
今さら、どうするつもりか知らないが…
奴は雌を「バイク」に乗せ、走り出した。
俺は追わなかった。
奴が戦う羽目になり、力を使おうとすれば、いささか離れていたところで、いやでも俺に通じるのだから。

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RYUKI