障壁

霧雨の空を、2体の獣が飛び交い
俺と、相手にそれぞれ得物を降り落とす。
ずっしりと重い得物を構え、静かに息を吐く。
今から俺は、目の前の男を殺す。

薄膜の被ったような俺の人生の中で、
そこだけはっきりとした輪郭を持つ日々を取り戻すために。
俺は前へと進んできた。

俺は自分の生きている意味を失わないために、
人であることを失う道へ踏み込まなければならない。

目の前の馬鹿でお節介で、
まっすぐな男を殺すことができれば、俺は…
もう、進むしかない。

得物を何合も打ち合わせ。

俺は疾風のカードを取り出す。
片を…つける。

目の前の男が、一枚のカードを取り出す。

燃え上がる、炎。



互いに深く傷つけ合いながら、結局命の緒は繋がったまま
現実世界に転がり出る。

きつく目を瞑った俺の上に
羽ばたきの音と
鳴き声。

俺を不甲斐ないと、嗤っている。

奥歯を強く噛み締める。



笑う膝を叱咤して、歩き始める。

もう、相手は、誰でもよかった。

だが、誰も、どこにもいない。


目の前にあらわれた仕掛け人に、俺は戦いを挑んだ。
向こうは顔をいつものように歪めながら応じた。
最後の一人と戦うはずだった金の羽根のライダーに、俺は嬰児のようにあしらわれ…
叩きのめされ地に転がる俺に、金のライダーがとどめを刺そうとした瞬間
俺は力を振り絞って、得物を突き出した。

得物に、手に、体中に伝わる、異様な感触。

戦い続けろと嘲弄を含んだ声を残し、
金のライダーは消え去った。

俺は…
ついに越えた。

震える自分の手を見ながら
俺の口から絶叫がほとばしっていた。

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RYUKI