永遠に、交わることもないけれど
それ以上離れることもできない距離。

特に何か変わったことがあるわけでもない、

何度も繰り返されてきた日常のヒトコマにしか過ぎないってコトくらい言われるまでもなく解ってるんだけど。
それでも、ほんの少し彼と私の距離が縮まればいいのに、とか
少しくらい察してくれたって良さそうなものなのに、だとか。

そんな自分に都合のいいことばかり直ぐ考えてしまっては、なんてばかばかしいことを期待しているんだろうと自己嫌悪に陥ってしまう。

わたしって、自分で言うのもなんだけど、結構面食いだから。
ちょっとかっこいいかなぁ、なんて思う人を見ると割とすぐににっこりとしてしまうし、
そんな時に声を掛けられて、おいしいものおごってくれるなんて言われるとついつい付いていきそうになってしまう。
まだ本当に付いていったことはないけどね。

だって、それよりも早く後ろから声が掛けられて、振り向くとそれまでのぽやぽやっとした気持ちなんて全部どこか遠くへ飛んで行っちゃって、そのかわりに今度は耳の後ろの辺りがきゅーっとしてくるから。

どうせ他意なんてないんだろうって、解ってる。
ただ心配なだけなんだって、それが彼なんだって、でも
それよりも先にわたしは舞いあがってしまってなんだかすべてがどうでも良くなってきてしまうの。

そんな優しい声でわたしの名前を呼ばないでよ。
そんな優しい顔でわたしに微笑みかけないでよ。


そのたびにわたしってば図々しく駆けよってみたりして、それから思い出したように振りかえってはさっきすこし格好いいとか思ってしまった相手を見ては。ふふん、とか思ってしまうじゃないの。

自己満足ってやつなのかな。
でも、そのあとはやっぱり何かドラマテックな展開が待っているわけもなく、拍子抜けするくらいにどこまでも呑気な台詞吐いてみたりして、やっぱりわたしはちょっとだけ悲しくなってしまう。

つまんない…なんて思うわけないじゃない、だって大好きなんだもの。
もう、ほかの人がなんて言おうと思おうと、大好きなんだわ、わたし。
独りで勝手に盛り上がって、一喜一憂してるだけで、あなたは昔から何一つ変わっていないとしても。

可愛らしさには結構自信があるの。
昔から可愛い、可愛いってみんなが言ってくれたし、白い肌も、細い指先も、淡く揺れる銀髪もおおきな瞳も結構自慢。
けれど、わたしのかわいさなんて結局はなんの役にも立たないのよ。
大好きな人の好みのタイプじゃなきゃ意味無いじゃない。
わたしはアノヒトみたいにはなれないから。

まあ、わたしには及ばないにしても可愛い女の子と一緒にいるところを見かけることはそれほど少なくない。
いつも、とびっきり優しいくせに、こんな時彼は本当に素っ気ないと思う。
だれかさんみたいにナンパに出かけろ、とまでは言わないけれども
少しは女の子の気持ちって物を考えてくれてもいいのに、
わたし程じゃなくても可愛い女の子が一生懸命気を引こうとしてるのに、何一つ通じないんだから、審美眼がどうのこうのとかいう問題よりも、もしかしたら何も見えていないんじゃないかって腹がたってきてしまう。
なのに、文句のひとつでも付けてやろうと思っても、近づいたらもうおしまい。
反対にわたしのほうこそふぬけなんだわと実感してしまう。
優しいだけじゃ満足できないのに、それでも優しいあなたが大好きなの、そして大嫌いよ。

一体今までに何人の女の子達が私と同じ様な気持ちを味わってきたんだろう。
すぐそこに、届くような距離にいても、決して届かないもどかしさに苦しくて。

わたしが強盗だったら良かったのに、
すべてを奪って、壊して、逃げてしまえたらいいのに。
いつか失ってしまうくらいなら、潔く捨ててしまえばいいのに。

わたしはただのコドモで…ワガママなオンナノコだから
こうしてあなたを直ぐ目の前にしたって、何にも出来なくて、またつまらないワガママばかり言い出しては困らせてしまうんだ。
そんなことばっかりだから、コドモ扱いされるのも仕方ないって思うけど
でも、そんなことでしかあなたを困らせられない気持ち、誰か判ってくれるのかな。
あなたは気が付いてくれるのかな。

ワガママだって、なんだっていいのよ、あなたが私を見てくれるなら。
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、こっちをもっと向いてよ
そして私だけを見てて?
心配したよっていって?
幸せだよって笑って?
それからずっと抱きしめて?

そこにあるのが、私の本当に欲しい物じゃなくても。それくらい我慢するから。
だからもうちょっとだけ側にいさせて。

もう…すこしだけ…