先日、と言ってももうずいぶん日が経ちましたが、私が神戸でいい思いをしている頃(前回の自慢
話参照)、東京ではモノポリーの会長杯が行われ、女子高校生の方が優勝されました。しかも3ゲーム
すべてモノポリー勝ちだったそうで、すごい、と言うかうらやましい限りです。どうすればそんなに
モノポリー勝ちができるのか教えて頂きたいです(大会でモノポリー勝ちした事がないもので…)。
ともあれ、全国大会ではベテランプレイヤー達の「悪魔の交渉」に負けず頑張って下さい。
今回のテーマはダークブルー。
前回も述べましたがダークブルーの定価はパークプレースが$350、ボードウォークが$400、
家の建設費が1軒あたり$200と高額です。チャンスカードには通称「乳母車」と呼ばれる「ボード
ウォークへ進む」があります。(島ノ関ではカードめくって「乳母車」とさけぶのはできるかぎり控えて
ほしいですが(笑))
ダークブルーは比較的初心者の方に人気があります(アンケートを取った訳ではありませんが…)。
その理由としてレンタル料の高さが挙げられます。これも前回述べましたが、家が3軒建っている時の
レンタル料はパークプレースが$1100、ボードウォークが$1400です。どちらの土地でも3軒
以上建っている時に止まったプレイヤーのダメージは大きく、一気に破産してしまう事さえあります。
また、土地が2ヶ所なので揃えやすく、確かに複雑な交渉が苦手な初心者向きのカラーグループでは
あります。
しかし、ダークブルーってそんなに「いいカラーグループ」なのでしょうか?
まず第一に、土地が2ヶ所しかないので止まる確率が低くなります。2個のダイスを一振りした時、
一番出やすい数字は7ですが、パークプレースの7マス手前が「Go to jail」になっている
為、「お客さん」をさらわれる事が多く、ここは止まる確率が落ちます。もちろん、ボードウォークも
「Go to jail」の影響を多少受けております。土地が2ヶ所しかないのに、ゲーム終盤まで
どちらかの土地が売れ残るケースも多く、せっかく高い代金を支払って購入したダークブルーが活用
されないまま終了する事もあります。中盤以降に1枚売れ残っているダークブルーを買うときは注意
しましょう(「経営」から話がそれますが)。
また、ダークブルーはGoのマスから一番遠い場所にあり、ボードを約1周しないとたどり着きま
せん。ゲーム中、プレイヤーが強制収容されやすい刑務所からでも27、29マス先と決して近くあり
ません。「信頼の(?)イエロー」でも申しましたが、「遠い」という事はお客さんが来るまでに時間
がかかる事も意味しており、中盤以降、他のカラーグループとのレンタル料の奪い合いだと、ダーク
ブルーの経営者の方が先に出費してしまう事が多いのです。
「ボードウォークへ進む」は頼みの綱ですが、たかだか16枚あるチャンスカードの1枚でしかなく、
「確率の低さ」や「遠さ」のハンデを埋めるほどではありません。それに、家がたくさん建つ前にこの
カードを引かれてしまうとダークブルーの価値を下げてしまいます。
止まる確率が低い代わりにレンタル料は高いのですが、逆にそれが他のプレイヤーの危機感を煽って
しまうという意味もあります。プレイヤーが1周する間にダークブルーに止まる確率は約27〜28%、
つまり、約4周に1回ぐらいしか止まらないので「(家が建っている)ダークブルーに止まるのは事故
のようなもので仕方がない」などと言われています。しかし、下手すれば破産してしまうような「恐怖
スポット」をボード上にずっと残しておくのは精神衛生上よろしくありません。そんな訳でダークブルー
の経営者を狙い打ちにする為に、他のプレイヤー達が協力し、3人に分散しているカラーグループでも
無理矢理揃えられてしまう事があります。ダークブルーの建設費は1軒あたり$200なので、5、6
軒建てた経営者はさほど手持ち現金は残らない…はずです。$1100や$1400の収入があれば
まだいいのですが、もし、誰も止まってくれなかった時は、数百ドルの支払いで家が2〜3軒崩れる
など厳しい未来が待っています。
そんな事もあって、中・上級者は、好条件でない限りダークブルーを経営しようとせず、人に押し
付け…、もとい、経営させる事が多いです。だまされやすい…、もとい、物わかりの良い初心者が交渉
相手ならなおさらです。
もちろん、ダークブルーで圧勝する事もあります。ダークブルーで「高額レンタル料をもらう快感」
や「上級者を負かす快感」を一度でも味わうとそれが忘れられず、経営を持ちかけられるとつい喜んで
応じてしまいがちです。しかし、今申しましたようにダークブルーの経営はそんなに甘くはありません。
それに、上記の「快感」は他のカラーグループでも味わえる…はずです。
ダークブルーは1軒あたりの建設費が$200なので「金持ちが経営するカラーグループ」と誤解
されるかも知れませんが、止まる確率が低く、当たり外れの大きいダークブルーを金持ちが経営する
のはどうかと思います(「絶対ダメ」とは言いませんが…)。金持ちならオレンジ、レッド、イエロー
あたりの経営を目指しましょう。
えっ? それでも「ダークブルーを経営したい」ですって?…しょうがないですねえ。それでは。
どのカラーグループにおいても、「揃えた時に何軒建つか」が重要となります。建つ軒数が多すぎ
たり少なすぎたりするとゲームのバランスを崩します。特にダークブルーの場合、権利書の定価や家の
建設費、レンタル料の高さにだまされて「相場」より少ない軒数で経営させられる事があります。
そんな「被害」を未然に防ぐ為、ここに「目安」を示しておきます(逆にこのコラムが「妙な価値観」
を教えているかも…)。
■ ダークブルーを揃えたらこれぐらいは建てたい! ■
序盤(権利書が多く売れ残っている頃)…3軒以上
中盤(権利書がほぼ売り切れ、カラーグループに家が建ち始める頃)…4軒以上
終盤(各カラーグループにたくさん家が建ち、高額レンタル料の奪い合いになる頃)…5軒以上
強豪の皆様、だいたいこんな感じでよろしいでしょうか?
この「3軒以上」などという数字は「$600以上の建設資金を残している」という意味で、「絶対
3軒以上建てなくてはいけない」という意味ではありませんので誤解なさらぬよう。また、揃える時に
放出する現金や物件、各プレイヤーの駒位置などによっても軒数が異なります。序盤に$580ぐらい
しか残らなくても揃えたり、終盤に4軒しか建たなくても勝負に出るようなケースだってあるので、
上記の「目安」は鵜呑みにしないで下さい。
ダークブルーの経営は、はっきりいって大バクチで「ホームランか三振」の世界です。しかもホーム
ランを打っても($1100や$1400のレンタル料収入があっても)止まる確率が低い為、「次の
お客さん」がなかなか来てくれず、その間に他のカラーグループが成長してくるので簡単には勝てません。
(例題)
Aさんはダークブルーを経営し、家を5軒(パークプレース2軒、ボードウォーク3軒)建てていま
した。ここで、オレンジに家を7軒建てていたBさんはボードウォークに止まり、誰からも救済されず
破産しました。Aさんは、Bさんの持っていたオレンジ3枚と現金$350(オレンジ7軒の売却分)
を手に入れました。ちなみに他のプレイヤーの駒位置は、次の振り番のCさんがセントチャールズプレ
ース、その次のDさんが刑務所見学、最後のEさんがショートライン鉄道です。面倒くさいので…、
もとい、出題の都合上、Aさんの所持金は、今入ったばかりの$350のみ、オレンジとダークブルー
以外は物件を持っていないという事にしておきます。
Aさんはこの局面でどうすればよいでしょうか?
@「ちぇっ、$1400が欲しかったのに入ってきたのはオレンジとたったの$350か」と舌打ち
する。
ACさんとDさんがオレンジの「お客さん」だが、所持金は$350しかないのでその内の$300
を使ってとりあえずオレンジに1軒ずつ、計3軒家を建てる。
B「3軒目の家を建てる事が重要」と誰かが言っていた事を思い出し、$200を使ってパークプレ
ースに3軒目の家を建てる。
C「確かに現金は$350だけど、オレンジを全部抵当に入れた$280と合わせれば$630に
なる」と気付き、その内の$600でダークブルーを3軒増築する。
Dダークブルーの家5軒すべてを売却し、さらにパークプレース、ボードウォーク共に抵当に入れた
$875と所持金$350を合計すれば最大で$1225になるので、オレンジに転換し、状況に
よって家を9〜12軒建てる。
まず@ですが、気持ちはわからなくないものの、せっかくのチャンスを逃してしまいます。もう一度
冷静になって「今、何かできないか?」を考えましょう。
Aは「オレンジにお客さんがいる」という事に着眼したまでは良かったのですが、オレンジに家1軒
ずつではレンタル料は$70や$80にしかなりません。「少しでも他のプレイヤーの現金を減らして
おく事が大事」といっても中途半端です。
BとCは方向違いで筋が悪いと思います。CさんやDさんがダークブルーにたどり着くには時間が
かかりますし、「ささやかなお客さん」のEさんにしても2や4の目を出してダークブルーに止まる
よりも、半周後にオレンジに止まる可能性の方が高いぐらいです。
そんな訳でDが正解、…でいい…と思います。ダークブルーはどちらの土地に3軒以上建っていても
レンタル料が$1000以上になるのに対し、オレンジに最大12軒建ててもレンタル料は$750、
もしくは$800と下回るので転換には違和感があるかも知れません。しかし、いつお客さんが来るか
わからないダークブルーより、今、お客さんがいるオレンジの方が大事という事です。ちなみに期待値
ではオレンジ12軒が約$390、ダークブルー6軒なら$約350となっております。さらに蛇足で、
こんな事書かなくてもわかるとは思いますが、もし、Eさんの方がCさんよりも振り番が先の時は、
ダークブルーに止まる可能性が少しあるので、Eさんの手番を見届けてからオレンジへ転換する事に
なります。
モノポリーに「絶対」という言葉は絶対になく、各プレイヤーの所持金や経営状況などによってA〜
Cが正解のケースもありますが、「こういった転換もある」と記憶の片隅にとどめて頂ければ幸いです。
また、上記の例題とは異なりますが、ダークブルーで$1100や$1400の高額レンタル料を
得た時は、鉄道やライトブルーの時同様、止まる確率の高い有力色への転換も視野に入れておきましょう。
あとは、ダークブルーの特徴などをあれこれと。
○少ない軒数で高額レンタル料になる
前述のようにダークブルーはどちらの土地に3軒以上建っていてもレンタル料が$1000以上に
なります。銀行にあまり家が残っておらず、オレンジ、レッド、イエローあたりが正常に機能しない
ような時でも、最低5軒建てば何とかなるダークブルーなら奇跡が起きる…かも知れません。
また、ダークブルーに3軒(例えばパークプレース1軒、ボードウォーク2軒)しか建ってない時でも、
ボードウォークに誰かが止まれば、そのレンタル料の$600で最大3軒増築できるので、いずれの
土地も3軒ずつにできます。そうなれば勝負の行方はどうなるかわかりません。ダークブルーは少ない
軒数しか家が建ってなくても大逆転が有り得るのです。
これも蛇足ですが、ボードウォーク3軒のレンタル料$1400はグリーンのペンシルバニア通りが
ホテルになっている時と同額です。後者は$2600〜$3000の建設費を要するのに対し、ダーク
ブルーなら$1000〜$1200の建設費で済みます(まあ、グリーンをホテルにする事はめったに
ありませんが)。そういう意味でもダークブルーは一発逆転の可能性を秘めていると言えます。
○殴り合いになればパークプレースの4軒目が必須
終盤、ダークブルーの経営者と他のカラーグループの経営者が高額レンタル料の奪い合いとなった
場合、ダークブルーは止まる確率が低い為、パークプレース3軒のレンタル料$1100では力不足と
いう事も多々あります。その場合、最低でもパークプレースは4軒目を建ててレンタル料を$1300
にしておきたいところです(パークプレースの4軒がボードウォークの3軒よりもレンタル料が安いの
が泣けますが)。たった$200の差とは言え、自分と相手の収支の差は$400なので、終盤戦では
大違い…のはずです。
○何度もしつこいけど破産させやすい
例えば、イエローに9軒建てているプレイヤーが家をすべて売却し、権利書をすべて抵当に入れた
場合、$675+$400(前回の「数字」をご参照下さい)=$1075となります。これは、3軒の
パークプレースやボードウォークで破産する可能性がある事を意味しております(このぐらいの破産なら
救済されるでしょうけど)。
ともかく、ダークブルーはレンタル料が高額で、カラーグループの経営者でさえ一気に破産させる
力を持っており、労せずして追加経営ができる事もあるのです。もし、そうなれば先ほど触れたような
転換の必要がなくなります。このあたりが絶対に転換が必要な鉄道やライトブルーとの大きな違いと
言えます。
本来ならダークブルーのテーマは竜市師範が書く予定だったのですが、いつの間にか経営を、もとい、
執筆を押しつけられました。氏ならもう少しましな事を書いたのではないかという心残りもありますが、
今回もとりあえず行数だけは埋めました。
確かに$1100や$1400のレンタル料をもらうのは快感ですが、ダークブルーで勝っても充実
感に乏しいせいか、あまり玄人受けするカラーグループではありません。初心者の頃はダークブルーが
好きだったけれど、少し強くなるとダークブルーが嫌いになる人もいます。
しかし、本心はどうでしょうか?
「ダークブルーの好きな人は初心者」と思われたくないから「ダークブルーが嫌い」などと言ったり
してませんか? そんなに強がらなくても上級者でもダークブルーが好きな方だっています(「具体名を
挙げろ」と言われても困るのですが)。
それに「ダークブルーの経営はバクチ」と言いますが、どのカラーグループを経営するにしても
リスクを伴うので結局「バクチ」なのです。ダークブルーもその中の1つ、というだけです。バクチと
いっても、そこらへんの公営ギャンブルよりは勝つ確率が高い…はずです。隠れダークブルーファンの
皆様、これからは胸を張って「ダークブルーが大好き!」と言いましょう。
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