先日行われた日本選手権の全国大会は、九州からご夫婦で出場された篠塚さんのご主人が優勝され
ました。おめでとうございます。ちなみに、我が島ノ関からは今井さんが4年連続出場!という事で
大いに期待しておりましたが残念な結果に終わりました。今回は優勝候補と思われた方々が軒並み
決勝卓に残れず波乱含みの大会となりました。超の付く強豪でも順当勝ちできないモノポリーって
オリンピックよりも厳しいのかなあ…。
「全力経営と余力経営」の続き
ごぶさたしておりますが、まずは前回の続きから。
全力で経営するか余力を残して経営するかは個人の自由で、あれこれ言う事はできません。何が幸い
し何が災いするかわからないのがモノポリーですから。
1つの目安として、
「序盤〜中盤は余力経営、終盤は全力経営」
「形勢が有利な時は余力経営、不利な時は全力経営」
「お客さんが少ない時は余力経営、多い時は全力経営」
と覚えておくと良いでしょう(あくまでも「目安」ですから)。補足しておきますと、あまり早い時期
に全力経営すると狙い打ちにされますが、お互いに余裕のない終盤は悠長な事を言ってられません。
また、有利な時にあまり無理をする必要はありませんが、不利な時は少しでもプレッシャーをかけなく
てはいけません。そして、お客さんが多ければ「誰か一人止まれば勝ち(優勢)」という事もあるので
思い切ってもいい…かもしれません。
(例題3)
Fさんはオレンジに家を7軒(セントジェームスプレース、テネシー通り各2軒、ニューヨーク通り
3軒)建てていました。次の振り番はダークブルーに家を6軒建てているGさんですが(前回からの続き
で登場人物が多くなって申し訳ありません)、刑務所入り後3回目の振り番なので出所しなくてはなりま
せん。対してFさんの駒位置はグリーンのパシフィック通りで、次に6か8の目を出せばダークブルー
に止まってしまいます。両者の所持金はいずれも$200で、Gさんは釈放券を持っています。
両者とも経営しているカラーグループ以外の権利書は持っておらず、他にカラーグループを経営して
いるプレイヤーはいない事にしておきます(安易な設定だ…)。さて、ここでFさんはどうするのが良い
でしょうか?
@ 手持ちの$200でセントジェームスプレースとテネシー通りに1軒ずつ増築する。
A $200使ってしまうと、Gさんがオレンジに止まらず、逆に自分が7を出した時に物品税の
$75が支払えず家を2軒売却する事になるので、どちらかの土地に1軒だけ建て、$100は
残しておく。
B $200をそのまま残しておき、何もしない。
まずBですが、現在の振り番はオレンジのお客さんのGさんです。仮に何もしなかった場合、Gさん
が6や8の目を出してセントジェームスプレースかテネシー通りに止まっても、レンタル料は$200
なので、ちょうど支払えます。しかも釈放券を持っているので、出所料の$50を銀行に支払う必要も
なく、ダークブルーの6軒の家は残ったままFさんの振り番となります。Gさんが9を出してくれれば
問題ないのですが…。
Aにしても、もしGさんが増築しなかった方の土地に止まってしまった場合はBと同じことになり、
中途半端な家の建て方を悔やむ事になりそうです。
まあ、そんな訳で、@が正解…でいい…ですよね?
Aの心配は確かにありますが、仮にその通りになったとしてもオレンジに家が7軒残りますし、直後
にGoマスを通過できるので、無事に給料を手にすれば再び9軒に復活できます。ダークブルーに止ま
る事を思えば、物品税で家を2軒売却するぐらいは軽傷です。3軒ずつ建っているダークブルーに止ま
れば、レンタル料は$1100と$1400なので、計算は省略しますが$200ぐらい残していても
破産(仮破産)してしまいます。「どうせダークブルーに止まれば終わり」なのですから、ここは全力で
家を建てるべきでしょう。そうする事によって、セントジェームスプレース、テネシー通りのレンタル
料は$550となり、Gさんはオレンジのいずれの土地に止まっても手持ち現金で支払えず、ダーク
ブルーの家を4軒売却しなくてはなりません。恐怖のダークブルーも家が1軒ずつになってしまえば
レンタル料も$175と$200なので連泊してもお釣りが出ます。
ともかく、Bの時には36分の4(=9が出る確率)でしかなかった「期待」が、Aなら36分の9、
@を実行すれば36分の14(=一投で6、8、9が出る確率)と4割近くに上昇します。Gさんから
しても「止まってはいけない場所」は1ヶ所のままより3ヶ所に増える方が嫌なはずです。ただし、
Gさんが刑務所入り後1、2回目の振り番の時は@〜Bのいずれも十分に考えられます。それでも3や
4のゾロ目で出所する可能性がある以上、やはり@が正解かと思いますが。
このケースのように、自分の目の前に「支払えそうもない支払い(変な日本語だ)」が待ち受けている
時は開き直って全力勝負をしましょう。
「『3軒目の家』が重要」
話が前後するようで申し訳ありません。以前「覚えておくとよい(かもしれない)数字」で申しまし
たように、1つの土地に家が2軒建っているのと3軒建っているのとではレンタル料が大きく異なり
ます。金額の詳細はそちらをご覧頂くとして、例えば、イエローのアトランティック通りの場合、家が
2軒の時のレンタル料は$330ですが、3軒だと$800となります。他のカラーグループにおいて
も、2軒→3軒の時がレンタル料の上昇率が最も高くなります。ですから、カラーグループを揃えたら
「3軒目の家」を建てる事がまず重要となります。とは言っても序盤〜中盤早々にアマサイドのカラー
グループ(オレンジ、レッド、イエロー、グリーン)にいきなり3軒目の家(計7軒以上)は簡単に
建てさせてもらえません。なぜなら、他のプレイヤーの反撃態勢が整わない内に高額レンタル量のやり
取りがあれば、ゲームが一方的になってしまうからです。苦労の末(?)「3軒目の家」を建てたら
建てたで目立ってしまい、他のプレイヤーの標的にされやすくなります。
そして、家が3軒建っている土地で1度や2度のレンタル料収入があったからといって、それで勝て
るほど甘くはありません。確かにオレンジ以降のカラーグループに3軒建っている時のレンタル料は
高額ですが、止まる確率はどのカラーグループも約45%〜50%、つまり、2周に1回ぐらいしか
止まりません。2周するという事は給料を2回、計$400もらっている事になり、$600前後の
レンタル料を支払っても意外とダメージが小さいのです。「3軒目の家が重要」と言っても、「いつ
までも3軒のままでいい」という意味ではありません。機を見て3軒→4軒→ホテル、と増築するか、
もしくは他のカラーグループを追加経営しなくては勝ちきれません。
あと、家を増築するタイミングとしては、これまでも多少述べていますが、
○トップ争いをしているプレイヤーがお客さんの時
○他のプレイヤーよりレンタル料、収益力で劣り、このまま周回を重ねては勝てそうもない時
○現在のレンタル料では相手に与えるダメージが少ないが、増築すれば何らかのダメージがある時
などが挙げられます。
モノポリーは1ゲーム中に5〜7周ぐらいボード上を周回しますが、3周目あたりに家が建つ頃だと
考えれば、チャンスは意外と少ないものです。どんな展開であっても必ずどこかで勝負しなくてはいけ
ません。お客さんが来る、来ないはダイス運次第ですが、増築できる(すべき)場面で増築せず、レン
タル料を取り損なう事のないようにしましょう。
また、蛇足ですが、「3軒、3軒、2軒」とか「4軒、3軒、4軒」のような家の建て方をしている
場合、余裕がある時はすべて同じ軒数にして収益力を均等化しておきましょう。特に後者は4軒オール
だと勘違いして家を建て忘れる事もあるので注意が必要です。
☆ 家を止める
「『家止め』とは?」
ここからは、モノポリーの高等戦術の一つである「家止め」について話を進めていきたいと思います。
モノポリーでは銀行に32軒の家と12軒のホテルがあります。これより多かったり少なかったり
する場合がたまにあるので、ゲーム開始前には必ず、家とホテルの総数が合っているか確認しておきま
しょう。
家にしてもホテルにしても、これらの軒数が売り切れてしまうと、いくら家(ホテル)を建てたく
ても建てられません。例えば、オレンジに家を9軒建てているプレイヤーが家を購入しようとしても、
銀行に家が残っていなくては何もできません。だからと言って「ホテルは売れ残っているから、手持ち
の$600でホテルを3軒下さい」という事もできません。確かにホテルは「家5軒」と同じ意味なの
ですが、「ホテルにするには、そのカラーグループのすべての土地に家が4軒ずつ建ってなくてはなら
ない」のです。ダークパープル、ダークブルーなら計8軒、その他のカラーグループなら計12軒の家
が建っていて初めてホテルを建てる事ができるのです。よく、「銀行に$750を支払っていきなり
ライトブルーにホテルを3軒建てる」などといった光景を見かけると思います。銀行に家が12軒以上
残っている時は手続きを簡略化する意味でこういった事が行われていますが、厳密に言えば「まず、
銀行に$600を支払って家を12軒建ててから、あらためて銀行に$150を支払ってホテルを3軒
購入する」というのが正しい手順です。ちなみに、先ほどのケースでも、銀行に家が3軒以上残って
いれば、オレンジにホテルを建てる事が可能となります。
このルールを利用し、銀行に残っている家を買い占め、他のプレイヤーに(たくさん)家を建てさせ
ない事を「家止め(家を止める)」と言います。
なぜ「家を止める」のか?
ダークパープルやライトブルーのような「弱いカラーグループ」にホテルが建っていても、オレンジ
などの強力なカラーグループに家がたくさん建つような展開になると、収益力が違いすぎてとても勝て
ません。
そこで、弱いカラーグループはあえてホテルにせず、家を4軒オールにとどめておくという方法が
あります。
銀行には32軒の家があり、ダークパープルで最大8軒、ライトブルーで最大12軒しか建たない
ので、一見するととても家が止まりそうには思えません。しかし、残りの3〜4人のプレイヤーで銀行
に残っている家を分け合う(奪い合う)事になるので、意外と家が建たないのです。たとえ「最強」と
言われるオレンジでも、家が5〜6軒ぐらいしか建たなければ、ライトブルー12軒や鉄道4枚よりも
収益力で下回ります。このように、ダークパープルを8軒、ライトブルーを12軒にする事によって、
他のカラーグループにたくさん家が建つ展開を阻止し、息の長い戦いにする、という狙いがあります。
確かに、ダークパープルやライトブルーは弱いカラーグループですが、家の建設費は1軒あたり$50
と安く、少ない資金でたくさんの家を押さえられるという「強み」もあるのです。また、以前にも述べ
ましたが、この2色の場合、建っているホテルを売却し、家を4軒オールにする事もあります。例えば、
ダークパープルならホテルから家8軒にするのですが、注意して頂きたいのは、「ホテルが2軒、すな
わち10軒建っているダークパープルの家を2軒売却したから銀行から$50受け取れる」という訳
ではありません。手持ち現金で支払えない負債が生じた時以外のケース、つまり自分の意思でホテルを
売却する場合は、一旦は更地(家やホテルが建ってない状態)にしなくてはなりません。この場合なら、
「まず、ダークパープルのホテルを売却して銀行から$250受け取り、$400を支払って家を建て
直す」という事で差し引きすれば逆に銀行に$150支払わなくてはいけません(この説明をするのは
3回目ですが念には念を入れておきます)。$150を支払った上に収益力を下げてしまいますが、
それで家が止まる(少なくなる)なら安いものです。これを怠ったせいで強力なカラーグループに家が
たくさん建ってしまった、という事はよくあります。高額出費をしてから「あの時、家を止めておけば
良かった…」と悔やんでも遅いのです。
「家止めをした方が良さそうな状況」として、
○弱いカラーグループを経営しているが、すぐに次のステップ(追加経営や強力なカラーグループ
への経営転換)に進めそうにない時
○他のプレイヤー同士の交渉で、2〜3のカラーグループが一気に揃いそうな時
など、「早い(激しい)展開になると取り残される恐れがある時」が挙げられます。
基本的に、家は3軒→4軒→ホテルと増築する方がまさります。レンタル料が増えるので当たり前と
言えば当たり前ですが。しかし、ダークパープルやライトブルーの場合、中盤以降は「家4軒>ホテル」
という事も少なくありません。特にダークパープルによる家止めはうっかりしやすいので注意が必要
です。家は増築するばかりが能ではありません。
…などと言ったものの、弱いカラーグループがいつまでも家止めをしたままではとても勝てません。
また、共同基金で修理費のカードを引いた場合、家1軒あたり$40、ホテル1軒あたり$115を
支払わなくてはならないので、全部ホテルの時よりも4軒オールの方が出費が多くなるという弊害も
あります。あと、4人以下の少人数ゲームでは家が売り切れる事が少ないので、ライトブルーはホテル
にした方が良いケースが多いです。いずれにしても、どこかで家止めを解消する事になりますが、その
タイミングは家止めをするタイミング以上に難しいかもしれません。下手をすると他のカラーグループ
に一気に家が建ってしまい、「今までよくも家を止めてくれたな〜!!」という怒りの反撃を浴びて
しまいます。
そして、このコラムは初級者の方を対象としている…つもりです。そんな方々に「家を止める」だと
か、「ホテルを売却して家を建て直す」などというひねくれた技を積極的におすすめするつもりはあり
ません。自分の好きなように家やホテルを建て、少しでも高額のレンタル料を取る方が楽しいですから。
まあ、記憶の片すみにとどめて頂く程度で良いと思います。
しかし、次回も「家止め」関連の話題(?)を続行します。ご了承下さい。(また続く)
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