( 京都 心療内科 たかはしクリニック )
仮面うつ病 とは?
(身体表現性うつ病)



病名
「身体表現性うつ病」は私の造語です。
正式名は、仮面うつ病(masked depression)です。この「仮面うつ病」という言葉には、何か「作為的な病」という誤解されやすいニュアンスがあるように感じられます。身体表現性という名前の方が実状を率直に反映していると考え、敢えてこのような名前を追記しています。


症状
 さて、その仮面うつ病(身体表現性うつ病)とは、
身体症状という仮面をかぶったうつ病の総称です。頭重感、胃部不快感、頻尿、便通異常、肩こり、めまい、身体がだるい、性欲や食欲の減退などの身体症状が訴えの中心で、多彩な身体症状がいくつも併存してみられやすい。そして、その背後で心理的なうつ状態やうつ病が手綱を引いているという病状です。うつ病の不眠の特徴は、どちらかというと、寝つけない(入眠困難)よりも、途中で目が覚めたり(途中覚醒)、早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)事が多く見られます。入眠困難は、うつ病よりも神経症(ノイローゼ)の人に多いとされます。

受診科
精神症状(意欲低下、悲哀感、自責感、抑鬱気分など)が前景に出ているうつ病は、自他ともにうつ病の判定が比較的容易です。しかし仮面うつ病は、身体症状が前景に出るために、内科や耳鼻科や眼科などを受診されてしまう事が殆どです。そして不幸なことに、それらの身体科で原因不明のまま延々と治療を行っているケースが非常に多いようです。
各診療科の医師は困り果て、症状に対して気まぐれな病名を付し、患者さんが余計に混乱するという医原性負荷状況まで作られている場合が少なからずあります このような事態が生じる原因のひとつとして、医療心理学を軽視した大学医学部でのこれまでの教育のあり方も批判されるべきでしょう。

注意深い
面接で

  しかし仮面うつ病の人達の精神面や気分について、注意深く問診をしていくと、背後に心理的課題を抱えており、うつ病の特徴的な心理状況が聴取できるのです。

病前性格は?   
 几帳面、義理堅い、生真面目、根性主義、強い責任感、凝り性、完璧癖、それらが
うつ病に陥りやすい病前性格です。どうも、チャランポランで風来坊的な人は、うつ病という病気に縁がないようです。ただし最近は、上記のような病前性格と異なるタイプのうつ病患者さんが、若い世代で増えています。


発症の
キッカケ?

  俗に「引っ越しうつ病」というものがありますが、退職や子供の結婚などの
環境の急激な変化、そして親しい人や可愛がっていたペットの死去、失恋などの喪失体験、対人関係などの持続する心身の緊張等々、様々なストレスが発症契機となりえます。一方、先天的な遺伝的素因が強く、発症のイベントを同定できない場合もあります。 また、「躁うつ病」という病気がありますが、「うつ病」とは治療法や経過が異なり、両者の区別はとても大切です。とくに「2型双極性障害」という種類の躁うつ病は、うつ状態と軽い躁状態を繰り返す病態ですが、軽い躁状態は健康な状態との区別が非常につきにくいので、注意が必要です



           うつ病の自己探知とSDSテスト
 「食欲低下」、「不眠」、「全身倦怠感」の3つが揃えば、専門的な医師であれば、うつ病をまず疑います。うつ病の初期症状として生活行動面から、男性ならば「毎朝の新聞を読む気がなくなる」、女性ならば「化粧をする気がなくなる」という点があげられやすいのです。また暗い色の服装を選んで着るようになるというのも特徴的です。特に黒色の服、クツ、バッグを選ばれることが多くなるようです。うつ病の判定をするために、専門的によく使われるのはSDSという簡易の心理テストです。これは、20の質問項目からなります。SDSの掲載は現在、版権の問題もあり掲載を自粛しています。



        
「健康範囲のうつ状態」と「うつ病」の違い

 「健康範囲の気分の落ち込み」と「うつ病」との区別が、最近一般の人達の間でも混乱されているように見受けられます。 失恋などで一時的に辛い心境になり、食欲が落ちてきた、眠りにくい、何かやる気が起こらないという状態を、「うつ病」として必要以上に病気と捉えてしまう傾向が最近多いように思われます。誰しも辛いことがあれば、食欲が落ち、物事への意欲も減退するのが正常な反応でもあるのです。 逆に明確なうつ病であるのに、「これは自分が弱いせいだ」「ただの気のせいだ」として自己判断されてひとり苦しんでおられる方も多いのです。 「うつ病」には、本来きちんとした医学的な診断基準が作成されていますが、 とりあえず一般向けとして、簡単な目安を以下にまとめました。
 

「健康な落ち込み」と「うつ病」の簡易な鑑別点(参考に)

(以下のような点があれば、うつ病を疑ってください。)
心身の不調があまりに長く持続している。
自分ひとりの力でとても立ち直れそうにない。
身体症状が同時に頑固に続いている。
本来の悩みよりも、心身の変調の方が関心事になってしまった。
周囲の人から「最近の貴方は明らかに落ち込んでる」と言われる。
家族や近い血縁者に、うつ病にかかった人や自殺者がいる。
自殺願望(希死念慮)がある。
  

 
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